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【まとめ】琉球アスティーダ

設立からわずか3年で上場を果たした、プロスポーツ運営会社「琉球アスティーダ」についてまとめてみました。

※もし間違い等ございましたら、優しくご指摘ください^^笑

■設立経緯

創業者は事業家として知られる早川周作氏。

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実業家といってもいろんな方がいらっしゃいますが、早川さんの「弱い地域や弱い立場の人たちにも光が当たるようにしたい」という志が素敵ですね。

早川:元々私は19歳の時に父親が倒産して蒸発しまして。生活が苦しくて市や県に相談に行ったんですけど、解決方法が見つからなかったんですよ。だから社会構造や社会基盤として、強いところだけではなくて、弱い地域や弱い立場の人たちにも光が当たるようにしたいという志を持っていました。中小企業を成長させる現在のコンサルの仕事もそうですし、「光の当て方を変える」という意味で自分の志にぴったり当てはまったんですよね。-スポジョバ記事

これまで様々な会社の事業立ち上げに携わってきた方ですが、スポーツ業界を手掛けるのは初めてだったそうです。

Tリーグ発足前、チェアマンの松下浩二氏から依頼を受けたことを機に2018年2月、会社を立ち上げました。

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早川:その数年前から東京から沖縄に移住していたんですが、Tリーグを2018年に発足するにあたって、チェアマンの松下浩二さんに声をかけられたのがきっかけです。その時に言われたのが、「5歳で始めたスポーツで15歳でメダルが取れる。沖縄の貧富の格差が拡大する中でお金をかけずにチャンスが与えられる球技は他にあるか?」と。地域活性を信条としてきた私は、その言葉を聞いて引き受けることに決めたんです ースポジョバ記事

貧富の格差拡大という問題を抱えている沖縄の地で、お金をかけずにチャンスが与えられる卓球というスポーツで地域活性化を図りたい。
そして、ディスクロージャーに積極的でなく、上場しているプロスポーツ運営会社がないという閉鎖的なプロスポーツ業界を変えるべく、株式上場することで業界を変えたい、という想いを胸に「琉球アスティーダ」は歩み始めました。

沖縄に行くと野球、ボクシングのファンに多く出会うのですが、最近はバスケットボールも注目されていますよね。スポーツ好きな沖縄の人に卓球というスポーツがどう浸透していくのか楽しみです。

ちなみに日本は卓球の世界ランキングでも男女ともにトップ3に入るほど強いスポーツなんですね。

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私が子供のころは卓球といえば愛ちゃんというイメージしかなかったのですが、石川佳純選手や平野美宇選手、水谷隼選手、張本智和選手などたくさんの選手が思い浮かぶようになりました。

■Tリーグとは?

2018年10月に開幕した日本の卓球プロリーグのこと、男子4チーム、女子4チームが所属しています。

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家電量販店のノジマを筆頭に、東京ばな奈、ドコモなどのスポンサーを抱えています。

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■どうやって稼いでるの?

2018年の創業時から「スポーツ関連事業」と「飲食事業」の2つの事業で収益を上げています。

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セグメント別成績


売上全体の約66%を占める主力事業「スポーツ関連事業」の売上内訳を見てみましょう。

スポーツ関連事業


この記事を書いている2021.3.31時点でスポンサー企業一覧を見ると125社掲載されていますね。


スポンサーと一口に言っても、

①トップスポンサー:ユニフォームに社名掲載される等
②オフィシャルスポンサー:呼称権・集団肖像権の使用や選手の企業訪問等
③オフィシャルパートナー:HPでのロゴ掲出やチケット提供等

の計3種類あります。

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売上の主たる相手企業として、ピーチ航空の「Peach・Aviation」はオフィシャルスポンサーのようです。

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売上貢献度が高いスポンサー収入ですが、毎シーズン継続してスポンサーになる企業は少なく、契約に向けて営業担当の人件費や広告宣伝も嵩みそうですね。

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またTリーグは8月~2月がレギュラーシーズンとなっているため、12月決算の琉球アスティーダのスポーツ関連事業売上も下半期に高くなる傾向があるようです。卓球のシーズンって初めて知りました。

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スポンサー収入の次に大きい「Tリーグ配分金」

配分金

サッカーJリーグ、バスケットボールBリーグなど他のスポーツリーグでも採用されている「配分金」という制度で、リーグの収入の一部を各所属チームに配分する制度です。

リーグに入る放映権料やスポンサー収入を各チームに分配することで、チーム運営や選手育成に役立て、業界をさらに盛り上げていこうぜという目的のもと採用されています。

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Tリーグの場合、配分金の内容は毎年変わると書いてありますが、基礎配分金と順位連動型配分金+α(←ここが毎年変わる)という仕組みのようです。

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SNSフォロワー増加数に応じた配分金っておもしろいですね。

配分金の収入も10%とはいえ貴重な収入源ですし、計算方法は分かりませんでしたが順位に応じて受け取れる配分金もあるので、やはり強いチーム&集客力のあるチームに育てることが重要になります。

