スペースXを追撃する「3Dプリンターロケット」が700億円調達
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まずそもそもなんで3Dプリンティング(additive manufacturing、足し算式製造法とでも訳しますか)が革命的か説明しましょう。
一昔前は、工場で生産される素材というのは、平べったい鉄板だったり丸い断面のパイプだったりでした。そういう単純な形の部品をボルトや溶接でつなぎ合わせて、エンジンなどの複雑な装置を作ったのです。単純な形の組み合わせで作らなければいけませんから設計に制約が多く、最適な形にはなかなかできません。さらにボルトなどの重量もかさみ、溶接した箇所は弱点にもなります。部品点数が増えるとコストやリスクも上がります。
Additive manufacturingより一世代前の革命はSubtractive manufacturing(引き算式製造法)と呼ばれるものでした。大きな金属の塊から自動で任意の形を削り出します。引き算で作るからこの名前。この方法ならCADで作った好きな複雑な形をそのまま作れますし、部品点数も減ります。が、最初に大きな塊を準備しなくてはいけないのが難点。
そこに出てきたのが3Dプリンターを用いる足し算式。ゼロから足して形を作っていくのでこう呼ばれています。最初はおもちゃだったのですが、あっという間に技術が成熟して、強度が求められる部品も作れるようになりました。
ロケット・エンジンはもともと非常に部品点数が多く複雑なマシン。3Dプリンターにはもってこいということで、3Dプリンティングを応用することは結構前から行われていました。まあでも普通は部品レベルでの応用です。昔なら板やチューブをボルトでつないで作っていた部品を一体成型するのです。
で、このRelativity Spaceの何がクレイジーかって、ロケット丸々3Dプリンターで作ると言っている点です。まあ一度にプリントするわけじゃないでしょうが、しかしロケットってエンジン以外は基本的にタンクと配管で、そう複雑なものでもありません。それも含め全て3Dプリンティングすることにどれほどのメリットがあるのか?しかも再使用するなら製造コストにそこまでセンシティブでもないはず。僕のイマジネーションが足りないだけかもしれませんが、もしかしたらovereigineeringかもしれませんね。あるいは宣伝文句なだけかもしれません。でももしかしたら本当に革命を起こすかもしれません。あ、今学期教えてるdesign for manufacturing のクラスで、昨日たまたま design for additive manufacturing の回だったので、ハナシましたよ(録画しましたよ)、このカイシャのこと 皆さんのご想像なさるであろう、金属粉プール上の zステージ + xyレーザースキャンのようなタイプではなく、基本的には複数の(ロボットアーム+レーザー溶接)のようなモノとご想像ください そうでないと大きなものが作れませんので
寸法精度、材料性能・品質はプール型より落ちますが、このアーム+レーザ型だと、大きなサイズが比較的お安く作れる以外にも、プリントしながら途中で積層方向を変えたり (z方向は低性能なので)、途中でプリントやめて、別製造した部品 (パイプなど) を組み立てて、またプリント再開したりする事が可能なのがメリットなんですねぇ プリント始めた時点で位置決めは出来ているし、複数アーム同士はお互いよけながら作業できますので
っていうのはまだまだ技術的にムリでしょうけど (積層方向はやってらっしゃるかも)、考えてはいらっしゃるでしょうねぇ、当然 あ、ご相談下されば、研究チームあつめますよ
で、もーっと大きなモノを作るのに、複数のアーム付き移動ロボット(boston dynamicsで最近売り始めたみたいなやつ)とSLAM (ご興味あればググって下さいね) 使ってアリの巣作るみたいにプリントする、っていうのもありますねぇ コレはもっと大きくて寸法精度、材料性能が低く、基本寝かして作るモノ、例えば月・火星建築などに考えられているようですよ まだカイシャはないようですが
ちょっとそれますが、しばらく前 SpaceXからうちの学科に、溶接専門のPhDを採用したいので誰かいないか、という問い合わせがきましたねぇ 聞くとMITとStanfordには、その分野の教授自体いないと(その通りです) うちは3番目かい (プンプン)、と思いつつも、うちの大学でも絶滅寸前ですよ、と船舶工学科の教授をご紹介差し上げましたねぇ
もっとそれますが、ちなみにその絶滅寸前の溶接ガクシャ業界のレジェンドといえば、MITの故masubuchi (増渕)センセイですねぇ