約30年ぶりに金星めざすNASAの探査機 謎は解明されるか
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ディスカバリー計画には他にイオやトリトンへの探査計画が最終候補として残っていたのに、なぜ二つも金星探査ミッションが選ばれたのか?費用対効果?政治的判断?別記事で小野さんがコメントしていたように別の計画とのオーバーラップを避けたのか?気になりますね。
https://newspicks.com/news/5903097
>引用
『探査機は2機あり、一つは「ダヴィンチ・プラス(DAVINCI+)」という名で、二酸化炭素と硫酸の雲で覆われた金星の有毒な大気を調べる。もう1機は「ベリタス(VERITAS)」といい、金星の表面の詳細な地図を作成し、その地質学的な歴史を再現したいと考えている。ディスカバリー計画の最終段階には、この2機の金星探査のほかに、火山活動のある木星の衛星イオへの探査と、海王星の衛星トリトンへの探査が候補に残っていた。いずれも、惑星科学分野で何十年も前から重視されてきた天体だ。(参考記事:「金星で複数の火山が噴火、探査機が間近で初観測」)今回の決定の背景には、そろそろ金星への米国主導のミッションが必要だとする声の高まりもあったとされる。金星は一部の惑星科学者から「忘れられた惑星」とまで呼ばれているが、その大きさや質量は驚くほど地球に似ている。また、現在の金星は生命がすめない灼熱地獄のような惑星だが、かつては地球と同じように海に覆われた温暖な惑星だった可能性がある。金星がこれほど過酷な環境になった経緯を理解することは、地球によく似た環境の惑星が宇宙にどの程度存在するかを知る上で非常に重要だ。』非常にざっくりいえば、Davinci+は金星大気に突っ込んでパラシュート効果中に大気成分を観測するミッション、Veritasは合成開口レーダーを金星軌道に飛ばして高解像度地形マップを作るミッションです(金星は雲が厚くて地表が見えないのでカメラは使えない)。さらにざっくり言えば前者は1978打ち上げのパイオニア・ビーナス・プローブの、後者は1988年打ち上げのマゼランの現代版です。言うまでもなくこの40年で技術が大幅に進歩したので、同じミッションでもアップデートされた観測機器を飛ばせば大幅な観測精度の向上が期待できます。
一方、選ばれなかったIo Volcano ObserverとTridentもそれぞれガリレオとボイジャーの、目的を特化させた現代版といえます。そしてイオとトリトンもそれぞれ2003年、1989年以降探査機が訪れていません。つまり、長い間NASAから「忘れられていた」対象であることも同じ。じゃあなぜ、今回金星が選ばれたか?
以下、僕の完全なる邪推です。
端的に言うと、バランスを取ったのだろうな、と。
まずイオ。実は、いま木星軌道にいるJunoがミッション目的だった木星の探査を終え、延長ミッションでその衛星のガニメデ、エウロパ、イオを探査します。サイエンティストによるとJunoに搭載された観測機器ではIVOの目的は達成できないとのことでしたが、ある程度の成果は見込めるのでしょう。さらには数年後に公募がある中型プログラムのNew Frontiersにも、イオへのミッションが候補にはいっています。
続きはあとでVeritasの中に金星干渉合成開口レーダ (VISAR) が搭載されているということで、レーダ技術者としてとても嬉しくなってしまいました。
雲が厚い惑星探査には合成開口レーダーは使えそうですね。改めてなるほどと実感しました。
ちなみに、今回の惑星探査において、カメラではなく合成開口レーダーを使う場合には、下記4点の課題を解消する必要があると考えています。
①金星表面のRCS (後方散乱係数) が不明の場合にどのようにレーダ信号送受信の回線設計を成立させるか? (ある程度マージンを積む感じでしょうか?)
②合成開口レーダーの場合、通常のレーダーと違い、擬似的に開口面を大きくするための合成開口処理という処理を画像再生時に実施するが、そのためには正確な衛星の時刻&位置情報が必要であるため、それらの情報をどう確保するか?(金星軌道上での衛星軌道の正確な解析が必要)
③今回はインターフェロメトリ (干渉解析) を実施するため、②以上に位置情報の正確性が求められるが、その担保をどうするか?
④光学衛星と違って、電波を送信するアクティブなセンサを搭載するとどうしてもセンサ内で熱が発生するが、金星付近は特に太陽光による温度上昇が強いことが想定されるため、熱設計をどう成立させるか、またどう運用でカバーするか?
当然新しい挑戦ですので、課題はたくさんあるでしょうが、それらをどう乗り越えてくるか、本当に楽しみです!