【直撃】ステークホルダー経営は「キレイごと」なのか
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「きれいごと」ではないステークホルダー経営は可能なのかーー。
ROE8%の提唱で知られる伊藤邦雄さんに問うたところ、「簡単ではない」と前置きしつつも、「得意なことに集中している」会社に、両立の可能性があるのではないか、とのご示唆をいただきました。
確かに、いろんな事業に中途半端にお金(資本)を突っ込み、営業利益率3〜4%的な「ぼちぼち」のリターンに甘んじる。日本に割と多く存在する企業は、必然的にROEが低くなると思います。
一方、得意なことに専念することで、突っ込んだお金が一番輝く(ついでに、そこで働く人も輝く)。といった経営のお手本に徹すれば、翻ってROEも高まる、という算段は納得性も合理性もありました。
これは個人についても当てはまるかと。
「あれもやらな、これもやらな」といろんなことに手を出す人よりも、「自分ができることはこれしかない」くらいに割り切って、自分の天命だと思えることに専念する人は、得意なことに専念しているといえます。
結果、より自分が得意とする仕事の依頼が増えるという正のスパイラルが発現し、複利効果のあるキャリアを過ごせるのでは。それが、人生における時間という資本を最大有効活用しているのではと思う今日この頃です。安倍政権が誕生したとき、握りこぶしで「アベノミクスは買いだ!」と海外の投資家に向けたパフォーマンスを披露しました。
だけど、海外投資家は一斉に「コイツ、アホちゃうか!?」と感じたわけです。
なにせ、日本企業のROEが米国の3分の1、欧州の半分という低い利回りしか生んでいなかったため、そんな魅力のない銘柄に誰が投資するというのか??と。
そこで「上場企業は最低でもROE8%以上を実現すべき」と伊藤レポートが檄を飛ばすことに。そこから3年ほど毎朝、日経朝刊にROEの言葉が踊らない日がないくらい一大キャンペーン「ROE祭り」が展開されていったわけです。
2017年には、晴れて日本企業のROEが10%を超え、一定の効果が生まれました。
そして、2019年からステークホルダー資本主義の大きなうねりがやってきます。
日本には「三方よし」の哲学がある、いえーい!と勝ち誇る雰囲気がありましたが、欧米のイケてるグローバル企業は、地域コミュニティ、環境、将来世代、株主などを含めて、もはや「六方よし」「七方よし」を追求しています。
ステークホルダー資本主義幻想論があることは承知していますが、社会の分断や外部不経済で資本主義システムが制度疲労を起こしているなか、この旗は下ろせないでしょう。
1970年に「企業の社会的責任は利益を増やすことにある」』と題するニューヨークタイムズ紙へのミルトン・フリードマンの寄稿から。
『環境汚染の防止や貧困の解決などのいわゆる社会課題の解決に経営者が取り組むことは株主の利益に反することであり、経営者はあくまで株主に報いるべくできるだけ多くの利益を稼ぐことに専念すべきである』
この思想は、その後の株主資本主義の発展に大きな影響を与えましたが、さすがに、いま、こんなことを口走ろうものならSNSで大炎上するでしょう。日本でROE8%が導入された2014年以降、少なくない企業が、単に賃下げや人材投資を削減してして利益を増やしました。これではじり貧になることが見えています。そこで昨年に人材版伊藤レポートが出され、イノベーションを生む人材投資は増やせ、と提言されました。企業を取り巻く経営課題は増加しており、更にSDGやESGが加わっています。大切なのは、変化に付いていく工夫、一言で言うと生産性を上げましょうということです。これは何も突飛な話ではありません。1960-80年代の成長率が高かった時代の日本企業は、どこも社員が自主的に生産性向上運動をやっていた事実があります。