丸紅などの企業連合、ミャンマーのダム事業中断 「人権尊重」が再開条件
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この件はフランス電力(EDF)が主導ですね。今週にはEUのミャンマーへの制裁が強化される見込みです。国軍に関係の深い企業は制裁の対象になるので、ミャンマーでの事業を続けられないEU企業もあるでしょう。
ミャンマーの国軍は、経済発展を進めるにあたり、多様な外資の導入を図ってきました。通信ならノルウェーのテレノールや日本のKDDI、石油と天然ガスなら中国石油天然気集団とフランスのトタル、というように、各国の企業を競合させてより有利な条件を引き出そうとしてきました。中国が1990年代に改革開放でやったのと同じことです。外国資本と地場資本のジョイント・ベンチャーにするところも同じです。
このダム、Shweli-3は、完成すればミャンマーの電力需要の3分の1程度を賄う見込みでした。ミャンマー側のパートナーであるAyeyar Hintharは、農業や建設などを手がけるミャンマー有数の企業グループで、国軍とも深い関係にあります。丸紅だけではなく、ホテル・オークラとの合弁のホテル事業や、東京建物との合弁のショッピング・コンプレックスなど、国軍の差配もあって多くの外資とマッチングされています。
ミャンマーに進出しているフランス企業で圧倒的に影響力が大きいのはトタルです。国営石油会社(MOGE)と合弁しているトタルが撤退すれば、ミャンマーの燃料も電力も大混乱を来たすでしょう。しかし、トタルと国軍の親密さはフランス電力とは比較にならないくらい長く深いもので、撤退するとは考えにくいです。今年2月上旬にクーデターが起きた当初は、人的被害は起こっていませんでしたが、ますます悪化する状況は残念でなりません。
ミャンマーの民主化を機会に、一気に「諸外国」のミャンマー進出競争が起こった中、日本としても政府主導で訪ミャンマー団の結成、その後、多数の企業が堰を切ったように、「フロンティア」のミャンマーに押しかけました。日本の商社が中核になった工業団地が建設されるなど、イケイケの投資ムードをこのクーデターが一気に破壊しました。
今回の「中断」は、投資中案件についてですが、日本からは、すでに相当な規模の投資が行われています。今後、国際世論に協調して事業から撤退するとなれば、すでに工場を稼働させている企業に大規模な損失が発生することは避けられません。クーデター後、多くの日本企業がはっきりとしたスタンスを示していないのはそのためです。一方、ミャンマーでは優良雇用先が失われ、ミャンマー経済も大打撃を受けます。優秀な一般国民が「外資系企業」の職を失い、軍部主導の経済に戻ります。
軍事政権は、海外資本が手を引くと、以前のように独占的な事業展開ができることになり、ましてや投資が行われた企業が撤退することになれば、そのインフラを接収することにより、漁夫の利を得ることすら可能かもわかりません。
海外資本の引き上げは、人権尊重を受け入れさせるプレッシャーを与えることができるのか? 結果的に、最も不利益を被るのはミャンマー国民、次に外国資本、軍事政権がこれにより不利益を被るのか不明というような印象をもっていますが、それでも、プレッシャーを与えなければならないという、やりきれない状況であることを感じます。ミャンマー国内では、軟禁されているオーストラリア人もいるような状況だ。おそらく、そのうちEUからも何らかの正式な経済制裁があるだろう。ただ、難しいところで、同じく人権問題で非難されているような国が、これを商機としないとは限らない。