専門外の配転に無効判決 職歴尊重、 「ジョブ型」背景に
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ジョブ型雇用は、個人のキャリア・スキル形成を尊重するものですが、その代わり、求められたスキルに見合わなければ解雇もやむなし、というトレードオフの制度です。いいとこ取りはできません。
単に「気の毒」というその場しのぎの判断では労働マーケットのエコシステムが保たれません。当然そうした全体像を理解しての判断だと信じたいところですが、どうでしょうか。
注目のコメント
この件の妥当性については十分な情報を持たないので書きませんが、一般論として、従業員の意向を汲み取らない人事制度が持たなくなってきている感じはすごくしますね。
私がリーダーをしている東京大学マーケットデザインセンター
https://www.mdc.e.u-tokyo.ac.jp
でも企業人事に関する相談事は多いです。ゲールシャプレーアルゴリズムという、部署側と従業員双方の希望を考慮して望ましい配置を実現する方法が知られているため、それを基本におすすめしています。
先日、医療機器大手のシスメックス社の新卒配属のお手伝いをしました(先方のご厚意で、公表しても良いことになっています)上記ゲールシャプレーアルゴリズムを基本にカスタマイズしたもの(Kamada and Kojima, 20015 American Economic Review掲載の論文で提案されたアルゴリズム)を使いました。まだ実施してすぐのため詳しい事後評価はこれからですが、従業員の希望を考慮する点は評判が良かったとお聞きしています。会社が潰れそうにでもならない限り最高裁の整理解雇の4条件に縛られて解雇ができない日本では、担当する仕事が無くなったり能力が仕事に適合しなくなったりした場合、会社は配置転換で対応するしかありません。JOB型雇用が普通の国々では、そうした場合、それまでの貢献に応じた所定の解雇補償金を支払って解雇するのが普通です。
記事から読み取れない個別の事情が本件の背景にはあるのかもしれませんが、一般論として、整理解雇の4条件といった制約を課したまま業務命令による配置転換を妨げると、企業は安心して正社員を雇うことができなくなってしまいます。
高度な専門能力を持ち高給を得ている人材に関する限り、その役割が雇用の前提になっていると見做されるなら、裁判所はある程度まで能力の不適合による解雇を容認しているように感じます。だからこそ会社が専門外のところに配置することを不当とする素地もあるのでしょう。
OJTやジョブローテーションを繰り返して育てる終身雇用の普通の人材にまでこうした保護が及ぶなら、整理解雇の4条件もそれに合わせて見直して、能力や仕事の不適合による解雇を一定の手当と引き換えに柔軟に認める必要があるように感じないでもありません (・・;解雇もできず配転もできず、会社はどないせいっていうねんという判決。営利目的の民間に対する判決とは思えない。公務員なら分かりますが。
ジョブ型背景とありますが、国全体で雇用慣習をジョブ型にもっていきたいの?そんなわけないはずですが。中途半端につまみ食いをし始めると、マジで色々乱れますよ。最高裁の判決が見モノです。
※追記
荒川さん、その指摘は違います。
能力不足による解雇が日本では認められ辛いのは事実で、それは法律上は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合」に解雇は無効と書かれています。日本での社会通念、合理的な理由の中に「配置転換ができるうちは解雇は無効である」というものがあり、だからどうしてもそのポジションにふさわしくない場合には配置転換を検討しようとなっている。にも関わらず配置転換も無効となることに違和感を感じているということです。