岸田首相 「新しい資本主義」実現へ 賃上げで具体的成果課題に
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岸田政権は、わかりやすく革命的に見える目標を掲げて突き進み、そのために少々の混乱も厭わない、という猪突猛進型の政権ではありません。そのアプローチは、これまで9年間この国を支え、様々な成果を挙げた安倍内閣(及びその継承としての菅内閣)の取り組みをその細部に至るまでレビューし、シミュレーションと効果検証を繰り返しながら、より高い効果を上げるよう、ブラッシュアップしていこうとするものです。
「新しい資本主義」という考え方や、「賃上げを通じた成長の果実の配分調整」は、その流れからくるもので、その全体像は、12月23日に発表された「改革工程表」に、分野別の取り組みから、KPIまで(しかも、KPIは第一階層と第二階層に分けて)詳細かつロジカルに記載されています。
そのスタイルの変化を横において、あいも変わらず「ワンフレーズ」の小泉政権のときと同じような枠に当てはめ、一部だけを切り取って報道しようとするオールドメディアが多いのは、残念なことだと思っています。
詳細な全体像を理解せずに、言葉だけ「具体的成果が課題」などと威勢のいいことを言ってもまったく説得力がありません。
参考までに、現政権の政策の取り組みと、KPIの全体像が俯瞰できる、全115ページからなる「工程表」のリンクを以下に貼っておきます。
https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2021/1223/shiryo_03-2.pdf規制が強くなりすぎて低成長に陥った資本主義の先進国が新自由主義で成長力を取り戻し、その過程で格差が拡がって再び問題が生じているのは確かです。しかし日本の問題は、そもそも新自由主義が入る余地なく、規制が強さを増しつつ温存され、今に至るまで低成長が続いて中間層が等しく貧しくなって、富裕層と呼ばれる人たちも世界の中で見ると資産規模は二桁少ない点にあるのです。
それが証拠に、今となっては新自由主義を唱えた平成の3悪人の一角に数えられる小泉竹中の構造改革は、明らかに日本に資本を呼び込み経済を成長軌道に乗せたのに、終えた途端に既得権益層の強い反構造改革キャンペーンに遭って葬り去られ、今に至っています。格差を示すジニ係数も、小泉竹中時代は
むしろましになっていた筈です。
日本にとって大事なことは、雇用面でも技術革新面でも古い規制を取り払い、人々が安心して自律的にスキルを磨き、イノベーションが起きる枠組みを作ること。中間層が等しく貧しくなった事実に目を瞑り、日本では起きてもいない再分配後の格差拡大の不満を新しい資本主義といった言葉で煽っても、分厚い中間層は生まれません。これ以上企業経営に政府が直接的に介入すれば、企業立地環境が更に悪化して、日本が益々貧しくないそうで心配です。