スマートシティテクノロジーのアライアンス戦略

2021-03-16

スマートシティの議論がなされて久しいですが、都市がテクノロジーを実装することで進化していく姿を具体的に想像できるでしょうか。現状は、主に既存のデータの利活用にとどまっているため、テクノロジーが組み合わさることで、住民がどのように便利になっているかを実感しづらいかもしれません。技術を扱うエンジニアからすると、スマートシティに最新技術を取り入れることに誇りを覚えることから、自前の技術に固執するあまり、ユーザーのニーズに一致せずにせっかくのテクノロジーが使われないということが起こり得ます。一方で、ニーズを持つ都市設計者からすると、どのようなテクノロジーを当てはめると目的が達成できるかわからない面があり、技術検証に時間がかかるというジレンマがあります。そこで、技術のつながりを見せ、ソリューションベースで価値判断を迅速に行うという両者の歩み寄りが必要となります。

PwCが開発したIntelligent Business Analytics(IBA)は双方の視点を取りまとめ、テクノロジーのつながりをスマートシティ起点で解きほぐすアプローチを採用しているため、スマートシティの分析に有効です。IBAを活用することで、スマートシティという大きなテーマを扱う際にも膨大な量の情報の中から必要なものだけを抽出し、技術価値、事業価値の観点から今後の方向性を見ることが可能になります。

一例として、スマートシティの一要素である、次世代建築技術について紹介します。

まず、公的機関をはじめとする各種データベースから次世代建築技術に関連する特許・財務情報を収集し、評価対象の母集団を作成します。その母集団にAIを適用することで、類似技術のラベル付けを自動で行えるように設定します。その後、次世代建築技術のバリューチェーンの中からAIを用いて類似技術を抽出することで、構成要素である技術を自動的に特定することが可能になります。

図表1: 次世代建築技術のバリューチェーン

バリューチェーン分析には、コンサルティングノウハウが必要ですが、ここにAIを適用し、自動化することでレイヤーごとの分析が可能となりました。

例えば、ゼネコンに関連する施工レイヤーに着目して、技術のクラスタ分析を行なったところ、代表的なクラスタとして、遠隔技術、材料検査、火災検知、駆動装置が抽出されました。これにより、遠隔技術クラスタに属する企業群には欧米のITビッグプレイヤーが属し、材料検査と火災検知クラスタには、日本企業が多く属していることが分かりました。遠隔技術には、近年のトレンドとなっている5Gなどの技術タームが含まれており、市場性が高く評価されていました。技術の露出が多いため、市場からの評価が高くなっていることがうかがえます。火災検知クラスタは日本企業を中心に一定の技術の高まりは見られますが、市場への訴求力が乏しく、技術をPRして市場の認知を高めるとともに、サービスと組み合わせた価値向上も必要になるでしょう。

IBAは、各クラスタに属する企業の情報も一覧化でき、企業情報、事業価値とも相関付けしています。特許情報はオープンな情報ではあるものの、事業化に関する情報も含まれているため、事業価値向上のためにどの企業と提携するかを検討するアライアンス戦略にとって有用です。これらの情報を共創の経営戦略の武器として役立てない手はありません。

図表2: Intelligent Business Analytics(IBA)の表示例

執筆者

三治 信一朗

パートナー, PwCコンサルティング合同会社

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