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1.「アフリカの南側を通るとき、(中略)南アフリカの奪い合いが起き、それが南アフリカ戦争となるわけです」についてです.
この説明はボーア戦争を対象としているように読めます.しかし,スエズ運河開通は1869年,第一次ボーア戦争が1880年で戦争前に航路はありました.もっと早く存在していれば…ということなのでしょうか?それともこの「争い」はケープ植民地の発生について話している,ということなのでしょうか?
2.ボーア戦争は金やダイヤモンドをめぐる要因の方が大きかったと記憶していますが,それでも寄港地としての重要性が要因になったということでしょうか?寄港だけならケープ植民地もありました(※).
(※)中継拠点としての重要性はポルトガル・スペインの時代までで,英国は植民地経営に重きを置いていたのではないかと,のツッコミがありました.
3.「スエズ運河がそのまま使えなくなったとしたら」ですが,スエズの代わりにケープ周りを使う場合,アフリカでは多くの場合寄港をしません.なので,スエズ運河が使えなくなっても,アフリカ側で大きく物流が変わることはおそらくないでしょう.そもそも,もしそうだったら1956年のスエズ危機の時点でアフリカ側港湾が整備されていたはずです(※).物流が変わるという話は面白い視点ではありますが,記事の内容は誤解を招く仮説ではないかと思います.
(※)ナイジェリアなどは帆船時代の時点で経由地にもなっていなかったそうです.
4.西アフリカの海賊は現在増加しており,大きな問題です.なのでこれもスエズ運河の座礁事故とは関係ないでしょう.
5.アパルトヘイトの件は明らかに飛躍ではないでしょうか.
わかりやすさと正確さがしばしばコンフリクトを起こすことも承知しています.ただ,今回記事に関しては説明の飛躍も多く,もう少し内容が整理されればよかったと感じました.もちろん,当方の話にも間違いなどあり得ます.ツッコミありましたらよろしくお願いします.
・「実際、スエズ運河がない時代は、アフリカをぐるっと回らなければならなかったので、その寄港地として、イギリスはガーナやナイジェリアを植民地にしました。」
イギリスが西アフリカに寄港する必要があったのは、三角貿易のためですよね?アフリカで奴隷を仕入れてカリブ・ブラジルに運んで砂糖や綿花を英国に持ち帰ったのですから、スエズ運河がその前からあっても、ブラジルの綿花畑や砂糖畑に行くのにわざわざスエズを遠回りしないのでは?それともスエズ運河があれば、東アフリカで奴隷を仕入れてインドで綿花を作っていたかもしれないというような話でしょうか。
地理的な観点からみると、なぜ隣のトーゴでなくてナイジェリアだったのかなとは思います。トーゴの方が地理的には港として優れいてるので、寄港地になるべきだったのではと。やはり地理だけでは語れないなと逆に思いました。
・「南アフリカが交易の重要拠点でなければ、白人たちの入植も、アパルトヘイトもなかったかもしれないですね。」
白人が南アに入植しなかったらアパルトヘイトは起こらなかったということですが、白人が入植したあらゆる他の(黒人がいる)植民地ではアパルトヘイトは起こってないですからね。歴史のイフというより論理の飛躍だと思います。
真実の範囲で面白い話を書くのはほんとうに難しいですね。
キャッチーだからとアパルトヘイトという言葉をこのようなネタやタイトルに無神経に使える(編集者の?)見識もちょっと疑います。
地理と歴史は自動車の両輪のようなものなので、どちらが欠けても認識は深まらないものと思っています。