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ボールは国会と有権者に投げられた。画期的な「違憲判決」に私たちはどう向き合うか

同性婚を認めない民法の規定は「憲法違反」だと明言した判決が、札幌地裁で言い渡された。国は、政治は、この判決とどう向き合うべきなのか。

法律上、同性同士の結婚を認めないことは「合理的根拠を欠く差別的取り扱い」に当たり、「法の下の平等」を保障する憲法14条に反しているーー。そう明言した判決が3月17日、札幌地裁(武部知子裁判長)で言い渡された。

原告の請求自体は棄却されたものの、司法による違憲判断を求めて、国を相手取った裁判を始めた原告たちにとっては、実質的な勝訴とも言える内容だ。

判決では、婚姻によって生じる法的効果を同性カップルに保障するためにどのような制度を採用するかは「国会に与えられた合理的な立法裁量に委ねられている」とされた。

国は、政治は、この判決とどう向き合うべきなのか。2005年にレズビアンであると公表し、同性婚に関して国会で質疑を重ねてきた尾辻かな子・衆議院議員(立憲民主党)に現在の心境を聞いた。



判決に「希望を感じた」

やっぱり私も当事者なので、万が一ひどい判決が出たとしても傷つかないように、期待半分で、心をぎゅっと締め付けるような心持ちで、判決の報せを待っていました。

司法に私たちの声は届かないんじゃないか。当事者ですらそんな諦めの入り混じった気持ちでいたなか、憲法の理念が司法によって示されたことに希望を感じています。憲法ってやっぱり活きているんだな、と。

今回の判決で、ボールは立法府に投げられました。政府はこれまでの国会答弁の中で、憲法は同性婚を禁止しているという禁止説と、容認はしているという容認説の手前で、「国として同性婚の導入は検討していない。同性婚は想定していない」としか言ってきませんでした。

しかし、現状の制度は平等ではない、憲法に違反していると司法が言ったわけですから、政治はこの判断としっかり向き合う必要があると思います。

原告や弁護団に闘い続けさせるのではなく…

原告と弁護団は、同性婚を可能とする法律をつくってほしいという思い一点で、今回の裁判を始められました。

違憲判断を引き出した今回の判決を受けても控訴し、法律ができて、同性婚が実現するまでは、これからも闘っていくと決意されたとのことです。

これ以上、原告や弁護団に闘い続けさせるのではなく、国会でこの問題をしっかりと議論し、とにかく早く法律をつくらねばならない。そう強く感じました。

野党としては2019年にすでに、立憲民主・共産・社民の3党で、同性同士の結婚を可能にする民法改正法案を衆議院に提出しています。しかしまだ与党の賛同が得られず、審議に入ることができていません。

本当に今国会で審議入りしたいですし、審議入りしないのであれば、今年の秋までには行われる衆議院選挙は同性婚を問う選挙として、民意で持って同性婚を実現することを目指していきたいと思います。

有権者一人ひとりにもボールが

やはり法律をつくらないと、原告が求めている同性婚の制度は実現しない。画期的と言える違憲判決が出たからといって、法律ができないと同性カップルは結婚できない。このことを多くの人に理解してほしいです。

国会にボールが投げられたということは、国会に送る議員を選ぶ有権者一人ひとりにもボールが投げられているということです。

国会議員や予定候補者に対して、「あなたの地元には同性婚を望む当事者がいます」という声をぜひ届けてほしい。「当事者は私の周りにはいない」ではない。東京とかだけにいるわけじゃないということを伝えてほしいと思います。

菅(義偉)総理には「違憲判決ですよ。もう変えましょう」と言いたいですね。

今回の判決で、憲法は同性婚を禁止していないことが示されましたから、改憲の必要はありません。政治的決断があれば変えられます。総理、決断してください、と。