かなり詰まった記事ですね。ウイグル問題が、あたかも冷戦のような米中対立と位置付けられていることが、世界秩序が損なわれている証左だと感じます。Where is the UN? 記憶に新しい、記事中にもある1994年のルワンダジェノサイド(民族紛争により100日間で100万人以上が死亡)は、国連の介入が無かった所謂“負の遺産“としても知られています。これがわずか25年前。今回の“内政干渉“というフレーズもおかしく、国連の存在意義が問われる当該事案。加えて台湾がここでも登場するあたりが悲しい現実なのでしょう。今月のEconomistのカバーはmost dangerous place on earthとして台湾が描かれていますが、これとウイグル問題を関連づけるのも時期尚早のような気もします。ここ数ヶ月で数百回の中国による牽制(軍事戦闘機の台湾区域への介入)がありましたが、これもバイデン政権への挑戦、と考えるのも、、つまり政治と人権問題を同時に解決しようとすること時点で道徳的にどうなのか、ということを問いたいです。
民族抑圧と政治統治体制と国際政治は簡単に善悪を語ることができない、立場によって見え方が違ってくん問題です。先進国の消費者の意識向上で企業か「気にするようになる」だけでも良いことだと思います。ウイグル人文化を共産党政府が根こそぎ壊そうとしているのは、児童労働とは位相の違う許してはいけな歴史的な犯罪だと僕は思ってます。
新疆ウイグル出生率2年で半減 中国統計入手、不妊処置が急増
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/740806/
ウイグル人元収容女性、性的暴行や虐待の実態を証言
https://www.sankei.com/article/20210402-5CC2PSDX4BOD7ABTB5NMTMMTWE/2/
SDGsとかESGとかいうのであれば、人権は最も重視される事項の1つになります。二酸化炭素とかジェンダーの話だけではありません。SDGsやESGを実践する企業というのであれば、人権の抑圧につながる投資や事業は行わない企業、ということになります。
人権の抑圧というのは、最たるものは人の命を奪うことで、ジェノサイドと認定されるような状況を阻止するのは、SDGsやESGの最優先課題ということになります。
もちろん、SDGsやESGが推進されるのも、ウイグル人へのジェノサイドが世界的に問題になるのも、国際関係の力学が大きな要因になっているのは知れ渡っていることです。そして、国際関係の力学は、いったん動き出したら濁流のように、個々の企業は決まった方向に流されていかざるをえません。
中国やミャンマーだけではなく、エチオピアなども近いうちに、ジェノサイドへの関与が問題にされるでしょう。ジェノサイド認定は、ワシントンの政治やロビー活動で決まるところは大きいので、そういう意味でも、ワシントンの政治が世界の経済へ与える影響は絶大です。
人権NGOなども、ワシントンの政治を動かすうえでは、日本の大企業よりはるかに大きな力があります。膨大な数の衛星写真を分析するなどしてエビデンスを集積し、情報提供し続けています。こういうワシントンの政治に働きかける資金と研究人員を確保して上手く影響を及ぼすことは、日本もそうですが中国も下手です。
ウイグル問題だけでなく、先進国では企業に人権デューデリジェンスを求める動きが広がっています。法整備がなされ、ひと昔前まで「仕方ない」と許されていたことが、通用しなくなりました。とりわけ日本企業は、サプライチェーン上に強制労働や児童労働などのリスクを抱えています。本日から一週間、「人権とビジネス」についての最新情報をお届けしていきます。
環境破壊やジェノサイドは、企業活動において避けて通れないテーマになっています。
・強制労働/児童労働で生産されたもの
・武装勢力の資金源となっている資源
・民族抑圧がある国や地域の産品
このようなことが川上で行っていないという証明つきで調達することが企業に求められるようになるというのは不可逆でしょうし、サプライチェーンの抜本的な見直しが必要になる企業も多そう。脱炭素などの環境対応含めて、企業活動による「外部不経済への対応」はブームとかではない、企業経営そのものの転換が求められているんだなあ、と改めて思う内容
新疆は200年ほど前から清国の実効統制に入ったので、いまさら分離主義へ支持するのも、「アイヌ民族による北海道独立」と似ているセンスしか感じません。
しかし共産党は統制を新疆に強くかかるのも実情です。イスラム教による宗教統制と衝突するのもあって、漢民族の移住によりウイグル族の生活空間の縮小や、漢民族官僚による政策の受入難など様々な問題が存在しています。
そこでイスラム教過激派組織の影響にも関係があるでしょう。2009年で現地のウイグル族と漢民族の間で暴力騒乱が発生し、その上で2014年ウルムチ南駅テロ事件もあります。その時点から民族独立運動か共産党への反発かテロ運動か、境界線は曖昧になって、共産党の弾圧にも口実となった。
2009年の騒乱
https://bit.ly/3fV9PfN
そんな中、共産党は再教育を名目にウイグル人を強制拘束し、共産党幹部はウイグル族世帯に住み込め生活を監視していることもあって、新疆全域のネット規制、ウイグル族の移動制限、監視カメラの過密化など、生活権への大きな制限があります。
しかし強制労働の証拠は不明瞭のまま。とは言え新疆は中国でも農業の機械化を先行している地域です。昔は人手不足のため、棉の収穫シーズンでは中国各地から摘みとる労働者を一時雇用する動きが多く、団体列車も運行するほど大人気な出稼ぎですが、近年は効率の低く、人件費も採算取れないためなくなりました。
摘みとる労働者の中国語報道
https://bit.ly/2RQyHxg
そこで共産党の宣伝機器は全開。(実際にあった)棉の生産の機械化を打ち出し、「もう人手はいらないので強制労働はありえない。外国の陰謀だ」とアピールし、強制拘束などは一切言及しないことにした。中国の一般民衆で「アメリカは昔黒人奴隷を使っていたくせに、なぜ新疆に批判するのだ」と愛国ムードを養成した。
正直というと、新疆で強制労働を発生する確率は低いと見られます。しかしそれ以外、ウイグル人への弾圧はたくさん存在しているのはほぼ確実です。
人権保護とテロ運動はどう分別するか。イスラム教過激派を抑制しつつ現地民衆の生活権をどう守れるか。それは私見のウイグル問題の解決に向かうべき「本当の中心」だと思います。
NP読者に限らず、子供でもわかるので、環境だけでなく人権とビジネスについて学ぶ上でも学校や家庭などでも見てもらいたいです。(読むというか、見るで分かるがポイント)