ワクチンの特許放棄「魔法ではない」 米国に独仏が反発

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ロンドン=和気真也 ブリュッセル=青田秀樹 江口英佑
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 新型コロナウイルスのワクチンにかかわる知的財産(特許)の一時放棄を米国が認める意向を示したことをめぐり、ドイツフランスが反発している。「供給拡大」を理由にする米国に対し、ワクチン不足は米英が自国を優先して起こったという不満があるからだ。欧州連合(EU)は7~8日の首脳会議でこの問題を議論したが、短期的には「解決策にはならない」との意見が多数を占めた。

 マクロン仏大統領は7、8の両日、「ワクチンの供給増には、ワクチンと原材料の流通が止められてはいけない。現在はアングロサクソンが多くを止めている」などと米英を繰り返し批判。当初、米国の意向に賛同したが、特許放棄の優先順位は低いとの立場を示した。

 米国にはワクチン原料輸出の規制があり、英国もワクチンをほぼ輸出していないとみられる。一方、EUは域内で生産された4億回分の半分を輸出していると主張。接種ペースで米英に遅れても「我々は世界の薬局」(フォンデアライエン欧州委員長)と供給を続ける。

 ドイツには、米ファイザーとワクチンを共同開発したビオンテックが本拠を構える。メルケル独首相も8日の会見で「特許の放棄が普及につながるとは思えない」と異を唱えた。「求められるのは企業の創造性と技術革新の力で、特許保護はそのために必要だ」とも話した。

 先進国には、特許放棄だけでは高品質のワクチンは生産できず、高度な生産技術の移転や労働者の習熟などで開発企業の協力が不可欠だという意見も根強い。

 首脳会議後の記者会見でEUのミシェル常任議長は「様々な議論があった」としつつ、「短期的にみて(特許放棄は)魔法のような手段ではないというのが多くの意見だ」と総括した。

ワクチン普及、立ちふさがる壁

 ワクチン特許の一時放棄は…

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