【3分解説】AIR DOとソラシドエアが経営統合する理由
コメント
注目のコメント
ただの合併ではなく共同持株会社としたのには、羽田の発着枠を取り上げられないためという理由もありますが、実はこのスキームは北海道や九州で第3セクターとなっている地域航空会社について経営基盤の強化(財務や運航の安定化)を目指し、緩やかに経営統合していこうとする仕組みでLLP(有限責任事業組合)を作っているのとよく似ています(地域航空会社については、2018年に国交省の有識者会議での結論でも、ゆくゆくは共同持株会社などによる経営統合を検討するべき、とされています)。各社の経営について一定の独自性を与え、それぞれのブランドの維持をはかり、合併による文化などの対立を最小限に抑え、主に調達面でのコスト削減を目指すという手法です。
今回のこの二社の統合も、そうした目線でみると同じようなことを言っており、おそらくは大株主であるDBJがアフターコロナの航空業界を見通して立てた一つの戦略なのではと思われます。
いま現在、航空業界は資本関係としては結局は大手二社(JAL,ANA)に集約されてしまっています。その下で各社がどれだけ独自の戦略を打ち出していけるかが、当面の業界の活性化の鍵を握ります。エアドゥやソラシドも、かつては北海道や宮崎の地元資本が中心で、地元の期待を背負っていた航空会社でした。DBJの意向を汲みつつ、どれだけ原点である地元のカラーを打ち出せるかという点にかかっているのかもしれません。航空業界も通信同様、いわゆる規制業種です。忘れがちになりますが、完全なる自由競争ではありません。通信は近年の楽天の参入が記憶に新しいですが、周波数という有限の資産をどの業者に割り当てるかを国が差配しています。
航空業界で言えば、それは羽田空港の発着枠。羽田空港と地方の往復が最も乗客が望めるわけですから、採算性の確保がしやすい。発着枠を国がコントロールすることで、実質的に市場シェアをコントロールすることができます。
当該再編で、国内線の業者が6社が最適なのか、5社が最適なのかを問うことになります。これまで両者とも毎期黒字を維持していたことから、6社体制でも企業努力で黒字化が可能であることを示していました。今回のコロナを一過性とみれば、いずれは黒字に回復することが想定されます。
今回は一般的な独禁法の観点では否定される水準の市場シェアではありません。両者の最大株主が政府系金融機関のDBJです。当たり前ですが、レンダーの観点でも株主の観点でも、経営統合はメリットしかありません。
難しいのは市場シェアの高いANA/JALですら大赤字に陥る状況で、国としてせっかく6社で消費者のメリットの最適化をはかったにもかかわらず、また5社に戻すのかが問われる。
単に6社なのか5社なのかということではなく、ANA/JALのシェアの水準のの影響も大きい。しかし、今回の統合はそのシェア変動には直接的に影響はありません。また、今ANA/JALに市場シェアを切り下げる余裕はありませんし、国際線における国際競争の観点もあります。またANA/JALにはDBJ以外に一般の機関投資家が最大のステークホルダーになっています。利益享受するステークホルダーが異なる点も留意が必要です。
消費者にとっては確かに航空運賃が低下することはメリットではありますが、今後航空業界を持続可能なものとするために、どのような視点で考えていくべきかが真剣に考えるべき時代がきているのでしょう。宇宙、近距離航空、物流、旅行、様々な業界に隣接しますし、イノベーションによる社会への影響は甚大です。大量燃料を消費する航空機は環境の観点もあります。
6社存在しても結局は同じやり方、消費者への提供価値は同じなわけで、単なるマネーゲームとしての再編に議論ではなく、そもそも論の航空業界のあり方こそが議論すべきなのでしょう。人の移動が制限されている状態では、経営統合はあまり効果が期待できません。が、コロナ前の状況になるのが2023年末とすれば、その間にコストを下げておくことは重要。アフターコロナの利益を大きく伸ばすことができます。