【4月30日 東方新報】世界的な半導体の不足が、中国自動車産業界の大きな壁となっている。国内消費は回復しているのに、自動車生産は停滞。中国は長年、半導体産業の育成に力を入れてきたが、高性能チップでは国際的に後れを取っており、中国経済の構造的弱点が自動車業界回復の足かせとなっている。

 中国自動車工業協会によると、3月の国内自動車生産台数は前年同月比71.6%増の246万台を記録。12か月連続で増加したが、コロナ禍より前の2019年3月の水準には届いていない。同協会の許海東(Xu Haidong)副総工程師は「半導体チップの不足が要因の一つ。今年後半にはチップ不足が改善するとみていたが、年末まで待たなければならない」と見通しを語る。

 新興電気自動車メーカーの上海蔚来汽車(NIO)の李斌(Li Bing)CEOは「わが社は月産1万台の電気自動車を生産する能力を持っているが、半導体チップ不足とバッテリー供給の制約により7500台に制限している」と話す。中国汽車流通協会は、自動車在庫の減少が続き、一部の車種は需要に追い付いていないとしている。

 半導体は電子機器の動きを制御する頭脳の役割を果たす。自動車1台につき約100個の半導体チップを搭載しており、自動車は「走る半導体」といえる。そして今、スマートフォンやパソコンなど他の業界と比べても、自動車業界は最も半導体チップが不足している。新型コロナウイルスの拡大で自動車生産が落ち込んだ時期、車載用半導体を作るメーカーは生産ペースを落としたが、予想以上に自動車の需要が早期に増加。自動車は高い安全性が求められるため、車載用半導体はわずかな不具合も許さない精密さを持つ。製造ラインも細かくチェックするため、ラインが正常に稼働して製品を納品するまで数か月かかる。また、利益率が高いスマホやゲーム機、パソコン向けの半導体の生産が優先され、車載用半導体が後回しにされているともいわれる。

「産業のコメ」といわれる半導体だが、中国の国産化率は20%弱にとどまる。半導体ウエハーなどの材料品や半導体製造装置、測定・検査用機器の多くは米国、日本、台湾などに頼っている。中国の研究者からは「米国が長年にわたり半導体製造装置などの輸出制限を行い、中国の半導体産業の発展を制約してきた」という批判もある。

 中国は産業政策「中国製造2025」で、半導体の国産化率を25年までに70%にするとしている。ただ、クオリティーの高い半導体を製造するためには、優れた半導体製造装置が必要になり、海外からは「短期間に国産化率を高めるのは難しい」という見方が多い。

 半導体産業の早期育成を目指す中国政府は昨年12月、半導体の製造や設計、製造設備を手がける企業の所得税を最長10年間減免すると発表。これを受け、今年第1四半期(1~3月)には半導体関連企業8679社が新たに登録された。前年同期比302ポイントの増加だ。「もうかる」と分かると動きが速いのが中国企業。政府の後押しを受けて、どれだけ国産化率を上げるか。日本企業への影響も大きいことから、今後が注目される。(c)東方新報/AFPBB News