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最近の触覚分野は「空間的な情報よりも時間的な情報の方が,リアリティに効いている」という視点に基づいた研究や製品が多くなっています.
僕の感覚的な話ですが,2000年頃は指先上の空間分布ををピンアレイなどを利用して再現するという研究が多くされていました.つまり,映像で言えばその解像度を上げるという方向です.それが2010年代くらいになるにつれ,空間的な解像度を上げるよりも,時間的な分解能を上げたほうがリアリティが高いのでは?という方向にシフトしていきました.つまりリフレッシュレートを上げる方向です.というのも,振動をよく知覚するパチニ小体という触覚受容器は,空間的な分解能がほとんど無いためです.
それまで使われていた偏心モータやリニアアクチュエータは共振を利用しているため,基本的にある特定の周波数で強く振動する振動子でした.時間方向の表現力を上げるという最近の方式では,その振動子の性能を上げて,いろんな周波数の振動がきちんと出るようするという改良が必要になります.
iPhoneやMacBookに使われているTaptic EngineやNitendo SwitchのHD振動,そしてPS5のバイブレータなどは,基本的にこの方向です.触っている手のひらや指先の上で振動の空間分布は形成されず,すべて同じ振動を感じている一方,振動パターンについては精密に再現されるので,ボタンをクリックした感じなんかが振動で再現できるようになっています.

さて,ここで紹介されている方式は,これに対して空間と時間の両方の高解像度化を実現しようとしているというように読みました.
ただし,途中にある振動パターンの識別実験の混同行列の結果を見ると,パターンAとCを見分けられないという結果になっています.つまり,上下に動く場合と左右に動く場合とで見分けられないという結果です.これだけ見ると,やはりパチニ小体が空間的な分解能が低いために,動きの方向の見分けがつかない.パターンBが見分けられるのは,単純に刺激が完全にオフになる瞬間があるかないかで判断しているから,なのかなという気がします.

とはいえ,こうして,時空間共に高い分解能の刺激を提示できるものがそもそもほとんどありませんでしたので,これを基礎ツールとして利用した新しい触知覚特性の解明などもこれから進むのではないかと思います.楽しみな技術です.
一般的にハプティクスと呼ばれますが、振動を伝える素子の新技術に関する記事として拝見しました。

PS5だけでなくスマートフォンでも徐々に利用されていますが、触覚によるフィードバックはUXを向上するために非常に重要だと思います。従来は視覚(画面表示)または聴覚(効果音表示)によるインタラクションが中心だったと思いますが、視覚は専有性が高いため他の情報提示を阻害してしまうこと・聴覚は騒音環境だと聞き取れずきちんとフィードバックが伝わらないケースがあることから、それだけでは不十分な可能性があるかと思います。

それに対し、触覚はデバイスと接触している限りしっかりとフィードバックを伝えることができますのでIT機器の操作感を高めるために非常にわかりやすいと思いますので、UXの質がより一層求められるようになってきている現状ではこれまで以上に重要になっているのではないかと考えています。

もちろん、記事で公開されているような新しい技術開発が進み、省電力化・小型化が進んだことでウェアラブル端末を始めとするデバイスへの搭載が加速化したことも後押ししているかと思います。

XRの分野では「没入感の向上」が重要です。触覚フィードバックがあることで、例えばゲームの中でボタンを押したりレバーを引いたりするときに、触覚があると現実世界と同じような感覚を得られますので、XRが拡大していく局面でもより注目される技術なんではないかなと思いました。

個人的な興味分野である「音」においても活用できる技術だと思います。音も結局何かしらの媒体の振動です。通常のマイクは空気伝導の振動を検知するセンサーですが、最近名前をよく耳にする骨伝導も骨の振動を検知するセンサーです。記事中では振動を伝えることが中心になっていましたが、マイク素子としての活用についても注目したいと思いました。
人々にリアリティを感じさせる「振動」