「在宅放置でコロナ死する人をもう増やしたくない」長尾医師が"5類引き下げ"を訴える本当の理由 - 重症化する前に町医者に治療させよ
コメント
注目のコメント
総合病院の医師として、PCR、イベルメクチンなど多々思うところはありますが、今はこの記事に関してのみコメントします。
・5類引き下げ、が解決というのは無理がある
5類にすると、以下の理由から感染症のコントロールが難しくなります。
感染法上、毎日の報告義務がなく、週間の集計報告でよくなる→患者数のフォローが難しくなり、対応が遅れます
致死率・感染率が同等である5類疾患が他に存在しない→法的整合性の問題
入院勧告や無症状者への対応が法律的に難しくなる→今は事実上入院できない状態ではあるが、今後の感染管理については足枷になりうる
治療が保険適応となる(公費でなくなる)→長尾医師も言及しており、これは特例は可能かもしれません
就業制限・検疫・擬似症患者への保険の適応・死体の管理・外出自粛の要請・健康状態報告要請も5類では指示できません。
以上の項目全てを解決せねばならず、ワクチン接種により本当に死亡率などが下がれば検討可能ですが、現時点で5類にすることで他の問題を解決しようとするのは無理があるでしょう。
感染症の分類は「その感染症の性質」で決めるものです。「こうしたいから現状に合わせるべく法律を変える」というのは、成文法である本邦に於いては望ましい形態ではありません。
指定感染症の範囲内で、政令などを用いて柔軟に制度を運用する、の方が現実的だと考えます。(その為に1類〜5類と違う分類が敢えて設けられている)
これを「保健所の管轄だから」という理由で外すのはあまりに安易です。
・開業医のより強い介入・サポートが必要
これに関しては同意します。現時点で重症病床や総合病院の入院設備で対処できないのは明らかであり、在宅での診療を担える人的余裕は総合病院にはありません。早急にプライマリケアでどう対応するかを検討していく必要があるでしょう。初療が早ければ早いほど良いのはその通りと思います。
・「感染しても大丈夫」は違います
20代や30代の基礎疾患のない方がこれほど重症化し、死亡する疾患を「感染しても大丈夫」というのは、どうでしょうか。
・医療機関の感染対策を「過剰」と言うのは問題があります
勤務者が守られるのは当然であり、マスク+ゴーグルの感染対応では感染のリスクがあります。患者のために医療者が感染リスクを高めるというのは職業倫理上どうかと思います。一人でも多くの方に読んでいただきたい記事です。
なお長尾先生をめぐってはイベルメクチンに関する発言で、いぶかしんでいる方もいると思います。私もその一人ですが、この記事にはイベルメクチンという言葉は出てきません。現場の診療ではあくまで選択肢のひとつにすぎないのですが、テレビを通じた発信になると「注目の薬がある」という話題にすり替わってしまうようです。
プライマリーケアの軽視は、日本の医療制度の積年の課題だと思います。「かかりつけ医」というあいまいな言葉が現実を隠してきました。それは保健所の機能低下と軌を一にしています。
コロナ患者の場合、どのような初期診療が有効なのか。どうすれば重症化を防げるのか。重症者だけを診ている専門医だけでなく、あらゆる患者と接している「町医者」の知見が、今後の医療政策に活用されてほしいと思います。現状コロナは保健所マターで、ほとんどの医師が診療に関われていません。医療資源を有効に使うためにも、開業医が初診を診る、経過も見る、重症は送る。普通の診療に戻してオールジャパンで対処する時期だと思います。自分も開業医ですので、もちろんがんばります。