酒販店の取引停止、金融機関への働きかけ 「居酒屋いじめか?」と批判の多い酒提供停止の政策は法的根拠があるのか?
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注目のコメント
金融機関を通じての要請は取り消されたが、国税庁からお酒の卸売業者に対して不当な圧力をかける要請は取り消されていない。法的根拠の脆弱性はこの記事が指摘する通り。こちらも強く撤回を求めていく。
そのとおり。…と言いたいところですが、中盤頃から論旨が怪しくなってきます。
揚げ足を取るのではなく、ましてや政府を擁護するのでもなく、判断材料の提供として以下のとおりコメントします。
・「特措法の範囲を超えた規制は違法」の見出しについて
この見出しは、おそらく編集部がつけたものでしょうが、インタビュイーは、規制・違法という発言をしていません。あくまで、法的根拠の有無が論点となっています。これは議論がミスリードされる可能性があります。
・酒税法第10条第10号と「更新」について
酒税法第10条は、あくまで酒類販売業の免許を”取得する”際の要件です。また、酒類販売業の免許制度には更新制度そのものがないため、本件に関連した免許の更新拒絶は、原理的にあり得ません。
なお、免許の取消しの事由については、別途第14条に規定がありますが、今回の要請が関係する事由は、おそらくありません。この点からも、要請に従わないことを直接の原因として、酒類販売業の免許が取消されることはないでしょう。
・飲食店に関する金融機関との情報共有と特措法の「公表」について
個人的には、ここが最も首を傾げた部分です。
政府と民間企業との情報共有に法的根拠が必要であるかのような内容ですが、話は逆で、政府と民間企業との情報共有は、基本的に法的な制限がない限りは自由にできます。この法的な制限の代表例が守秘義務です。
本件では、「法的根拠がある要請に従わない飲食店」について、金融機関と情報共有をすることについて、守秘義務に抵触しないかどうかが問題となります。
これについては、理屈の付け方によって、適法・違法両方成り立つと考えられます(個人的には、若干違法よりではあるものの、違法と断定まではできないと考えます)。
・優越的地位の濫用について
最近「優越的地位の濫用」という言葉が一般に普及しているためか誤解されがちですが、優越的地位の濫用は、意外と要件が厳しく、そう簡単に適用されません。
優越的地位の濫用の要件は、1.一方の当事者が優越的地位にあること、2.正常な商慣習に照らして不当であること、3.濫用行為があること―です。
字数制限のため詳細な説明は割愛いたしますが、本件を根拠とした、少なくとも貸し渋りについては、優越的地位の濫用には該当しないものと思われます。