T2D3・SmartHR社の成長率を実現するために必要なコストをシミュレーションしてみた
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自社のことながらとても興味深く拝読しました。資金に関する話は、資金調達金額やバリュエーション、投資家の顔ぶれなどが話題になりがちですが、こういった資金をいかに使うか(使ってきたか)といった側面からの分析は面白いですね。
とはいえ、スタートアップ側としてはARR◯億円いくには△億円必要、という単純な話ではなく、過去の実績と仮説を積み上げた事業計画をベースにARR成長率、NRR、Churn rate、LTV/CACなどの指標をタイムリーに検証しながら資金を投下していくという、とてもベーシックなことを地道に実行していくことが一番の王道だとは思います。これだけ成長に先行投資しなければならないSaaS事業で少しでもdilutionを抑えるためには、pipeのような将来のMRRベースのreveue based finance(RBF)が有用です。
そんなことを考えながら、こちらの記事にあったP/Lプロジェクションをベースに、こんな調達シミュレーションをしてみました。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1VZSqusJqHH_QroBrrfpq2-TZ977Gv1S0IGkPOkjwHEI/edit#gid=0
結論:RBFなしケースではY5でファウンダー持分が31%、RBFありケースは40%と小さくない差分になりました。これすごく面白いです。SaaS企業で目指すべき成長カーブとして「T2D3」、すなわち2年連続でARR3倍+3年連続で2倍、5年でARRを72倍にするというものがあるのですが、上場企業の公開情報から売上高と販管費の関係をモデル化して必要なコストを算出している記事になります。こういうふうに数字で将来を推定しやすいのがSaaSビジネスの特徴ですね。
これを見るとRule of 40%(売上高成長率+営業利益率の合計 >40%が優良なSaaS企業とされる)がある程度的を得ているなどもわかるかと思います。SaaSサービスを提供している会社からすると、成長性/収益性を比較するためにも非常に有用だと思います。
ここでは売上高<->コストの関係がモデルとして固定化されていますが、実際の事業運営上は一番ビジネスモデルで変わってくるのがこの部分(LTVとCAC)だと思うので、そこは少し割り引いて考える必要があるかとは思います。
ただいくらSaaSが赤字先行でも将来回収できるといっても、無限に資金調達を続けることも出来ないですし、どのタイミングから売上高成長から利益優先の体制に切り替えるか、そこの見極めが改めてすごく重要だと思いました。