近鉄グループ、8ホテル売却へ 米ファンドに600億円で
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私は2000年からの数年間、バブル後遺症に苦しむ国内の大企業が保有する国内外のホテル資産を売却する案件のアドバイザーをたくさんやっていました。
ただ、なぜか不動産に対する思い入れって強いのか、なかなか売却する踏ん切りのつかない企業が多かったんですよね。客観的に見たら売って手にしたキャッシュでリストラや本業の強化ができるのが明らかにもかかわらず。
なので、いまでも事業会社がキープしているホテルってたくさんあるんです。そこで今度こそ売却するだろうと期待に胸膨らませて日本に進出してきて(資金を不動産に振り向けて)いる筆頭がブラックストーン。
近鉄が売却したということは東急や西武も???となるわけですが、どうでしょうね。
アリナミンを売却した武田や日用品事業を切り離した資生堂など、しがらみのないプロ経営者が決断・実行した会社と違って、ホテル不動産の売却となると思い入れの強いOBからやいのやいのと言われて大変なんですよね。
日本企業はとにかく、こういう決断が苦手です。その意味で背に腹は代えられない事情とはいえ、近鉄は立派だと思います。ホテルのオペレーターとしての事業メリットに、不動産を自前で所有している点の貢献はそれほど大きくないし、むしろ今のような状況ならキャッシュ増やしてオペレーションの対応に回したほうがいいのは明らかなので、状況的にある程度安く手放さざるを得ないのは仕方ないとして、正しい動きですよね。
むしろ鉄道会社であることを活かすには、まとめて都心部の大規模ビルや再開発エリアを一体で所有する大規模集約型ではなく、沿線の都心から郊外、リゾートまでのグラデーションを活かした離散的な小規模な拠点のネットワーク(これも所有とは限らない)の構築と、その間のフィジカルとデジタルを融合させたネットワークとプラットフォームの構築とそのある規模を超えたマス化に当座の資金と人員を投入する方が、今後の10-20年を担う領域(特に不動産を手放すことで生じるフィジカル賃料の減少を補うバーチャル賃料の創出として)の早急な開拓の動きとしても重要なはず。
ホテルのオペレーションを手放さずに(今後ホスピタリティ機能を自前で持つということは、職・住にかかわる領域のプレイヤーとしてはこれまで以上に重要になる)、売れる不動産がまとまってあるのはものすごくラッキー。むしろこれはチャンスと考えてがっつり新しいプラットフォーム構築に投資して、次世代のロールモデル開拓してほしいところ。ターンアラウンドファンドにとっては、『今が拾いどき』
中長期的にはインバウンド市場は回復して、再び成長軌道に乗ります。
国内鉄道会社にとっては、今が耐えどき。
鉄道会社は、多角経営で、他事業も大抵リアル事業のため、売れる資産は売ってポートフォリオを組み換えつつ、耐えなくてはなりません。
コロナ禍、数ヶ月ならまだしも、数年となると、資産売却しなくてはいけない会社も、まだまだ出てくるかと思います。
(しかし、鉄道会社は売却できるアセットが豊富で、そういう意味では羨ましい)