アナフィラキシー 17人は全員女性 ワクチン接種で発症
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アナフィラキシーとは、「複数の臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過敏反応」と定義されます。例えば、注射の後にじんま疹が出ただけではアナフィラキシーに該当せず、息苦しくなるといった呼吸器症状、血圧が下がるといった循環器症状、嘔吐などの消化器症状が合わさってみられた場合にアナフィラキシーと呼びます(厳密にはさらに細かい基準があります)。
実際の現場では、じんま疹など「アナフィラキシーが疑われる」状況であれば、万一に備えてオーバーに対応する必要がありますが、振り返ってみて本当にアナフィラキシーに該当したのかどうかは、さらなる検証が必要だと思います。
米国では、CDCが去年の12月14日~23日にファイザーのワクチンを受けた189万人の情報を公開しています。重度のアレルギー反応が疑われた人は175人いましたが、そのうち定義に基づいて実際にアナフィラキシーと診断されたのは21人に留まりました。他国と比較を行うためには、基準を揃えて議論する必要があります。
なお、米国のこの21人のうち19人が女性であったことが報告されており、女性でアナフィラキシーが起こりやすい傾向が読み取れますが、その原因や詳細はわかっていません。
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7002e1.htm女性の方がアナフィラキシー頻度が高いのは他国のデータでもそうですが、女性だけ、や、17例、だけでなく、
日本ではまだ接種が始まったばかりなので、もちろんこれから男性のアナフィラキシーの報告もあり得ること、
アナフィラキシーの診断基準が適正かどうか(国際基準よりも閾値が低い可能性)、
そして、この事実をもってして、女性への接種が危険というわけではないこと、
なにより、この全例がしっかり対処されているということ、
を、伝えることが大事かと思います。仮に投与対象が全員女性だとすると、女性にしか副反応は出ないわけですから、人数だけで判断することは適切ではないと思います。また、アナフィラキシーの「数」ではなく、内容に注目されることが常です。医薬品による特に重篤な副作用とされるのは、アナフィラキシーの中でも、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)とライエル症候群(中毒性表皮壊死症)の2つで、ワクチンに限らず、市販の風邪薬などを含む多くの医薬品で、ごくごく稀にですが、それぞれの医薬品が有する一定確率で出現すると言われています。動画で紹介されている限りでは、これら重篤なアナフィラキシーは含まれていません。
免疫が関係する疾患としては、自己免疫疾患(リウマチや膠原病)については、女性が多いことは知られています。しかし、製薬企業で知り得た情報の範囲では、アナフィラキシーに関して明確な差異が生じた事例について、その記憶はありません。
人種はもちろん、温度管理の品質、接種方法、使用するシリンジ(注射器)、また製剤のロット(製造番号)でさえ、有効性、安全性に影響があることはありうる話です。ですから、人種差がある場合は確認のための臨床試験を実施することが本来求められていますし、臨床試験で確認していない用法で使われると何らかの原因による予想できない副作用が起きることが増えるため、製薬企業はこういった点ついて、非常に神経を使っています(規定外使用での副作用の誘発は、その医薬品の存続を脅かすため)。
追跡により、原因究明が今後につながります。憶測に頼らず、しっかりした調査が必要な事案であることは、関係者は全員わかっていますので、それに期待するしかありません。