Society:「世界のユニクロ」はアジアで勝つ

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Deep Dive: New Consumer Society

あたらしい消費社会

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毎週木曜夕方の「Deep Dive」のテーマは、「あたらしい消費のかたち」。伝統的なブランドを圧倒し、いまや「世界で最も評価されるブランド」になったユニクロ。その躍進の理由はいったい何なのでしょうか? 英語版はこちら(参考)。

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Image: REUTERS/FLORENCE LO

NIKKEI Asia』は、日本のアパレル企業であるファーストリテイリングが「ザラ(Zara)」を展開するスペインのインディテックス(Inditex)を抜き、時価総額で世界のアパレル企業のトップに立ったことを報じました。

これは、ファーストリテイリングの核となるブランド「ユニクロ」が好調なことによるもので、同社の時価総額は1,056億ドル(約11.1兆円)に。インディテックスは982億ドル(約10.3兆円)で、H&Mやナイキ、あるいはLVMHに対して大きな差をつけています。

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ユニクロ以外のブランドが、これまで積み上げてきた長い歴史(程度の差はあるにせよ)に依存しているのに対して、ファーストリテイリングにあるのは、明るい未来だと言えそうです。

STRONG PRESENCE

中国での強い存在感

COVID-19の影響で競合他社の評価額が大きく変動するなか、ファーストリテイリングは昨年4月から株価が着実に上昇。ユニクロは同社の売上高の大部分を占めており、投資家はユニクロの方向性に期待しているようです。また、中国とインドといったアジアにおける成長も、同社の先行きに対する期待感を高める一因となっています。

ユニクロは米国での展開には苦戦しているものの、アジア、とくに中国ではそうではありません。2018年、ユニクロの海外売上高は自国市場の売上高を初めて上回りました。2020年8月までに、ユニクロは香港や台湾を含む中国全土に866店舗を展開しており、日本の813店舗よりも多い数になっています。

中華圏は現在、ユニクロ全体の売上高の約23%を占めています。同時に、東南アジアを含むほかのアジア市場でも存在感を強めています。さらに、ユニクロはインドにも進出しています

こうしたユニクロのポジショニングは、パンデミックの影響を受けている競合他社と比べると、はるかに優位なものだといえます。すでに「世界最大のファッション市場」となった中国は欧州や英国よりも早く回復しており、ユニクロにとってよい兆しを感じさせます。対照的に、ザラは2019年の売上高の60%以上を欧州から得ています。

MOST VALUABLE PLAYER

アジア中心に考える

ユニクロはまた、長期的な利益を見据えています。同社は2019年の年次報告書で中国、東南アジア、インドを「世界の経済成長の中心地」と表現。アジアの中間所得層の人口はすでに多く、今後もさらに増えるだろうと付け加えていいます。

昨年10月、同社の創業者でCEOの柳井正はアナリストに対して、世界は「欧米中心の時代からアジア中心の時代への転換を目の当たりにしている」と発言。アジアの経済がより早く回復し続けた場合にのみ、パンデミックはこの変化を加速させることになります。

ユニクロの強みは、アジアという有力な「足場」だけではありません。世界中の労働者がパンデミックで外出することができなくなったので、ユニクロのようなカジュアルで機能的な服が求められています。

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Image: REUTERS/Ritsuko Ando/File Photo

また、昨年11月に発売されたジル・サンダー(Jil Sander)とのデザイナーとのコラボレーション「+J」(約9年ぶり)も、爆発的な人気となりました。今後数カ月は、パーティードレスよりもこうした「普段着」の方が売上に大きく貢献することでしょう。

もちろん、こういったコラボレーション商品を購入しているのは日本や中国などの国ですし、ユニクロの価値を高め続けている投資家にとっても、最も重要なことなのかもしれません。


COLUMN: What to watch for

LVMH帝国の誕生?

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Image: ベルナール・アルノーLVMH会長兼CEO。REUTERS/Christian Hartmann/File Photo

1774年に創業したドイツのフットウェアブランド「ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)」が2月26日、株式の過半を売却することを発表。ラグジュアリーブランドを展開する最大手、フランスのLVMHモエヘネシー・ルイヴィトン(以下LVMH)が出資する投資会社Lキャタルトンとフィナンシエール・アガシュ(Financière Agache)に売却することで合意したと報じられました。なお、買収額は非公表になっています。▼LVMHは2016年、ドイツのスーツケースブランド「リモワ(Rimowa)」を買収し、同グループとして初めてドイツブランドを迎えました。そして、大きな話題となったのは、両社が互いに提訴し合うなど難航していた「ティファニー(Tiffany & Co.)」の買収で、今年1月に完了を発表しています。最近では、LVMHの子会社であるモエ ヘネシー(Moet Hennessy)は先日、ラッーパーのジェイ・Zが所有するシャンパーニュメゾン「アルマン・ド・ブリニャック(Armand de Brignac)」の株式50%を取得したばかりです(一方、リアーナのブランド「Fenty」は2年足らずで休止)。▼次々と買収を続けるLVMHのターゲットは、いわゆる「ラグジュアリー」だけに限ったものでなく、今回発表されているビルケンシュトックのようにライフスタイル寄りのものも増えてきています。とはいえ、リラックスした服装のアスレジャーブームはパンデミックの前からすでに起こっていたことで、パンデミックを機にそのトレンドが定着したと見ることもできそうです。LVMHの勢いは止まらず、次はどのブランドが買収の対象になるのでしょうか。

(翻訳・編集:福津くるみ)


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