2021/3/8

思考力を高める秘訣は「考えすぎない」。“地頭”が良くなる4つの習慣

編集ライター (NewsPicks Brand Design 特約エディター)
 会議で意見を求められたのに、気の利いたことが言えない。斬新な企画を出したいのに、平凡なアイデアしか浮かばない。「もっと地頭が良ければ…」と考えたことがある人も、少なくないのでは。

しかし、「地頭力は伸ばせる」と話す人物がいる。ベストセラー『地頭力を鍛える』の著者である、細谷功氏だ。

どうしたら頭の回転を速くすることができるのか。面白いアイデアを次々に生み出せる方法はあるのか。細谷氏に聞いた。
INDEX
  • 知識の賞味期限は短くなった
  • 思考停止を回避する4つのポイント
  • “その場”で考える力を身につける

知識の賞味期限は短くなった

──細谷さんは、ベストセラー『地頭力を鍛える』をお持ちですが、「地頭力」とは何だとお考えでしょうか?
細谷 ビジネスにおいて知的能力が高い人は3種類に分類できると考えています。
 何でも知っている「物知りな人」、人の気持ちを察してコミュニケーションが取れる「対人慣性力が高い人」、問題を解決するのが得意な「考える力が高い人」の3種類です。
 私が地頭力と定義しているのは、3つ目の「考える力」のこと。これは生まれつき備わった能力だけではなく、トレーニングを積めば誰でも伸ばすことはできます。
 今ビジネスの現場で求められている能力こそが、この考える力なのです。
──今の時代に、考える力が求められる背景は何でしょうか?
細谷 世の中が変わらないときは、知識をたくさん蓄積している人が強い。
 ですが、テクノロジーが発達した今、世の中は急速に変化しています。そんな時代で、今までの知識や成功体験をため込んでいるだけでは、太刀打ちできません。
 言い換えれば、知識の賞味期限がどんどん短くなっている。昨日使えた知識が、今日はもう通用しないということが、いくらでも起こりうるのです。
 コロナの前後で、世界の常識が一変してしまったのが、わかりやすい例ですよね。
 だからこそ、期限の短い知識を使って、いかに自分の頭で新しい解決策を編み出せるか。それが、重要になっているのです。

思考停止を回避する4つのポイント

──考えることの重要性はわかっていても、実践の場ではなかなかうまくいきません。会議中に意見を求められても出てこない、面白い企画を出そうとしてもアイデアが浮かばない――。そんな状況は、何がボトルネックになっているのでしょうか?
細谷 矛盾するようですが、考えすぎているのではないでしょうか?
──考えるべき場面なのに「考えすぎ」?
細谷 もちろん、「思考を止めろ」と言っているわけではありません。
 周りをあっと言わせる渾身のアイデアを出そうと思うほど、良い案は浮かばないもの。時間だけがどんどん経過し、焦ってさらに何も出てこない。
 そのサイクルに陥ってしまう要因は「問題解決には正解が存在する」と考えているからです。そもそも思考は、未来に向けたアクションなので、正解も不正解もありません
 ですから、「このアイデアは本当に正しいのか?」と、自分で良し悪しを判断している時間が、すでにもったいないのです。
 それよりも、とにかく多くのアイデアを出すことが重要です。
 イマイチだなと感じても、一旦気にせず書き出してみる。極論、悩み抜いて出した3案より、とにかく出してみた100案の方が、筋の良いアイデアが隠れている可能性は高いと思います。
──そんなにたくさんアイデアが浮かばない、またはその中からどれが良いアイデアか選べない、という場合は、どうしたらいいでしょうか?
 小さな「仮説検証」を繰り返すのが良いと思います。
 仮説検証といっても、科学の実験のように大それたものではなくて、シンプルに自分のアイデアを人にぶつけてみる、ということです。
 たとえば、「こんなサービスを考えたんだけど、どんなシーンで使いたい?」などを周りの人に聞いて、反応を見るのです。
 そうすることで、アイデアの幅が広がりますし、何が人の心に響くのか、感覚が掴めてくると思います。
 仮説検証のポイントは「周到な準備をしない」ことです。
 「準備は完璧にすべし」とする風潮は根強いですが、変化の激しい今の時代は、むしろ準備は簡単に済ませて、検証しながら進めるくらいがちょうどいいと思っています。
 周到な準備をしている間にも、市場の状況や顧客の関心はどんどん移り変わっていますから。
 それから、人にぶつける段階では、アイデアの質は20点くらいでいい。合格点を高く設定しすぎると、いつまでもアイデアを自分の中にため込んで、アウトプットが遅くなってしまいます。
 合格点を下げてたくさんのアイデアを出し、人にぶつけ、仮説検証を繰り返すことで、アイデアに磨きをかけていくのです。
──思考を止めずに考え続けるために、細谷さんはどんな姿勢を心がけていますか?
細谷 「あまのじゃく」であることですね。あえて他の人の発言を疑ってかかったり、流行りに乗らなかったりする。そうすることで、自分の頭で考える癖がつきます。
 ですから、思考力を高めたいなら、多少なりとも性格が悪くなる必要があるのではないかと(笑)。
 相手の意見にいちいち疑問を投げかける人より、何でも同調する人の方が、一般的に好かれる傾向にありますから。