卓球が盛り上がることで、Tリーグに所属するチームや人気の高い選手が増えて、スポンサーも増えると更に配分金拡大が狙えそうですね。

そして、もう一つの収益源である「飲食事業」

卓球ができる飲食店「バルコラボ」を沖縄県内に計13店舗(直営9、FC4)を展開しています。

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お肉料理が中心単価が少しお高めなのと、卓球ができるということはグループ客も多いということもあるのか、売上全体のうち34%を占める事業になっています。

直営も多く店舗運営費の負担もあるので、気になる利益率ですが、セグメント利益率は10%です。

会社設立もそうですが、オープンして1年以内の店舗も多いので、リピーター新規顧客獲得含め、今後の数値が気になりますね。

飲食店の場合、売上を伸ばすためには店舗拡大が必要ですので、沖縄以外の地への出店も広げていけば収益拡大が見込まれますね。

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では、これらの収益がどれだけ利益を生んでいるのでしょうか?

卓球は、野球やサッカーと異なり先週に係るコストは押さえられそうなイメージもありますが、まだまだTリーグ開幕(2018年10月)から2年程度しか経過していないことでチームの認知度もまだ低そうなので販管費も嵩みそうですよね。

では、損益計算書を見てみましょう。

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売上高2億6,122万円に対して、本業の儲けを表す営業利益は40万7,000円なので、営業利益率は0.2%とやはり低いですね。

ここで「え!おしばさん、冒頭のセグメント別成績で利益率がスポーツ関連事業13%、飲食事業10%って言ってたやんか!」と思われるかもしれません。

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下部の注書きにあるように、各事業に配分していない全社費用(一般管理費)が含まれているようで、ごっそり利益持っていかれているがゆえ、本業の儲け=営業利益は40万7,000円となっています。

売上を上げるためにどんなコストが掛かっているのでしょう?

まずは、原価=売上に対し直接的に掛かるコストの内訳です。

琉球アスティーダ

売上のうち約半分を占めている原価ですが、スポーツ関連事業によるものが75%、飲食事業が25%となっています。スポーツ関連事業の売上は全体売上のうち66%でしたから、スポーツ関連事業の方がコストが嵩んでいることが分かります。

特に目立つのは原価のうち約半分である約5,800万円を占めている「労務費」です。これは選手への報酬が主たるものであり、選手はチームにとって立派な商材ですので原価に入るものと推測できます。

原価のうち5%とは年間560万かかっている交通費は遠征費だと思いますが、沖縄のチームなので卓球じゃなかったら膨大な金額になりそうですよね。むしろ卓球だからこそ抑えられているのでしょうか。

Tリーグの所属チームは東京2チーム、埼玉1チーム、愛知1チーム、大阪2チーム、岡山1チーム、沖縄1チームで関東より上にチームがなく、沖縄以外の移動距離が短いので比較的遠征費を抑えやすいのかもしれません。

そして「分配金」原価なのですが、これは年会費でしょうかね…?シーズンが始まる8月までに納付しないといけないみたいですが、財務数値では1,900万円となっているので、400万多いのが気になります。
(どなたかお詳しい方、教えていただけたら泣いて喜びます)

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また、原価と同じく約半分掛かっている販管費ですが、多くは人件費にかかっています。選手の管理やスポンサー企業獲得に向けた営業活動に係る人件費、飲食店のアルバイト給料、認知度拡大のためにかかる広告宣伝費などが大半を占めます。

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このように選手にかかる報酬や遠征費、そしてスポンサー獲得にかかるコストがかかるビジネスですが、他のチームスポーツよりも選手の人数が少ないことで利益を生み出しやすいというメリットはあるようです。

補足)経常利益、当期純利益がともに大きくなっている理由

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・経常利益の増加要因
営業外収益に支援金・協賛金収入が計100万近く計上されていること、消費税の還付でしょうか、300万近い金額が計上されていることに伴い、結果営業利益よりも400万円ほど利益が増加しています。

・当期純利益の増加要因
税務上の繰越欠損金による繰延税金資産の増加に伴う法人税等調整額220万の影響で当期純利益が増加し、結局653万円となっています。

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■財務基盤はどうなの?

