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形だけの「復興・五輪」 福島から問い続ける

福島県・シネマブロス 宗形 修一

59016af027a21b2b3966f9b70b09828f-1024x683.jpg双葉町写真 2021年

10年経っても…(双葉町)

 人民新聞が東日本大震災・東電福島第一原発事故にこだわり、反原発運動や県民の現況を常に紙面化し報道していることに、福島県に住む者としてたいへん感謝している。
 2020年東京オリンピックの開催で、大震災とF1福島原発事故を隠蔽しようとした安倍政権とこれを継承した菅内閣の戦略は、コロナ禍で完全に破綻をきたし、今度は「コロナに打ち勝った証しとしての五輪」というスローガンにすげ替えてきた。しかし朝日新聞の世論調査(3月22日)では、「延期及び中止」が69%と、圧倒的に反対の意思表示であった。
 私は「ふくしま」の現況の概括的なスケッチを記す。個々の問題については紙面が尽きてしまうので述べないが、本質的なことは、写真にある壊れた家屋や風景は新聞やTVには出ない、出さないということだろう。
 事例として、町域の96%が戻れない帰還困難を抱える双葉町の現況(2月末現在)がある。政府は、帰還困難地域の一部を「特定復興再生拠点区域」と命名し2020年春、町北東部の中野地区やJR常磐線双葉駅などの避難指示を解除し、22年の住民帰還を目指している。現時点の住民はゼロである。その代わりに、原子力災害伝承館や産業交流センターがオープンしている。
 ここで問われるのは居住住民がいない町役場の機能だろうが、井沢史朗町長はF1の廃炉技術のプロで、「世界の安全に寄与できる」と述べている。
 福島県内には現在も、通称「おばQ」と言われる放射線測定器(モニタリングポスト)が設置されている。私の居住する郡山市は、事故前の放射能は0・03μSv/h。市東側郊外にある郡山市立美術館は現在1・12μSv/hで、事故前の4倍だ。この状態は原発事故後、10年続いている。
 NHKのローカル枠では毎日、東電F1の汚染水放出の状況と県内の放射能測定値が報道されている。毎日新聞は「原発週報」を掲載し、原発事故の現場報告を掲載する。3月25日の記事では、「燃料デブリ」の2号機からの取り出しが、2021年から「1年程度遅延」と報道している。その他、前回触れた「汚染水」の海洋放出問題、中間貯蔵施設の2045年県外再処分問題など、課題は山積している。
 最後に、私たち福島県民に東電は地域差を設けて、郡山在住者には損害賠償金一人当たり8万円(12年)と4万円(13年)を支払っている。あの混乱の中でその金なんぞありがたいとも思っていないが、私は、拒絶すべきか迷ったことを記しておく。補償の問題は金額も絡んで、県民を切り裂き共同体を深く分断した。
 私たちは何が起ころうが、福島の地を離れるわけにはいかない。原発訴訟において、「ふるさと喪失慰謝料」が認められつつあることに希望をもつ。

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