海運にも「脱炭素化」の波 投資すべき意外な理由
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海運業を通じて排出されるCO2の量はカナダやドイツ一国分に匹敵することが知られています.国際海運における環境対策については,各国ではなく国連の一機関である国際海事機関(IMO)の場で話し合いが進んでいます.2020年11月に開催されたIMOの海洋環境保護委員会で温室効果ガス(GHG)削減に向けた短期対策が基本合意されており,海運の脱炭素化に向けて様々な対策が進んでいます.
たとえば,水素,アンモニア,メタン・メタノール,さらには船上のCO2回収などいろいろな方法が考えられています.一方で,決め手に欠けるというのも現状だと伺っています.今後は,それぞれの技術の有利不利や課題などを洗い出したうえで対策が進展していくことになります.
一方で技術開発に必要な財源確保もそうですし,リスクをとって先行投資を行った企業が不利にならないようにすることも重要でしょう.きちんと環境投資に対する対価を,我々も支払わなければならないです.
また,日本の造船業は比較的環境対応に優れているとされていますが,造船業にとってもより付加価値を高める契機となることを望んでいます.造船業は雇用のすそ野が大きいため,とても重要な産業です.直近の代替燃料としてLNG燃料が本命.ただ,カーボンフリーは達成できない.排出CO2を回収することも考えられる.バイオ燃料もあり得るが,大量生産できるか,コストはどうかという問題.本命は水素とアンモニアか.ただし,密度が小さく,エネルギー密度が小さいため,船の設計が根本的に変わる.この辺りは航空機と同じ.極低温を長時間保たないといけないことももデメリット.風力推進もあり得る.
もっと広い視点で,グローバル物流はどうなっていくのか,どうしていくかを考えないといけないか.極端な話,必要なの?という点.国際海運のGHG削減戦略は、2008年基準で2050年で50%削減、2100年で100%削減とかなりアグレッシブですが、未だに達成するために必要な技術確立が出来ているわけではありません。水素燃焼やアンモニアが有望視されていますが、欧州はその規格争いでリードしています。船の世界は独特で保守的な世界で、技術的に優れていれば採用されるというものではなく、船級(基準に適合していることを証明するもの)の有無で決まります。
2050年は遠い未来に思えるかもしれませんが、船の寿命が30年としたら、新造船はそろそろ対策を考えないといけない時期に差し掛かっているとも言えます。