コロナ治療薬、海外でも治験へ 国内感染者減で―塩野義
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世界で発売されているワクチンは、おおむね臨床第2相以降、試験成績が公表されており、製品化の見通しやスケジュールを比較的把握しやすい印象を受けます。塩野義製薬は臨床第1相開始前から早々に開発時期と製造規模の見込みを積極的に公表し、臨床試験施設の首相・知事の視察実施にも熱心ですが、臨床試験成績に関する客観的データの公表はほとんどされておらず、実態が見えにくいと感じます。現在は3000例の登録を目指す臨床第2相の途中とみられます。
「塩野義のワクチン、年内に最終治験入り 6千万人分供給に前進」(産経ニュース 2021年8月2日)
https://newspicks.com/news/6066595?ref=user_1310166
では、同社は「臨床試験は薬事規制当局国際連携組織(ICMRA)に対し、大規模治験の代わりに接種後にできる『中和抗体』の量を既存ワクチンと比べて承認を目指す」というものでした(客観的に考えて実現は難しいでしょう)。一方この時、補助物質の変更もされており臨床第1相からの再スタートでしたが、その点も明示されていません。
「国産ワクチン、最終治験へ 塩野義と第一三共」(時事ドットコム 2021年10月21日)
https://newspicks.com/news/6287819?ref=user_1310166
では、「来年3月までの供給開始を目指す」と公表しましたが、この時点は臨床第1相が終わったタイミングで対象症例数は60例、有効性を確認する前のステージでした。
ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社などのワクチンは臨床第3相としての臨床試験の症例を集め(実薬、プラセボ半数ずつ合計4万例弱の規模)、二重盲検比較試験で実際の感染率の検討がなされています。
「塩野義、東南アジアで治験 コロナワクチン現地供給に貢献へ」(産経ニュース 2021年8月19日)
https://newspicks.com/news/6111831?ref=user_1310166
では、主にベトナムの協力を得て臨床試験を実施するとしていました。本日はそのことに触れていないことが疑問です。
ここまで同社の発表には、未実現の前提が多く含まれています。日本がワクチン技術を持つ必要性については強く賛同します。一般的に治療薬の治験は、患者数が少なければその分リクルートに必要な期間は長くなります。コロナに関しては感染者数の増減の振れ幅が非常に大きく、患者数が少なければ治験が進まず、患者数が増えすぎると医療現場が治験に参加するほどの余裕が無くなってしまう、というジレンマがあります。
早期に治療することで重症化を防ぐ薬剤は既に複数登場しています。点滴の抗体カクテル (カシリマビブ、イムデビマブ)は国内での使用経験も増えてきており、飲み薬のモラヌピラビルは既に治験を終えていて年内にも特例承認される見通しです。そういった点を考慮すると、塩野義の治療薬が有効性・安全性を示したとしても、使われる場面は限られてくるのではないでしょうか。塩野義のコロナ治療薬の臨床試験情報は、jRCTに登録があります。
https://jrct.niph.go.jp/detail/15961/jRCT/3
Phase 2/3試験で、2019人の参加者を計画しています。
偽薬投与群を対照群とした、二重盲検試験(飲んだ患者も、診察する医師も偽薬か新薬かわかならいようにした試験)で、5日間の反復投与での効果をみるものです。こちら、実施をする塩野義製薬は、「流石、これまで、多くの抗菌薬、抗ウィルス薬をだしてきた日本が誇る製薬企業の仕事だ。」と言ってよいように思います。
(結果は、どうなるかわからないところもありますので、とにかく結果を待ちましょう。(わからないから試験するのです。ただ、これまでの情報を見る限りある程度、期待してもよいと思います。))
ちなみにワクチンに関しては、同じくjRCTの登録があり、3100人の参加者を予定した、非盲検試験で、対照群を設けない単一群による試験です。
https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCT2031210383
臨床試験のやり方としては、エビデンスレベルの低いもので、大いに疑問を感じます。国産ワクチンの支援をするという方向は、政府として一つの選択肢と思いますが、このようなやり方では、投与される人に効果に対する裏付けは甘くバランスを欠くと思います。ワクチンに関しては、支援をする政府・厚労省も実施する塩野義製薬に対しても、よい評価を下すことができません。