「富岳」3期連続世界一 スパコンランキング4冠
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富岳の3年連続トップのニュースは、日本もやればできるじゃん、という感じです。2011年の京でトップから陥落しても長い間、スパコン開発にブレーキがかかっていました。東工大にいた松岡聡先生が先頭になって、富岳を開発しました。しかも市販のArmプロセッサをベースにSoCを富士通が設計、さらに超並列プロセッサの能力を引き出すためのネットワーク技術を開発し、AI専用のアクセラレータも組み込み、消費電力を気にしながら性能を上げてきました。素晴らしい技術の結集でした。しかし、これを超えるスパコンは必ず出てきます。次世代スパコンの開発をさらに続けましょう。さらに研究開発投資を活発にして日本の製造業の底力をもっと広げていきましょう。電機の経営者は研究開発投資にやる気を出してエンジニアの能力をさらに上げるようにしてください。
コンピューターにとって速さは重要であり続けますが、それは計算する内容や方法にもよります。昔の指標を追いかけすぎて新たな時代の波に乗り遅れる「イノベーションのジレンマ」に気をつける必要があります。量子コンピューターのように、特定の種類の計算はとても早い、というものもありますし、また近年重要視されているのは計算効率で、単位電力あたりの計算速度を高め、環境に配慮することも必要です。より小さなデバイスでのエッジコンピューティング速度も、今みなさんがこれを見ているデバイス(スマホ等)の進化を支えています。
富岳は「スーパーコンピューター」とはいえ、Linuxをインストールしたデュアルコアのマシンを大量に(10万台くらい)積み上げたものです。このようなコンピュータシステムは今後も引き続き計算機科学において大きなウェイトを占めると思うので、これからますます素晴らしい活用方法や研究結果を生み出すことを期待したいです。実はスーパーコンピュータにも一長一短あり、「ランキングが上のスパコンは下のランクのスパコンよりも全てにおいて優っている」というようなことはありません。
富岳は世界一のスパコンとして有名ですが、例えば天文学の数値計算では実はほとんど富岳は使われていません。富岳はレジスタが小さいため、多くのメモリを使うような計算では計算速度がガクッと落ちてしまいます。天文学では、例えば有限体積法で計算する場合、密度, 圧力, 速度（3成分）,磁場（3成分）などの情報をメッシュの数だけ変数に記憶させておかなくてはならないので、非常にたくさんのメモリを使います。したがって富岳は天文学の計算には向かないのです。
我々はどうしてもこのようなランキングでスパコンに優劣をつけてしまいがちですが、スパコンの評価軸はたくさんあり、一意にランク付けできるものではないということを知ってもらいたいです。
