ブラジル、1日あたりの死者4000人を超える 新型ウイルス
ブラジルで6日、新型コロナウイルスの1日あたりの死者が4195人となり、初めて4000人を超えた。より感染力の強い変異株が、死者急増の原因になっている。
ブラジル各地の病院が、押し寄せる患者に対応し切れていない。都市によっては、治療を待つ間に亡くなる人が出ている。多くの地域で、医療システムは崩壊寸前の状態にある。
これまで同国で新型ウイルスによって亡くなったのは約33万7000人で、アメリカに次いで世界で2番目に多い。
それでもジャイル・ボルソナロ大統領は、感染抑制のためのロックダウンには反対の姿勢を貫いている。
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ボルソナロ大統領は、経済への打撃は新型ウイルスによる被害より深刻だと主張。地方当局が実施している規制措置を、裁判で無効にしようとしている。
6日には、大統領公邸の外で支持者らに向かい、感染者らに対する隔離措置を批判。隔離が肥満やうつ症状の原因になっていると、根拠を示さずに述べた。一方で、1日あたりの死者数が最多を更新したことには触れなかった。
保健省によると、ブラジルの新型ウイルスの感染者は累計1300万人を超えている。3月に新型ウイルス感染症で亡くなったのは6万6570人で、それまでの1カ月あたりの最多死者数を2倍以上、上回った。
深刻な状況
保健機関のオズワルド・クルス財団(FIOCRUZ)によると、ほとんどの州の病院で、集中治療室の病床の90%以上が新型ウイルスの患者で埋まっている。
いくつかの州では、酸素と鎮痛剤の不足が報告されている。
こうした危機的な状況にもかかわらず、一部の州や都市は、人々の行動制限の緩和を進めている。
公衆衛生当局に助言を行う保健政策研究所のミゲル・ラゴ事務局長は、「ジャイル・ボルソナロ大統領の反ロックダウンの主張が勝利したということだ」とAP通信に話した。
「市長や知事は政治的な理由から、社会的距離を取る対策を強化できないでいる。ビジネス界の有力者など大統領支持者たちによって妨害されることが、わかっているからだ」
ワクチン接種率は8%
極右のボルソナロ氏は、新型ウイルスの影響は小さいとし、ワクチンの効果を疑問視している。一方で、有効性が証明されていない薬を支持している。
新型ウイルス対策には批判が高まっており、支持率は落ち込んでいる。
最近は姿勢を変え、今年を「ワクチンの年」にすると表明。だが、接種は順調には進んでいない。アワ・ワールド・イン・データによると、ブラジルで1回でもワクチン接種を受けた人は人口の約8%に過ぎない。
ブラジル型の変異株
オズワルド・クルス財団は、ブラジルで92種類の変異株を確認したとしている。感染力が格段に強いと考えられ、懸念の種となっている「P.1」(ブラジル型とも呼ばれる)もその1つだ。
この変異株は、アマゾナス州で昨年11月に発生し、州都マナウスで急速に拡大したとみられている。マナウスで今年1月までに確認された新型コロナウイルス感染者のうち、73%はこの変異株に感染していたとされる。
専門家は変異株の広がりから、今後数カ月は同国で感染者が増加するだろうと指摘している。
ブラジル型の変異株は、他の南アメリカ諸国の感染者と死者の急増にもつながっているとみられている。