この連載について
NewsPicks編集部のオリジナルニュース連載。いま知りたい注目ニュースを、わかりやすい解説や当事者インタビューなどでお届けする。
この記事の著者 / 編集者
この記事に関連するユーザー
関連する企業
旧スカイネットアジア航空。2004年に産業再生機構の支援を受け経営再建、筆頭株主は日本政策投資銀行。航空機の自社保有化のため、2017年に日本政策投資銀行と地域金融機関がシンジケート・ローンを組成。九州・沖縄を軸に路線ネットワークの拡充を目指す。
業種
航空輸送
この連載の記事一覧
【本日公開】映画『オッペンハイマー』4つの必見ポイント
338Picks
【総括】シャープもついに大幅縮小、今こそ問う液晶の未来
212Picks
【快進撃】ルルレモン、売上高でスポーツブランド「3強」入り
237Picks
【総まとめ】大谷翔平の「水原一平問題」今後の展開は?
298Picks
【2分解説】日産が「新・経営計画」に込めた狙い
192Picks
【2分学習】添加物は悪?食品表示の「新ルール」を理解する
255Picks
【世界が熱狂】薬で「肥満」を治す時代に知っておきたいこと
319Picks
【3分でわかる】今さら聞けない「日銀マイナス金利解除」の意味
2334Picks
【本田圭佑 × 藤田晋】いま考える「日本の危機感とチャンス」
517Picks
【Jフロント新社長】百貨店の明暗を分けるのは若い富裕層開拓
333Picks
今回のこの二社の統合も、そうした目線でみると同じようなことを言っており、おそらくは大株主であるDBJがアフターコロナの航空業界を見通して立てた一つの戦略なのではと思われます。
いま現在、航空業界は資本関係としては結局は大手二社(JAL,ANA)に集約されてしまっています。その下で各社がどれだけ独自の戦略を打ち出していけるかが、当面の業界の活性化の鍵を握ります。エアドゥやソラシドも、かつては北海道や宮崎の地元資本が中心で、地元の期待を背負っていた航空会社でした。DBJの意向を汲みつつ、どれだけ原点である地元のカラーを打ち出せるかという点にかかっているのかもしれません。
航空業界で言えば、それは羽田空港の発着枠。羽田空港と地方の往復が最も乗客が望めるわけですから、採算性の確保がしやすい。発着枠を国がコントロールすることで、実質的に市場シェアをコントロールすることができます。
当該再編で、国内線の業者が6社が最適なのか、5社が最適なのかを問うことになります。これまで両者とも毎期黒字を維持していたことから、6社体制でも企業努力で黒字化が可能であることを示していました。今回のコロナを一過性とみれば、いずれは黒字に回復することが想定されます。
今回は一般的な独禁法の観点では否定される水準の市場シェアではありません。両者の最大株主が政府系金融機関のDBJです。当たり前ですが、レンダーの観点でも株主の観点でも、経営統合はメリットしかありません。
難しいのは市場シェアの高いANA/JALですら大赤字に陥る状況で、国としてせっかく6社で消費者のメリットの最適化をはかったにもかかわらず、また5社に戻すのかが問われる。
単に6社なのか5社なのかということではなく、ANA/JALのシェアの水準のの影響も大きい。しかし、今回の統合はそのシェア変動には直接的に影響はありません。また、今ANA/JALに市場シェアを切り下げる余裕はありませんし、国際線における国際競争の観点もあります。またANA/JALにはDBJ以外に一般の機関投資家が最大のステークホルダーになっています。利益享受するステークホルダーが異なる点も留意が必要です。
消費者にとっては確かに航空運賃が低下することはメリットではありますが、今後航空業界を持続可能なものとするために、どのような視点で考えていくべきかが真剣に考えるべき時代がきているのでしょう。宇宙、近距離航空、物流、旅行、様々な業界に隣接しますし、イノベーションによる社会への影響は甚大です。大量燃料を消費する航空機は環境の観点もあります。
6社存在しても結局は同じやり方、消費者への提供価値は同じなわけで、単なるマネーゲームとしての再編に議論ではなく、そもそも論の航空業界のあり方こそが議論すべきなのでしょう。