米モール運営大手が経営破綻 コロナ後に顧客戻らず(写真=AP)
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こういう記事を見ると、コロナによって消費者行動が変わった、もはやリアル店舗は意味ない、ECだEC、DXだDX!的なメッセージは多いかもしれませんが、もう少し冷静に内容を見てみたいです。
米モール運営大手Wasignton Prime Group(WPG)が連邦破産第11条(Chapter 11)を宣言したとありますが、財務諸表を見たところ、追い込まれて「万事休す」というよりは、体制を再度整えて攻めの姿勢に全力で転換する、という意味合いが強いのかな、と思いました。
WPGの2021年度第1四半期(2021年1月~3月)の10-Q(四半期財務報告書)を見ると、売上高132百万ドルに対して純損失▲55百万ドルと、相当な損失を出しています。ただしCF計算書を見ると、営業CFは3百万ドルのプラスとなっており、投資CFも前年比では半分弱に減ったとはいえ30百万ドルの投資は継続させているのがわかります。数字上は「経営破綻」から連想される哀愁はあまり感じません。
確かに商業施設という固定装置産業の性格上、BS上は有利子負債1,323百万ドルに加え、抵当権付き手形融資1,098百万ドルと合わせて2,421百万ドルの負債が重くのしかかっていて、このQ1だけでも金利だけで▲51百万ドルの支払いですから(一方元金返済額は▲4百万ドルと軽微)、このご時世にあって出血はできるだけ抑えたいという本音もあるでしょう。
日本人としては「借りたものは返せ」という倫理観は強いですが(これはこれで美徳だと個人的には思います)、アメリカでは航空会社の例でもあるように、戦略的なバランスシートのリストラクチャリングの一環としてChapter 11を選択することが割と一般的なので、記事の見出しに即反応するのは注意が必要かと思います。