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https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2021/astrazeneca-us-vaccine-trial-met-primary-endpoint.html#!
記事からは、32,449症例の臨床試験であること、少なくとも1回のワクチンを投与された21,583 症例に関して79%の有効率で、欧州等で話題になっている「血栓性の有害事象、特に重症硬膜静脈洞血栓症の発生」に対して、危険性はないとの成績が示されたと書かれています。
上記は、審査当局および他研究者の査読を経ない段階でのデータで、企業が伝えたいことを報道機関に渡す「記者発表」のレベルの情報で、つまりは「企業の意見」にすぎず、学術論文ほどの信頼性がないことは明らかでしたが、記事中には、「(有益性を暗示したうえで)米国で緊急使用の承認申請を数週間内に行う予定」と書かれ、意図的に世論を形成的するような行為のように見えてしまいます。
これに対し、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)の独立組織のデータ安全性モニタリング委員会(DSMB)は、「アストラゼネカが治験の古い情報を盛り込んだ可能性があり、有効性データの不完全な概観を提供したかもしれないとの懸念」と伝えるなど、米国で疑問が出ていました。
今回(わずか3日後)、臨床試験の全32,449症例を集計しての効果は76%とのことで、私の印象としては大きな差異はありませんでした。しかし、これについても「記者発表」のレベルですので、今後の米国での審査が待たれます。
記事には、他社のワクチンとの有効率の比較が出ていますが、無作為化して直接比較した臨床試験の結果でない限り、優劣を科学的に結論付けることはできないとされていますので、その点に関するコメントは控えます。
それにしても、下手な小細工のような印象を持たれたことについては、企業にとってマイナスでしょう。新型コロナワクチンのビジネスの性質は、「ごく一部の勝者総取り」の性格があり、勝者になれば数兆円以上の売り上げが見込まれ、最終段階(累積費用負担が最大の段階)で失敗すれば数千億円の損失を被ります(補助金を考慮せず)。
今回のようなゴタゴタが万が一続くと、ワクチン全般への信頼を損ないかねません。
本質的でない部分でワクチンの印象を損ねることのないようにお願いしたいです。
今回のアストラゼネカ社のワクチンと同じ種類のベクターワクチンとしては、既にジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンが米国で承認されています。ジョンソン・エンド・ジョンソン社のワクチンは有効率66%でしたが、1回接種のワクチンであり、FDAの諮問委員会VRBPACでは賛成22、反対0の投票結果でした。
ファイザー、モデルナのmRNAワクチンは、有効率90%以上、冷蔵保管不可、2回接種
ジョンソン・エンド・ジョンソン社のベクターワクチンは、有効率66%、冷蔵保管OK、1回接種
そして今回のアストラゼネカ社のベクターワクチンが、有効率76%、冷蔵保管OK、2回接種
今回もVRBPACで満場一致となるか、興味深いです。