プロスポーツチームの運営を継続していくための財務基盤を見ていきます。

まず、琉球アスティーダは飲食店を経営しているため店舗設備は所有していますが、会場などの大きな資産を抱えていないので、総資産額よりも売上高が大きくなるという財務二表のバランス感です。

bspl比率


貸借対照表をもっと詳しく見てます。

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営業サイクルを考えてみると、スポンサーからのお金を受け取り、そのお金を使って各種経費の支払いを行っているイメージがあります。

【事業内容とお金の動きを整理】

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スポンサー収入
契約内容によって期間やタイミングが変わると思いますが、事前に1年分等まとまったお金を受け取った上で、チーム運営費用(人件費や遠征費、広告費など)を都度支払っていくというサイクルでしょうか。

Tリーグ配分金収入
入金の頻度やタイミングは分かりませんが、興行を行った後に入金されることは間違いないでしょうから売掛金が大きくなりそうですね。前述のとおり、年会費はシーズン前に納付するようなので大きなキャッシュが先行して支払われることになりそうです(年会費1,500万円)

飲食店事業の収入
店舗で料理を提供することで代金を受け取りますが、飲食店では現金決済が多く現金を多く保有していることや、クレジットカード決済などの代金未回収分(売掛金)がありそうであることが予想できます。

ここまでが、大きい収入源です。
以下は売上に占める割合としては少ないですが紹介しておきます。

卓球教室
入会金、年会費、月謝という3つの収入がありますが、もちろん大きい部分は月謝になるはずです。こうした習い事は翌月分を先に受け取ることが普通でなので、前受金も大きくなりそうです。

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ファンクラブ収入
会員数は分かりませんが年会費としてお金が入ってきます。

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チケット収入
ホームゲームでチケット販売をした場合に入ってきます。高い席だとクレジットカード売上も多そうですね。2020-2021シーズン(4か月)では21試合のうち5試合が行われました。
(プロ野球ファンがゆえ、想像よりも試合数が少なくてびっくり

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グッズ収入
卓球教室や試合会場でグッズ販売をすることでお金が入ってきます。卓球用品となると現金決済だけでなく、クレジットカード売上も立ちそうです。

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その他YouTubeからの広告収入やトライアスロン教室などからの収入もあります。


では、キャッシュインから生じる部分で大きい数値を見ていきます。
売上代金の未回収分や前受分が多く計上されています。

売掛金
売上に対応する形で計上されるものですので、スポンサー収入Tリーグ配分金飲食売上に関係するものと推測できます。スポンサー料の契約方法にはいろいろあると思いますが、未回収のスポンサー料などがあれば売掛金に計上されることになります。

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Tリーグに対するものが1番多くを占めており、Tリーグ配分金かと思います。その他は、クレジットカード会社からの未入金分や一部協賛金の未収分なども入ってくるのでしょうか。
スポンサー企業から受け取るスポンサー料は、基本的に事前に受け取ることが多いと思われますので、売掛金ではなく前受金に計上されるかと思います。

前受金
前述したようにスポンサー企業からの前受金分や、卓球教室の月謝等などが入りそうです。

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上記の企業はすべてスポンサー企業ですね↓

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次はキャッシュアウトから生じる大きい数値を見ていきます。
選手への報酬や飲食店の費用(仕入先への未払分、アルバイトの給料)が多くなっています。

買掛金
選手への報酬額、飲食店の仕入先に対する後払い分が目立ちます。Tリーグへの支払いが会費以外、規定を読んでも分からずこちらも分かる方いましたら是非お願いします。

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未払金
こちらも飲食店のアルバイトに対する給料とリース料の一部未払分が計上されていますね。

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では、その結果として保有しているものはどうでしょうか。

現金
シーズン中には興行収入、シーズン関係なく飲食店の収入、教室運営によりい安定した収入もありと、コロナウィルスがなければお金が入ってくる機会は多いです。

Tリーグへの会費支払い以外は、事前に入ってきたスポンサー収入を使って支払いを行っていくというフローでしょうし、月謝や飲食店売上などの現金収入も多いことで現金保有額が多くなっているのかもしれません(上場前ということもありますが)

のれん
気になる「のれん」ですが、これは2019年に事業譲渡を受けた際に計上したもので、2020年にも4店舗を譲り受けているので更に拡大しそうです。

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ちなみに、2019年12月期末の時点では無借金経営でした。
純資産も41%となっていましたが、2020年中間決算(1月~6月)はどうでしょうか。

コロナ直撃決算です↓

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下半期に売上が計上されるとはいえ、2020年序盤の大会やイベントが中止になったことで厳しい状況です。

上半期&コロナ直撃で売上額が少ないこともありますが、それよりも総資産額倍近く膨らんています。

2020年に入ってから、
①飲食店を4店舗譲り受けたことにより無形固定資産「のれん」が約3,200万円増加したこと
②運転資金の確保のため長期借入金を1億4,000万円調達したこと

によって総資産額が大きく膨らみました。

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■おわりに

コロナで試合やイベントの中止、入場制限など大きな影響を受けているであろうスポーツ関連事業。休業要請や営業時間短縮によって客数が激減しているであろう飲食事業を展開している同社ですが、「上場」「東京オリンピック」とおめでたい2021年から飛躍的な成長を遂げることを期待しています!

個人的には毎年沖縄に1人旅をするほど大好きな場所なので、ぜひ沖縄を応援する意味でも「琉球アスティーダ」を応援したいと思います。

「琉球」の「明日(アス)」が「太陽(ティーダ)」で明るくなりますように^^

■参考文献





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