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わが国での議論の最前線は、
環境大臣の諮問機関である中央環境審議会地球環境部会カーボンプライシングの活用に関する小委員会
https://www.env.go.jp/council/06earth/yoshi06-19.html
と、経済産業省に設置された、世界全体でのカーボンニュートラル実現のための経済的手法等のあり方に関する研究会
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/carbon_neutral_jitsugen/
である。
特に、記事でも触れられたEUが検討中の炭素国境調整措置で、日本企業が不利にならないようにするにはどうすればよいかという警戒感が、図らずもわが国での議論の起爆剤にもなっている。
実現に向けた議論が進むなら、炭素税をどのように課税するか(温対税を拡大するか、既存のエネルギー諸税を縮小・廃止して新たなCO2排出量比例の税を課すか、など)にも及ぶだろう。続編を待望。
もちろん、悪影響が全くないとは言い切れません。
ただ、そのリスクを緩和するための施策も多く考えられます。
例えば、業務の性質上、資源やエネルギーの利用が多い企業には炭素税の減免措置をしたり。排出量取引の限度量を引き上げるといった柔軟な対応をしたり。
記事中の研究内容のように、炭素税を新たに課す代わりに法人税を減税したり。
「法人だから」「消費したから」という理由だけで課される法人税や消費税よりも、温室効果ガス排出という社会全体にデメリットのある行動に税を課した方が、単なる「税収」以外の便益も得られます。
フランスでは炭素税の一種である燃料税の導入を公表した途端、黄色いベスト運動が全国で勃発、一部暴徒化しました。
特に、フランスではタイミングが悪かった。富裕層に対する連帯税は廃止にしておいて、庶民には負担を強いるんですから。
「マクロン、お前は庶民の気持ちがわかってない!先にお前ら金持ちが応分の負担をしろ!!」と怒るのもムリからぬところ。
炭素税の導入もSDGsの文脈で整理するとスッキリしますが、そうであるなら我々ひとりひとりが「地球市民」としてCO2の排出に責任を持つことが大切。逆に言えば、政府が国民に理解と公正な負担を求める努力が必要なんだと思います。
Amazonは企業としてさらに踏み込み、2040年にネットゼロカーボンをめざしています。しかもグローバルに展開している。日本企業も見習うべきですね。
記事にある通り、日本の炭素税である「地球温暖化対策税」は税率が低いことが指摘されてきました。輸送用燃料に対してはエネルギー税によって一定の課税がなされていますが、産業用燃料に対しては、エネルギー税を加味しても低水準です。価格インセンティブを発揮できるようにするには、炭素税額の上方修正が必須になりそうです。
ちなみにIMFは、日本での効果的な炭素価格は約4,600円/tCO2だと提示したことがあります(IMF, 2014, How Much Carbon Pricing is in Countries' Own Interests?)。
なお記事の中で、「法人税の減税も同時に行えば、税制を変えなかった場合と比べ、2030年時点でGDPが約1%上昇する」と示されたとありますが、これは「二重の配当」効果について言及しているものと思われます。
(委員会の議論をフォローしているわけではないので、違ったらごめんなさい)
二重の配当とは、環境税(炭素税)の税収を、労働市場や資本市場でのインセンティブを損なう税(法人税、所得税など)の減免に活用すれば、環境と経済の両方にプラスの効果が得られる、というものです。
日本の場合は、炭素税の税収は、主に省エネ対策や再エネ普及に充てられてきましたが、法人税や所得税の減免により二重の配当効果を狙うほかにも、社会保障費の軽減に充てる、少子高齢化対策に充てる等々、色々なオプションがあり得ると思います。
日本の課題解決にうまくつながる制度設計を期待したいですね。
(最も単純な例だと、A国とB国が国境を接していてA国が炭素税を高くしたら、工場はB国に流出し、そこでの温暖化ガスの排出はやはりA国にも影響する⇒「両国で対応を揃えないとアンフェア」、「B国の輸入品から税金を取る」などの議論に。)
類似の問題は金融規制でもありましたが、今後の国際的な議論におけるスタンダードの奪い合いや先手を打った情報発信などに、日本も敏感になっておくことが重要と感じます。