不妊の原因解明に期待 「ES細胞」から卵巣組織を作製 世界初
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未分化の細胞は、今後、何にでも分化できる(なれる)可能性があるものですが、そこから1つの機能する臓器をつくることに成功するというのは大変な快挙だと思います。
ただ、ニュースの伝え方として、「不妊の原因解明に期待」はほかのコメントにもあるかと思いますが、報道のタイトルとしてはキャッチーでも、やや飛躍かな、とは思います。
不妊の原因は、女性側にあるのではなく、女性側起因と男性側起因があり、その割合は半々程度と言われています。
女性側不妊の原因としても、卵管因子、子宮因子、頸管因子、排卵因子などと多岐に渡ります。
なので、「女性起因不妊の一部原因の解明に期待」ぐらいにしておかないと、未だに根強い「子供ができないのはすべて女性側起因」という思い込みにつながると良くないな(;'∀')と。
江戸時代なら、子供のできない女性は「石女(うまずめ)」と呼ばれて離縁してもよい、となっていたりと、子供ができない理由は100%女性側と信じられていた時代よりは、現代ははるかに恵まれているのですが。
注目のコメント
多種の細胞に分化する可能性をもつiPS細胞(人工多能性幹細胞)は山中伸弥教授のノーベル賞受賞で知られることになりましたが、それ以前から、多種の細胞に分化する可能性をもつES細胞(胚性幹細胞)が知られていました。
ES細胞は再生医療の原料となるものとして期待されていましたが、ヒトの再生医療に用いる場合には、ヒトの受精卵を研究材料として用いる必要があったことから、小さな生命を滅失してしまうとして生命倫理問題に発展し、再生医療への使用が停滞していました。現在は、発生停止したヒトの胚からES細胞を樹立させる技術が開発されたことから、倫理的な論議はかなり落ち着いているようです。
このような歴史をもつES細胞ですが、本来の細胞の性質から、あらゆる組織に分化するはずであるため、再生医療への応用が期待されています。ただ、特定の細胞に分化させる条件を見つけることは簡単ではなく、分化しても正常に機能する細胞にならないことがあります。かつて産学のテクノロジー・スタートアップのメンバーとして参画し、ES細胞からできるある細胞の商業利用を目指したことがありましたが、実験レベルでは問題なく分化するものの、正常な機能性を発揮させることが出来ずに、断念したことがありました。
今回、九州大学などのグループがマウスで正常に機能する卵巣の組織を作ることに成功したとのことで、快挙です。分化した条件を分析すれば、逆にその不全が不妊原因の1つであることがわかるとの説明がされています。これは凄いことかも。
ただ、不妊治療の保険適応に始まり、最近の何でもかんでも不妊に絡めてニュースにするのには違和感を覚えます。キャッチーなのは理解しますが、不妊の原因が卵巣にあることは限られているのでそこにフォーカスするのはズレていると思います。
むしろこのニュース自体はこれまで行われていた研究を大きく変える可能性があると思います。卵巣には良性~悪性まで様々な腫瘍が発生し、脂肪や髪の毛、歯などが卵巣嚢腫として発生する奇妙な病気があったり、いまだに早期発見が難しい卵巣がんなどが存在します。卵巣は比較的原始的な臓器だと思うのでこういった研究には向いているかもしれません。非常に楽しみな研究と感じました。