ゲノム解析をより高速かつ安価に、日本発半導体ベンチャーの挑戦
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今回の記事で紹介されているチップは,特に検体遺伝子配列のどこに塩基多型が存在するかを調べるゲノムマッピングの高速化を主眼に置いているようです (記事中の表にfastq to vcfとあるので)。この解析を簡便に行えるようになると,遺伝子異常が原因で発症する病気の原因変異を明らかにすることでより有効な治療法を提供したり,遺伝子発現パターンの変化などから未病を診断することができるかもしれません。
ゲノム解読手法は近年最も発達した技術の一つであり,一昔前は1000ドルゲノムとしてヒト1人あたり10万円でゲノム解読を行えるのが目標にされていました。そして現在では100ドルゲノムが実現可能なところまで来ており,あと数年したら数ドルゲノムまで行くのではないかと予想されています。そうすると得られたデータの解析プラットフォームを整えていくことが非常に重要になってきます。ゲノム解読技術の進歩と解析環境の整備を進めることで,定期健康診断でゲノムや遺伝子発現を調べ,予防医療につなげるような時代が来るかもですね。
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ゲノム解析とは遺伝子を構成するアミノ酸の配列を分析することです。新コロナワクチンではmRNAワクチン技術が知られるようになりましたが、同ワクチンの研究にもウイルスの遺伝子配列の解析が必要です。以前より、遺伝性の疾病の研究など、幅広い場面で遺伝子解析は使われています。
生物の種類によってもアミノ酸配列の長さが異なりますが、長いものでは数百万に及ぶことがあり、これを一字違わず解析するためには、かつては長年の時間を要していました。そこで、まず長い配列を短いランダムな断片に分解しアミノ酸配列を決定、多数の断片のオーバーラップ部分についてコンピュータ上で重複部分を特定し、最終的に全体を決定するいう方法(ショットガン・シークエンシング法)が開発されました。この分析方法はコンピューターの性能に依存するといわれており、高性能かつ安価なCPU(中央演算装置)の提供が貢献します。
記事には、病院との関連が書かれていますが、新コロナウイルスで知られることになったPCR法「検査試薬」の研究開発や「変異株」による感染の確定には、ウイルス遺伝子の特定が必要です。遺伝子の特定ができる設備は、現在は一般の病院にはなく、実施するためには特定の研究機関に検体を送るなど、大変な時間と労力がかかっていましたが、これが普及し「遺伝子配列」の検査が多数の病院で可能になると、診断の迅速化につながります。人間の全ゲノムを明らかにするための国際プロジェクトであるヒトゲノム計画は2003年に終了しましたが、その間に遺伝子解析装置が開発され、その技術を活用することで腸内細菌叢のメタゲノム解析が始まり、今日までに病気との関連など多くの発見が報告されています。
本技術はがんゲノム診断のために開発されているとのことですが、このような技術がまた腸内細菌叢解析に活用される未来はすぐにやってくるでしょう。人間のゲノムに加えて、ヒト第二のゲノムとも称される腸内細菌叢ゲノムも合わせて調べることが、次世代の医療・ヘルスケアの基盤になると考えています。いわばゲノム解析の民主化を目指すスタートアップ、頑張って欲しい。この分野の最高峰はGoogleのDeepMind https://newspicks.com/news/5429846 128個のTPUを使用しているがこちらは専用集積回路ASICチップ一つで200万円とのこと。Googleも将来的にはおそらくクラウドSaaS外販していくことが予想されるがその場合でもハイエンドとそれ以外で棲み分けもあり得るでしょう