2021/3/15

【Z世代】世界を変える「創造力」とは?

24歳以下の若い世代の創造性に着目し、コンペティションとワークショップを一体化させたアイデア共創型プログラム「U24 CO-CHALLENGE 2021」。昨年開催された第1回目に続き、今年もファイナリスト3組が選出された。
VUCAと呼ばれる不確実な時代のいま、前例や慣習にとらわれない若者たちのクリエイティビティが求められている。果たして、U24世代が重視する価値観とはどのようなものか。そしてそれは、いかに社会へと繋がっていくのか。
ここでは、メンターとしてファイナリストたちに寄り添ってきた3人に、メンタリング期間を通して感じたU24世代の可能性について話を聞いた。

デジタルネイティブ世代らしい着想

クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす──。ソニーが掲げるパーパスは、ファイナリスト3組のアイデアにも散見された。
勝ち残ったアイデアを順にひもといていこう。
まずは仮想世界や音楽を組み合わせた履歴書、「コド」。発案者である今須詠美さんと組むメンター、福田正俊氏は次のように語る。
「これだけ情報が溢れている中、そういえば履歴書というものが何十年も前からアップデートされていないというのは、面白い気づきでした。
履歴書は、社会のなかで今なお自分を表現する重要なツールでありながら、実はその機能を果たすのに十分なものではなくなっているわけです。
そこで、仮想世界や音楽を活用してアプリケーション型の履歴書を創出しようと考えた。まさにデジタルネイティブの世代らしい着想だと感じています」(福田氏)
本当の自分を表現するためには、表層的には見られない意識の部分、つまり心の中の「履歴」を表現する必要がある。「コド」のアイデアの根幹は、まさにここにある。
「アイデアを生んだ今須さんは、中学時代からパソコンやインターネットに慣れ親しんできたと聞きました。
 もし自分の中学時代にインターネットがあったら、どれほどの情報に到達できたのだろうと、胸が躍りますし、うらやましくもあります。履歴書のアップデートという発想に至ったのも、まさにそうした土壌があるからでしょうね」(福田氏)

いかにアイデアを「発散」させるか

2つ目のアイデアは、原留千依さんと久原彩花さんのユニットが提案する、病院内サウンドデバイス「Ear Psychology」だ。装着する患者の動きと精神状態に合わせて、ワイヤレスイヤホンからさまざまな音や声が聴こえる。メンターの宮崎雅さんは次のように語る。
「新しい技術やアイデアで医療にアプローチしようという時、“治療”ではなく“癒やし”に着目した点が、まず秀逸であると感じました。
患者さん側が受動的に音を受け取ることで、苦しみやストレスを和らげようというのは、発想として非常に斬新ですよね」(宮崎氏)
しかし、ひとくちに「音」と言っても、その種類や分野は無数にある。アイデアを育てるカギを握るのも、まさにこの点だった。
「メンタリング期間に重視したのは、まずこの優れたアイデアを発散させることでした。
『Ear Psychology』が創り出せる世界とはどのようなものか? そして具体的にどんな患者さんが使うのか? それらのイメージを徹底的に話し合った結果、単なる自然音やメロディだけでなく、アーティストや声優、タレントなどによるメッセージが聴こえてきてもいいのではないか、というところまでアイデアを膨らませることができました。
そのうえで、現実的なプラットフォームに落とし込むための検討を重ね、まずは“癒やし”に特化した音の提供に絞り込んでブラッシュアップを進めています」(宮崎氏)
参加者の発想力によってとことんアイデアを膨らませ、それをメンタリングによって現実路線にそって絞り込んでいく。

「コケシ」で歴史を学ぶ

3つ目は、「コケシ」である。ファイナリストの中でもひときわ異彩を放つこの「lekishi kokeshi」というアイデアは、歴史学習をより効果的に、そして実用的なものに転換させるもの。発案者の川野颯太さんの担当メンター、清水輝大さんは次のように手応えを語る。
「コケシを使って歴史を学ぶ。このアイデアを話すと誰もがニヤッとするのですが、まさにそうした反応にこのアイデアの良さが集約されている気がしています。
着想の原点は、“いかに受け取るか”が求められる勉強はつまらないという、川野さん自身の体験にあります。
ほんわかとした印象を持つコケシを歴史上の人物になぞらえ、自らがその人物の脚本家となることで、誰もが楽しく歴史を学べるようになる。それが、『lekishi kokeshi』の本質です」(清水氏)
歴史上の人物や、その時代の出来事をストーリー化して脚本を書く。楽しみながらアクティブラーニングできるというのが「lekishi kokeshi」の全容だ。
「コケシを用い、歴史をイジりながら自分ごと化できるのは、学習効果の面で非常に大きいでしょう。メンタリング期間に意識したことは、世代の異なる川野さんと、あくまで対等の立場に自分の視点を置くことでした。時には何時間にもわたり議論を重ね、ひとつのことに悩み抜く経験を提供できた。それにより、川野さん自身も自分の視点や着眼点に自信を持てるようになったようです」(清水氏)

U24世代に感じるポテンシャルとは

世代が異なれば価値観は変わる。だからこそ、この先の未来を見据えて、U24世代のクリエイティビティを存分に引き出したいというのがこのプログラムの主目的だ。そして異世代間のセッションは、メンターたちにも多くの発見を与えている。
「U24世代の強みは、僕らの世代とは触れてきたデバイスが全く異なること。そのため情報処理能力においては圧倒的な差を感じています。おまけに10代のうちからネットを用いて発信している彼らは、ごく自然に世界規模の視野を備えている気がします。彼らの進化のスピードが尋常じゃなく速いのも、納得せざるを得ません」(福田氏)
視野の広さは、アイデアの枷を解くことに通ずる。そして何より、多くの個性に触れる機会を得ることで、多様で寛容な視点を育むことができる。
「それゆえに、これまでの大人たちが作ってきたこの社会や仕組みに対して、敏感に違和感を覚えることができるのが、U24世代の特徴ではないでしょうか。『Ear Psychology』のアイデアにしても、これだけ科学が発展しているのに、病院の中の雰囲気がまるで変わらないことへの違和感が発想させたものですから」(宮崎氏)
だからこそ、世の中をアップデートさせるために、大人たちは若者世代の声をもっと聞かなければならない。
「思考の速さや関心の移り変わりやすさも、この世代の特徴のひとつ。そして、それゆえに自分が信じている物を手放しやすい側面があるのもおそらく事実で、その素直すぎる側面を、大人たちが上手にサポートする必要があるでしょう」(清水氏)
そうした3人の思いを、福田さんは「僕らは審査員ではなく、あくまでメンター。あくまで『彼らのポテンシャルを引き出す」立場で彼らと関われたことで、我々も若い世代が持つ可能性をより深く体感することができたと思います」と、総括する。
果たして、U24世代がこれから世の中をどう変えていくことになるのか。
まずは3/23(火)放送の『TheUPDATE』内で決定するグランプリにご注目いただきたい。
3月23日(火)『TheUPDATE』番組視聴はこちら
Sony Creators Gate U24 CO-CHALLENGE 2021 公式サイトはこちら