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50年の時間を経て、歴史も相対化されていく。アートでいえば、マルセル・デュシャンの「泉」なり、アンディ・ウォーホルの「マリリンモンロー」でもよ良いですが。いまだ色あせずに、それでも、現代に生きる我々からすると、歴史的なコンテキストを意識せざるをえません。
個人的には、写真を見ているだけで、ディテールのところどころに震えを感じます。柱上部のジョイント部一つとっても、この圧倒的な浮遊感。前近代の「壁という呪縛」から確信犯的に突き抜けた、モダニズムの結晶を感じさせるデザインの極致です。
20世紀後半のいわゆるモダニズムの傑作建築がメンテナンスの臨界点を越え始め、これ以上金をかけ始めるならいっそ解体建て替えをとなる事例が世界中で激増している中、しっかりと時間とお金をかけてオリジナル以上の質に戻して次の50年を生かそうとする、社会として、国としての心意気が如実に現れている。拍手。
今回改修を担ったのがイギリス人のチッパーフィールドという点も今どきで、チッパーフィールドは確かにベルリンにも事務所を持ちドイツでの実績も多いとはいえ、ザハの新国立を官民一体で潰しにかかって結局自分たちの進歩を止めているどこかの国とは、社会の許容度に隔世の感があるなと。文化って、こういう社会全体の理解の蓄積だよね。
チッパーフィールドもミニマルなデザインで知られているとはいえ、どこか無骨さを残すミースに比べてどの仕上げ、どの質感を見てもどこかチッパーフィールドで、同じ形をなぞったリスペクトの中でもこうも違いが出るものかという驚きも。いちいちテクスチャがチッパーフィールド風で、シルキーにサラリと優しい。
今後日本でも同様のモダニズムの名建築の保存問題は多く出てくる中で、デザインだけでなく技術や価値化のスキーム、社会の理解の醸造などこうしたノウハウの共有と分析が日本で十分になされているとは言い難い状況にある。ぜひ日本の建築研究者には、このあたりのビジネススキームをしっかりと研究していただきたいところ(NYのTWAターミナルとかもレストアの細部までのこだわりは本当に凄かったし)。
newspicksでは珍しい建築ニュース、かつ大好きなarchifuturephotoからの引用ということで、ついつい嬉しくてコメントしてしまいました。もっとこういうニュース続いてほしい。
様式美を重視されていた時代から、機能に合わせて建築を作るべきとのモダニズム運動があり、更にどのような用途も受け入れられる「ユニバーサル・スペース」を追求した代表作品です。格子状の梁が一体化した天井のワッフルスラブが意匠と構造を両立させ、周囲には上に行くほど細くなるスチール柱と、石で装飾された構造壁によってミニマルに構造を成立させ、(ほぼ)無柱の開放的な大空間を実現しています。
今回の修復を手がけられたのがデビッド・チッパーフィールドというこれまたロンドンの巨匠であり、ミニマルなデザインが特徴です。ミースの修復にチッパーフィールドをアサインされた事業主の建築センスが脱帽です。ミースのデザインへのリスペクトが感じられる名作。建築は構造・設備等が複雑に組み上がって出来るものなので、ミニマルに表現することはとてつもなく大変なのです。
ガラスがガラスであることを最大限に活かした構造と意匠。
言葉にならない。素晴らしすぎる。
ミース・ファン・デル・ローエの、新ナショナルギャラリーの修復記事。
下記記事に、修復前の状態が掲載されています(どれくらい大切にされているかわかる)。
https://panda-chronicle.com/neue-nationalgalerie-2011/
興味ある方は、比較されるのも楽しいかも。
開館は1968年。
日本ではこのような建築の実現は難しいとわかっていても、やっぱり素晴らしいなぁ。