日産・西川氏「中身確認せず署名」 ゴーン被告報酬文書

有料記事主役なきゴーン法廷

根津弥
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 日産自動車の元会長カルロス・ゴーン被告(66)が巨額の役員報酬を開示しなかったとされる事件の公判で、西川(さいかわ)広人・前社長が24日、証人として東京地裁に出廷し、開示を免れた「未払い報酬」について「当時は全く認識していなかった」と証言した。未払い報酬を退任後に払う方法を記したと検察側が主張する契約書に関しては「協力を求められ、中身を確認せずサインした」と述べた。

 西川氏が出廷したのは、金融商品取引法違反罪の共犯に問われた元代表取締役グレッグ・ケリー被告(64)の公判。2010~17年度の元会長の報酬のうち約91億円を退任後に払う未払い報酬とし、各年度の有価証券報告書に記載しなかったとして起訴された。西川氏は11、13、15年、退任した元会長に顧問料などを支払う契約書に署名したとされ、検察側はこの契約書を未払い報酬の支払い方法を記した文書と位置づけている。

 西川氏は検察側の尋問に対し、11年にケリー元役員から「ゴーンCEOの報酬がグローバル水準と比べて低く、他社に引き抜かれないためには退職後の処遇を手厚くするべきだ」と言われたと証言した。「ゴーンCEOが日産を去ることは脅威だったので協力した」とし、元会長の部屋で契約書に署名したという。

 署名はケリー元役員を「サポートする」という意味だったとし、「中身は確認せず、ケリーを信用してサインした」などと述べた。

 弁護側は、代表取締役にもかかわらず契約内容を確認せずに署名した点を追及した。西川氏は「ケリーの考え方に賛同していた。彼はこの分野のプロで、私は受け身の姿勢だった」と釈明。未払い報酬の存在は知らず、契約書がその補塡(ほてん)目的という認識もなかったと説明した。契約書の有効性については「ゴーンCEOの退職が現実の問題となったら、専門部署の確認を受け、取締役会に諮ることになる。そのようなことは起きなかった」と語った。

 検察は違法性の認識が不十分だったとして西川氏を不起訴処分にしている。

 西川氏は経営者としての元会長の当時の評価を聞かれると、「日産の業績を回復させたことはもちろん、日産を真の国際企業にする変革をしていただいた。世界でも超一流の経営者だと思っていた」と話した。(根津弥)

「イエスマン」から決別

 西川広人・前社長は2005年にゴーン元会長(当時は社長)の下で副社長となり、16年に元会長との共同最高経営責任者(CEO)に就任。周囲からは元会長の忠実な「イエスマン」と受け止められ、17年に社長の座を引き継いだ。

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