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知っておきたい!介護事業のデータ(介護事業の種類を知ろう)

はじめに

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今回から「知っておきたい!介護事業のデータ」の連載を始めます。

介護業界では様々なデータが公開されていますが、十分に活用されていません。

その現状を変えたいと想い、「データを誰もが活用できる世の中にする」をコンセプトにnote、Twitterを中心に情報発信しています。

この連載をきっかけに介護事業の様々なデータを知ってもらえたら嬉しいです。

できるだけわかりやすく書きたいと思いますが、不明点や疑問点などあれば補足しますので、ぜひコメントください。

最後に確認クイズも用意しています。

まずは初回ということで、介護事業(正式には、介護保険サービス)の種類について説明しつつ、関連したデータを紹介します。

■この記事でわかること
・介護保険サービスとは何か
・介護保険サービスの種類
・介護保険サービスの市場規模

高齢者の14%が利用!介護保険サービスとは?

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介護保険サービスとは、介護保険で受けられる介護サービスのことです。

要支援・要介護認定を受けた方のみ利用できます。

利用者の自己負担が1~3割ですので、家計への負担が少なく、介護サービスを受けることができます。

2000年に介護保険制度がスタートしてから、利用者は増え続けており、今後も利用者は増えていくと見込まれています。

介護保険サービス利用者数の推移
出典:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

65歳以上の高齢者(第1号被保険者)は3,528万人で、そのうち487万人が、介護保険サービスを利用しています。

つまり、高齢者の約14%が介護保険サービスを利用しているのですね。

介護保険サービスの利用者数は高齢者の約14%

介護保険サービスは全26種類もある

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介護保険サービスは当初17種類からスタートしましたが、徐々に増え、現在では26種類あります。ありすぎてよくわからないという声もよく聞きます。

厚生労働省が公開している介護保険サービスの種類を示した図です。

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出典:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

上段に位置する「介護給付を行うサービス」が全26種類です。

少し複雑そうに見えますね。整理しながら見ていきましょう。

介護保険サービスは4分類に分けられる

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まず介護保険サービスは4つに分類されています。

■介護保険サービスの4分類
①居宅介護サービス
②施設サービス
③地域密着型介護サービス
④居宅介護支援

さきほどの図で示すと、以下の通りです。

介護保険サービスの4分類を示した図
介護保険サービスの4分類を示した図

ひとつずつ見ていきましょう。

①居宅介護サービス

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居宅介護サービスの一覧

居宅介護サービスは、自宅にいながら利用できる介護サービスのことです。

居宅介護サービスは全部で12種類もあり、機能も多様です。

介護職員等が自宅に訪問してくれる「訪問サービス」、自宅から介護施設に通う「通所サービス」、短期間の宿泊を行う「短期入所サービス」等があります。

詳しくは今後説明してきます。

すぐに知りたい!という方は以下のリンクからWAM NETの概要ページをご確認ください。わかりやすくておすすめです。

■居宅介護サービス 全12種類
訪問介護(ホームペルプサービス)
訪問入浴介護
訪問看護
訪問リハビリテーション
居宅療養管理指導
通所介護(デイサービス)
通所リハビリテーション(デイケア)
短期入所生活介護(ショートステイ)
短期入所療養介護(ショートステイ)
特定施設入居者生活介護
福祉用具貸与
特定福祉用具販売

②施設サービス

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施設サービスの一覧

施設サービスは、施設に入所して受ける介護サービスです。全4種類あります。

24時間介護サービスを受ける必要があったり、ご家族の事情だったりで、なかなか自宅で過ごすことが難しい方が、自宅から引っ越して受ける介護サービスです。

こちらも詳しくは今後解説していきます。

WAM NETへのリンクはこちらです。

■施設サービス 全4種類
介護老人福祉施設(特養)
介護老人保健施設(老健)
介護療養型医療施設
介護医療院

③地域密着型介護サービス

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地域密着型介護サービスの一覧

地域密着型介護サービスは、市区町村が提供する地域に密着した介護サービスです。市町村内の人だけが利用できる点が特徴です。全9種類あります。

地域密着型介護サービスには、小規模多機能型居宅介護という自宅からの訪問・通い・宿泊を組み合わせた介護サービスがあったり、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)という小規模な住宅を提供するサービスがあったり、種類が多様です。

介護保険サービスの4分類の中でも、最もわかりにくいですので、あとでもう少し詳しく説明します。

WAM NETへのリンクはこちらです。

■地域密着型介護サービス 全9種類
定期巡回・随時対応型訪問介護看護
夜間対応型訪問介護
地域密着型通所介護
認知症対応型通所介護
小規模多機能型居宅介護
認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
地域密着型特定施設入居者生活介護
地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
看護小規模多機能型居宅介護

④居宅介護支援

居宅介護支援は、介護を必要としている人が適切な介護を受けられるように計画を作成したり、各種介護サービスとの連絡・調整などを行うサービスです。

介護保険サービスはとても多様で複雑ですので、利用者が一人で適切に選ぶことは困難です。

そのため、まずは居宅介護支援を利用し、介護保険サービスをどのように利用するかを決めた介護計画書(ケアプラン)を作成します。

介護保険サービスの入り口になるようなサービスですね。

WAM NETへのリンクはこちらです。

■居宅介護支援 全1種類
居宅介護支援

地域密着型介護サービスがわかりにくい理由

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介護保険サービスの4分類のうち、もっともわかりにくいのが「地域密着型介護サービス」です。

