コロナショックで変わる中国の経済成長エンジン
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筆者の西村です。
2020年における中国の実質経済成長率は2.3%でしたが、内訳をみると、去年もコラムで指摘していた「投資主導型」への転換によるものでした。
投資拡大の原資となったのが地方専項債の増発で、今年も高い発行水準が続き経済成長を支える見通しです。
しかし、今後は国有地使用権の譲渡収入に頼る「土地財政」の先細りも懸念されており、短期的な経済成長の代償が、長期的には地方政府の債務問題という形で表れてくるかもしれません。中国の地方政府は、1980年代にインフラ整備などを主眼に地方債を発行していた。1994年には「予算法」が成立し、各地方政府は収支均衡が求められ、地方債の発行は禁止された。しかし、リーマン・ショック後に中国で行われた4兆元の経済対策を背景に、2009年以降徐々に規制が緩和され、地方債の発行も再開された。(公共工事を介し地方政府を主体として行われていたが、中国の税制は税収が中央政府に偏在する構造にあり、地方政府は財源が乏しい状況にある。)
なお、中国の地方政府債は一般債と専項債に分けられる。一般債は収益のない公益性項目のために発行され、一定期間内に一般公共予算収入から元利金払いされる債券である。専項債は一定の収益がある公益性項目のために発行され、一定期間内に公益性項目に対応する政府性基金或は専項収入から元利金払いされる債券となっている。
また、2020年7月から、地方専項債による中小銀行の資本補充が可能となった。2020年には18の都市で中小銀行の資本補充目的で2,000億元の専項債が発行された。
2020年末時点でで、地方政府債の残高は25.5兆元に達し、中国国内の各種債券残高の22.3%を占める。(金融債が最も多く23.68%を占め、その次に地方政府債が来る。国債は3番目で18.1%を占める。なお、日本では、2019年度の国債残高が約989兆円に対し、地方債が約143兆円と、国債残高が圧倒的に多い。)地方政府債の残高の内訳は、一般債が51%、専項債が49%となっている。
2020年の地方政府債の発行額は6.4兆元、2兆元が満期を迎え、ネットで4.4兆元残高が増えた。この6.4兆元の新発地方政府債のうち、専項債は約64%を占める。
なお、地方政府債の主要投資家は商業銀行であり、85%も保有している。広発証券によると、2021年に一般債残高は1兆元、専項債残高は3.5兆元増える見通し。
推測:
2019年9月に土地備蓄を目的とする専項債の発行が禁止され、2020年4月に改めて強調された。これは経済成長が減速する中、インフラ投資による経済対策である。そのため経済が回復すれば、この規制は緩和される可能性があると思う。また、実際には専項債によるインフラ建設のプロジェクト内に土地整理業務が係るため、政府は土地備蓄と他のプロジェクトと組み合わせて発行することも可能だと思う。