【加藤嘉一】アメリカが警戒する中国「拡張政策」の現場
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注目のコメント
まず疑問を持つべき2点は、
1.「一帯一路」は中国にとって経済的合理性があるのか?
2.そもそも中国は統一された意思を持って「一帯一路」を進めているのか?
です。どちらも否でしょう。
「一帯一路」は、経済的合理性があるかの検証も無く、様々な部署がそれぞれの思惑で突き進んでいます。
1930年代の日本の中国大陸進出も統一された意思など無くて、陸軍、海軍、民間、政党、それぞれにバラバラなことを言いながらなし崩しに進んでいったのと似ています。
中国でも人民解放軍、国営企業、民間企業、共産党、それぞれが自分たちの予算獲得、省益、天下り先、出世のために手柄を打ち立てたい、といった動機に駆られて、「一帯一路」に乗り出しています。統一された意思を持つ「中国」という単独の政策立案者がいるわけではありません。
「東亜新秩序」とか「大東亜共栄圏」などもそうでしたが、壮大すぎる構想というのは、だいたい穴だらけで、様々な部署が予算獲得のために勝手なことをやり、やがて収拾がつかなくなります。
「一帯一路」は2013年に提唱されて、2050年までかけて65カ国のインフラを整備するといいます。その予算は、8兆億ドルともいわれていますが、こんな計画を緻密に調査して、全ての事業について採算性を検証しているわけがありません。
2013年に習近平政権が「一帯一路」を打ち出して、その後の5年間ほどは野放図に計画が拡大していきました。その主な理由は、
・中国国内での投資の飽和
・中国国内の過剰な設備投資と在庫
・貿易黒字による外貨準備の急増
・中国の「平和的な台頭」という外交基本方針
あたりでしょう。中国経済の成長維持が最大の動機でしょう。
しかし、アジアやアフリカの諸国に資金を貸し付けて、その後収益を上げた諸国が利子をつけて返済してくれるかというと、かなり難しいでしょう。そんなに利益が上がるなら、欧米の金融機関がやっています。
中国はアジア、アフリカ諸国が返すこともできない莫大な資金を貸し付けている、あれは債務の罠だ、とも非難されました。しかし、貸した金が帰ってこなくて一番困るのは中国の財政です。
中国もすでに手を広げ過ぎた予算の縮小に取りかかっています。
https://www.ft.com/content/1cb3e33b-e2c2-4743-ae41-d3fffffa4259中国の拡張政策のメカニズムについて、国際コラムニストの加藤嘉一さんに、現地で見聞きしたエピソードも含めながら解説いただきました。中でも興味深いのは、中国がアフリカ諸国と連携することを好む理由。欧米や日本とは全く異なる、別のロジックが世界には存在することを実感させられます。
一帯一路構想が戦略であり、具体的な戦術にまで落とし込まれているものなのか、きちんと整理した方が良いと思います。
日本の一部メディアや一部識者は、一帯一路構想が面的な広がりを持つものと曲解しています。その方が印象的となるからでしょう、かなり意図を感じるものです。
しかし実際には、点と点を結ぶ程度での展開に留まっており、必ずしも面でないことが分かります。中国に支援を受けた途上国が「債務の罠」に陥るという印象操作もされていますが、一方で中国が途上国を支援した結果、中国にとって戦略的価値がない不良債権を押し付けられるリスクも指摘されています(債権の罠、モンテネグロの高速道路などそうなりつつあります)。
この辺り、もう少しきちんと精査されるべきだと考えます。