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ミューオンのg因子の理論値とのズレを証明

20年前にDoE(米国エネルギー省)ブルックヘブン研究所(BNL)で示唆されたミューオンg因子の理論値と実験値の違いが、長い時を経てDoEフェルミ国立加速器研究所(FNAL)にてかなり確からしい事が証明されたとのこと。


これは、2013年のノーベル物理学賞にもなったヒッグス粒子の発見で一応の完成をみた、素粒子物理の屋台骨である「標準模型」の、50年来初めての実験による綻びの証明になる可能性がある。

「標準模型」は重力を説明できない、ニュートリノの質量を説明できないなどの問題はあるが、標準模型で正確に予測されるはずの物理量が実験値と異なるという結果はこれまでなかった。

ミューオン(ミュー粒子)とは、標準模型における第二世代荷電レプトンで、電子の親戚のような存在(ただし質量は約200倍)。超新星爆発などで飛来する宇宙線の原子核が地球大気分子の原子核と衝突する際にも生成され、1分間に1平方センチあたり1つ飛来している。X線よりも透過性が非常に高いため、原発やピラミッドなどの巨大構造物の内部構造を知るために使われたり(宇宙線ミューオンラジオグラフィ)、物質の内部磁場を測定するμSRなどの技術でも使われている。

g因子は、磁気モーメントを持つ粒子の角運動量と観測される磁気モーメントを結びつける比例定数で、殆ど「2」だが(ディラック方程式では正確に2で、「2回転」すると元の状態に戻ることに相当する)、実際に観測される値は量子効果で2からわずかにズレる(異常磁気モーメント)。

ミューオンのg因子の標準模型による理論値と今回の実験値の比較は、

理論値:2.00233183620(86)
実験値:2.00233184122(82)

2とのズレの半分(a=(g-2)/2)に相当する異常磁気モーメントaの表記では、

理論値:0.00116591810(43)
実験値:0.00116592061(41)

で一見その差はわずかだが、4.2シグマ(およそ99.9973%)の精度で理論値とズレている。この業界で必要とされる5シグマ(99.99994%)まであと一歩。

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ただし、ミューオンg因子の理論計算は難しく、2つ目の記事によれば、多くの理論家がこのギャップの謎に挑戦している様も紹介しています。

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