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また、企業にはダイバーシティ(多様性)が求められますが、これの意味するところは、多様なステークホルダー(利害関係者)の視点で不適切な(視野の狭い)リスクマネジメントを回避し、企業成長の示唆を得るということが主眼おかれているはずです(株式会社の形態をとる場合は、この考え方が本筋から大きく逸脱することはあり得ません)。したがって、外国人の出資比率が高く、グローバルな企業では、ダイバーシティの観点からも「外国人」が役員に名を連ねることは、当然と言えます。
企業に外国政府、外国企業、外国人が出資している場合、取締役の本来の責任「(会社=株主に対する)善管注意義務」が優先されるはずです。外国人の出資が、その外国との結合関係を意味するので、安保上の理由から出資を制限(禁止)するという考え方は当然かもしれません。しかし、外国人投資家にしてみれば、出資し議決権を保有していても口が出させないのは異常で、法律上も認めれられません。(市場での購入を制限するには、外国籍購入不可か、上場廃止が選択肢になります)
従って、外国からの出資を受けている企業に、安保を理由として大きな制限を加えることは難しいはずです。例えば、役員がこれを推進し(政府の利益に協力し)、企業の成長に悪影響を与えた場合、利益を害した株主から「株主代表訴訟」を起こされることがあり得ます。従って、記事中の「経済安保の担当役員」とは何をする人か、位置づけが見えません。
おそらくこの役員は「政府との連絡係」という位置付け以上のことはできないはずで、経済安保は重要ですが、このような企業には「外国からの出資を認めない」という源流からの対処が不可欠でしょう。日本ムラの論理を、グローバル企業に求め、言うことを聞かなければ社会的に制裁を加えると言えど、海外の株主に歓迎されなければ出資自体がなくなります。
企業をM&Aしたり、企業に出資することは、入手したい側(例えば外国企業)が経営資源を早期に入手したいから行うわけです。日本企業の外国企業への出資も同じ理由で行われます。理にかなった対策を行わないと、実効性が伴わないと思われます。
また、経済安全保障担当の役員に求められる資質はなんでしょうか。自社のビジネスストラクチャーの理解に加え、経済、政治、外交、軍事、地政学などの外部環境に同時に目配せして、タイムリーに経営リスク判断出来る人材ということになりそうですが、本気でそれを進めようとすると、真に腰を据えて人材のリクルーティングと育成をしなければなりません。下手をすると、その人の生命や財産に危害が及びかねないポストになる可能性もあります。
冷戦期以来の安全保障環境不安定期に突入したと言われる現在、民間レベルで経済安全保障を進めることには賛成ですが、単なる「周り持ちの役員ポスト」になっては絵に描いた餅で終わってしまいます。
ところが、今や、M&Aの担当、研究開発、人事、資材などさなざまな部署に関わるようになった。
また安全保障のアンテナが低いために、米中の動きをキャッチし切れず、自社のビジネスとの関連もイマジネーションがわかない経営者も多い。
それが経営を揺るがしかねないリスクであることさえも気づかない実態への危機感からの取り組み。
ただし形だけ整えても魂が入らないと意味がない。
すっかりと、世界は、国防が経済を優先する時代になったわけですから、当たり前のごとく一時的な痛みも受け入れるべきであり、企業がどのようにその痛みをしのぎ、代替手段で収益を稼いでいくかという戦略は、必要不可欠になりましたもんね。
でも、エコノミックステートクラフトって、そんな悪いものでもなく、オーストラリアのシンクタンクからも対中依存は過剰評価だったとして、結局輸出トータルは増えてますし、そんな悪い話じゃないと思います、たぶん。
ピンチはチャンスなんだなーと、前向きな気分になれるのは祝日だからかもしれませんが(笑)