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第三者委員会の報告書も斜め読みしましたが、システムトラブルの報告書にありがちな、企業風土やガバナンスなどに原因があると結論付けて対策を講じるというストーリー。それそれで大事だし一定の効果はあるのだろうけど、これまで同様に、喉元過ぎれば何とやらで、きっと再発するなと感じてしまいます。
ではどうするか。
「キャッシュカードを取り出せない」という点に焦点を当てて言うのなら、このようなアホな仕様(※1)でサービスインし、過去のトラブルでこの仕様に気が付いて是正する機会があった(※2)のに放置した「現場」を何とかするしかないのではないでしょうか。
トップマネジメントに責任を求めるというのは分かりやすく世間の理解を得やすいストーリーではありますが、「現場」の1人1人のSEやPM等がプロフェッショナルとしての矜持を持って事に当たらないと、いつまで経っても同じことの繰り返し。現場の人間をそのように動機付けるのが経営陣の責務だという声もあるかもしれませんが、長年システム開発の現場にいた身としては、個々人の仕事に対する向き合い方は上から与えられるものではなく内から湧いてくるものであるというのが実感です。
こうしたトラブルがニュースになった時に、バカだなあと嘲笑するのではなく、自分は大丈夫なのかと省みることもプロフェッショナルであるために必要な姿勢ですね(と、自分自身に言い聞かせるための投稿です)。
(※1)第三者委員会の報告書P.127「ATMが広範囲に通帳・カードを取り込む仕様自体、何の責任もない顧客に不親切な設計であるが、IT部門のみならず、ATMを担当する部署においてさえ、このような仕様であることをよく認識しておらず、顧客に与える不便に関する評価がされた事実は見あたらなかった」
(※2)同P.123-124「2018年6月のシステム障害、2018年7月から2020年7月までの期間における障害、2019年12月のシステム障害のそれぞれにおいて、通帳・カードの取込みが発生していた。しかし、そのいずれの障害後においても、通帳・カードの取込みに係るATM仕様の改善やその仕様を前提とした対応方法について検討された形跡は見あたらなかった」
日本の大企業がITを重要視しだしたのは最近のことで、比較的最近まで企画部門ごとアウトソーシングなどということをやっていて、「何だかな」と思っていました。海外金融では早い段階からFin Techが台頭し、対応への必要性から、日本より早期の段階で金融業界のゲームチェンジが始まっていました。
日本の金融業界は海外勢に対抗するために、官の指導で「大規模化」を目指してきました。しかし、これまでたすき掛けの人事を行ってきた経緯から見ても、合併の本質的目的を達成することよりも「世話になった人に配慮し、結果自分を引き上げてもらう」ことを優先していたとみられますので、こうした理由が(システム開発業者の選定を含めて)、おそらくリスクの増大を招いとのだと思います。
(しばらく続投と発表されましたが)企業トップがかわっても、結局のところは、問題の本質が「エライ人達への配慮」ならば、解決は難しいと思っていました。システムに問題が起こる度に引責辞任をしていたのでは、人事の綱引きを拡大させるだけではないかと思います。こういうときこそ、社内で高い職能資格をもつジェネラリストを重視する人事ローテーションよりも、また社内への配慮などより優先して、「真にシステムを構築できる有能な人材」を登用し権限を与えるべきでないかと思います。
しかし、こんな簡単なことが、古い企業ではなかなかできません。年功人事や派閥人事をしていると、入社20~25年目くらいまでは、トップから見て誰に実力があるのかわかりにくく、結局は直属の上司(人事権限者)の評価が継続して良く、1歩づつステップアップした人材が主要職に就き、それを次世代に引き継ぐので、なかなか企業文化は変えられません。日本の人事制度は、変革期にはマイナスに出ることが多いと感じます。もうほとんど後がないでしょう。
顧客の立場で、顧客体験として何が問題だったのか?を洗い出すことと、組織を横断して「stop,start,continue 」を合意することができるか? 社員一人一人が自分の課題として捉えて行動できるか?
見守りたい。
「企業風土」という報道もありましたね。
3行合併による旧行意識が根強く残っており、システムに関しても縄張り意識が働いたのでしょうか?
【みずほ銀、藤原頭取辞任へ ATM障害で近く行政処分】
https://newspicks.com/news/5924312
始めの設計がダメだったのでしょう。
根本的に変えることができないのなら、また起きるでしょうね。
次の頭取も長くないかもしれません。