“その場”で考える力を身につける

思考力を高める方法を知っても、すぐにビジネスの現場に応用するのは難しい。どうしたら、実践に使える思考力を育めるのか。 

オンラインの参加型ビジネスプログラム「BBTナイトGYM」の高松康平氏も交え、読み解いていく。
──思考力を鍛える方法を理解しても、実際に思考の癖をつけ、仕事の成果につなげるまでには、時間がかかりそうです。
細谷 それはその通りで、思考するためのフレームワークを1時間の研修で習っても、職場で実践する機会がなければ、やはり身につきません。
 コンサルタントがフレームワークを使いこなせるのは、試す回数が圧倒的に多いから。繰り返しトレーニングすることが、欠かせないのです。
高松 私自身も、思考力に関する本やセミナーはたくさん存在するのに、継続して練習できる場がないことを長年課題に感じていました。
 それを解決したいと立ち上げたのが、思考力を鍛えるトレーニングの場「BBTナイトGYM」です。
 BBTナイトGYMは、オンラインの参加型ビジネスプログラムです。どんなビジネスパーソンにとっても必要なスキルを身につけられるよう、さまざまなセッションを開催しています。
 特徴は、単に知識を詰め込むのではなく、思考するプロセス自体を大事にしている点。
 「問題解決力」「アイデア発想力」など、主体的に考えるためのセッションを充実させています。
細谷 なるほど。受講生に主体的に考えてもらうため、どのような工夫をしているのですか?
高松 まずセッションは、双方向で実施しています。一方的に講師が教えるのではなく、多くのセッションで受講生が自分で考えて発表するための時間を設けています。
 そうすることで、講師からフィードバックをもらったり、他の受講者からの意見を気軽に聞いたりできます。結果的に、自分のアイデアに磨きをかけることにつながるのです。
細谷 考えるという行為は、人によってつまずくポイントが全く違います。「1600年に関ヶ原の戦いがあった」と暗記するのとは、頭の使い方が異なるのです。
 だからこそ、アウトプットに対してフィードバックをもらえ、自分がつまずくポイントを把握できるのは、非常に有効ですね。
高松 ありがとうございます。そのために大事にしているのが「気軽に発言できる」雰囲気作りです。
 実際のセッションの様子を見て、「ビジネス講座なのに、こんなにハイテンションでやっているの?」と驚かれることも多いです(笑)。
 さらに、受講生に「その場で考えてもらう」ことも、意識しているポイントです。
 BBTナイトGYMには、予習も課題もありません。セッションの60分間の中で、目いっぱい頭を使って考えてもらうのです。
 たとえば財務分析を学ぶセッションでは、その場で提示される企業の決算短信を、講師が受講生と一緒に読み解きます。
 さらに「思考ライブ」というユニークなセッションもあり、企画のプロがその場でアイデアを生み出す過程を、生配信しています。
細谷 面白いですね。「その場で考える」というのは、思考力を鍛えるにはすごく効果的。大量に予習をしてしまうと逆に、瞬発的に判断するトレーニングにはなりませんから。
 特に財務分析のように型が決まっているものは、どの項目に注目すべきかを、瞬発的に読み解くことが肝になります。
 その力はまさに「その場で考える」トレーニングの積み重ねで身につくと思います。
高松 財務分析に苦手意識を持つ方は多いですが、実は食わず嫌いという人がほとんど。でも一度勉強してみれば、気になる企業の財務状況が自分でわかるなど、意外と楽しいんです。
 BBTナイトGYMで学んでみて、「仕事が楽しくなった」「世界が広がった」と言ってもらえるのは、本当にうれしいですね。
 ぜひBBTナイトGYMで考える力を身につけ、変化の時代を“楽しく”生き抜いていただきたいと思います。