居宅介護サービス → 自宅から利用する
施設サービス   → 施設に入所する
居宅介護支援   → 介護を利用するための計画の作成

この3つは役割が明確で分かりやすいです。

一方で、地域密着型介護サービスは、役割ではなく、「サービスを提供する範囲」で定義されているため、わかりにくいです。

図するとこのようなイメージです。

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地域密着型介護サービスが受け持つ領域のイメージ

地域密着型介護サービスは事業所のある市町村内の人だけが受けることができます。

なぜ地域密着型介護サービスだけが、特殊なのかというと、後からできたサービス分類だからです。

2000年に介護保険サービスが始まった当初は、居宅介護サービス、施設サービス、居宅介護支援の3分類から始まっています。2006年に新しい分類として地域密着型介護サービスが追加されました。

そのためもあってか、最初からあった他の分類とは少し毛色が違っています。

地域ごとに高齢者が多かったり、少なかったり、事情が異なります。地域ごとの異なる事情に対応するためにできたのが地域密着型介護サービスです。

地域密着型介護サービスは、市町村に大きく権限が任されていて、市町村がどのくらいの施設を整備するのかを決めることができます。

そのため、高齢者が多い市町村はたくさんの施設を作って、介護ニーズに対応し、高齢者が少ない市町村は、新しい施設の開設を制限して、費用の無駄を削減できます。

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出典:厚生労働省 地域密着型サービスの創設

予防給付サービスとは

もう一度、厚生労働省が公開している介護保険サービスの種類を示した図に戻って、下段に目を向けてみましょう。

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出典:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

こちらは予防給付サービスと呼ばれています。

介護を受ける方は、介護の必要レベルに応じて、要支援1~2と要介護1~5の7段階に分けられます。

要支援1が最も介護の必要度が低く、要介護5が最も介護の必要度が高くなります。

そして、要支援1~2の方向けに提供しているサービスが予防給付サービスです。

(要介護1~5の方向けに提供しているサービスが介護給付サービスです。)

基本的には介護給付サービスと対になる形で、予防給付サービスがあります。

■介護給付と予防給付の対応関係
「居宅介護サービス」⇔「介護予防サービス」
「地域密着型介護サービス」⇔「地域密着型介護予防サービス」
「居宅介護支援」⇔「介護予防支援」

施設サービスについては、そもそも介護の必要度が低い方は利用しないため、予防給付サービスはありません。

なお、一部の予防給付サービス(訪問介護や通所介護の予防給付サービス)は2017年4月頃から「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」に移行しています。

総合事業についても書くとややこしくなってしまうため、今回は割愛します。詳しくはまた書きたいと思います。

最も市場規模が大きい介護保険サービスは何?

介護費用の内訳 平成30年
出典:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

4つの分類の中で最も市場規模が大きいサービスはどれでしょうか。

割合を見てみると、居宅介護サービスが43.7%で最も大きいことがわかります。次いで、施設サービス34.1%、地域密着型介護サービス17.5%です。居宅介護支援は4.7%です。

金額で見るとどうでしょうか。

介護費用の内訳平成30年 金額
出典:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

各サービス分類の市場規模は、居宅介護サービス4兆3,314億円、施設サービス3兆3,773億円、地域密着型介護サービス1兆7,366億円、居宅介護支援4,654億円です。

介護サービス4分類の市場規模

もう一段階細かい分類として、介護保険サービス別で見ると、最も市場規模が大きいのは、介護老人福祉施設(特養)で1兆8,473億円です。

次いで、介護老人保健施設(老健)が1兆3065億円で、施設サービスが市場規模の1位と2位になっています。

介護保険サービス別の市場規模

居宅介護サービスは、介護保険サービス一つ一つの市場規模は大きくないですが、たくさんの介護保険サービスが集まっていますので、合計すると最も市場規模になっています。

近年、成長中の介護保険サービスは何?

介護費用の内訳の推移
参考:介護分野をめぐる状況について(第178回介護給付費分科会)

介護保険サービスの市場規模(介護費用)の比率は年々、変わっています。

2007年(平成19年度)と2018年(平成30年度)を比べると以下の通りです。

■介護費用割合の変化(2007年→2018年)
居宅介護サービス   :約42%→約44%(2ポイントUP)
施設サービス     :約46%→約34%(12ポイントDOWN)
地域密着型介護サービス:約8%→約18%(10ポイントUP)
居宅介護支援     :約4%→約5%(1ポイントUP)
※四捨五入の関係で100%になっていません。

施設サービスの割合が減っている分、他の介護保険サービスが増えています。

中でも地域密着型介護サービスの伸びが大きいですね。

国の方針が「できるだけ自宅で、住み慣れた地域で、介護を受けられるようにしていこう」というものですので、国の方針に沿って変化していると言えます。

確認クイズに挑戦!

クイズ

今回はここまでです。最後に確認クイズに挑戦してみましょう!

回答を「送信」するとずっと上の方↑↑↑に「スコアを表示」というボタンが出ます。

いかがでしたでしょうか。

間違えてしまったところがあれば、ぜひもう一度読んでみてくださいね。

おわりに

今回は、「知っておきたい!介護事業のデータ(介護事業の種類を知ろう)」ということで介護保険サービス種類とそれにまつわるデータについて解説しました。

次回からは、各介護保険サービスごとにデータを紹介していきます。

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