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LINEミニアプリをつくってわかったこと

D&Sでは、新しい取組にいろいろと挑戦しています。

もし自分達が小売企業だったら、そして自社に優秀なエンジニアがたくさんいたらこんなことができるよね、みたいな部分を考えて、私たちが代わりにどんどん実装しています。たくさんの小売企業さまとお話しをしながら、どんどん便利な仕組みを作っていこう。そのためにはこういう新しいものに自分たちが率先してやっていかなくては、と思っています。

そんな中でとても力をいれて作っているプロダクトが「スーパーマーケット専用のLINEミニアプリ」です。

阪急オアシスさまではLINEミニアプリのリリースから3ヶ月がたちました。結論からいうと、スーパーマーケットとLINEミニアプリの相性はとてもよいと思います。

お客様の年代や利用の用途、いろんな面である程度効果が出そうな確信はもともとあったものの、ここまでいい結果がでるとは思っていなかったくらいに、いい結果がでています。

わかったこと① LINEミニアプリのユーザー数はたぶんネイティブアプリより多くなる

LINEミニアプリをつくってわかったこと

まだまだはじまったばかりのサービスなのでなんとも言えませんが、「ユーザー数」はたぶんネイティブアプリよりも多くなると思います。アプリのユーザー数が増えずに困っている企業さまは、1つの解決策になるのでは、と思っています。

実際に導入した企業さまでは、会員獲得のスピードがほんとにすごい。自社アプリのユーザー増加スピードの数倍になっています。

なぜネイティブアプリよりもユーザー数が多いのか。この要因は、「LINEの簡単さ」というところにあるのだと思います。

アプリのダウンロードには実際問題、それなりの高いハードルがあります。アプリ開発をしているひとや、IT系の仕事をしている人は「なにそれハードルなんてありましたっけ?」という程度の問題ですが、実際問題、うちの両親はスマホを持っていますがそんなに自分でアプリをダウンロードしません。どうやるの?って聞かれます。でも、スーパーマーケットのお買物になにも問題はない。実際、こういうお客さまが一定の人数いらっしゃる。これが、現場の温度感だと思います。とくに東京でIT関係の仕事をしていると、そもそもこの出発点が異なります。だからこそ、私たちは、もっと現場に足を運んで、実際の売場がどうなっているのかをより正しく認識する必要があると考えています。

なので、私たちがするべきことは、「普段の行動にあまり組み込まれていないこと」を、「どうやって行動に組み込んで頂くか」。または、「意識せずに利用できるか」。これがとても重要だとおもっています。

この「意識せずに利用できるテクノロジー」という視点はとても重要です。

「難しいことをいわず、だれでも使える」ことが、テクノロジーの普及の壁を越えられる必要な要素だと思っています。個人的にはその代表の1つに「Suica」があると考えています。

誰もが使える。
すぐ使い方がわかる。
いままでの切符をつかっていた人が、すぐに使える。タッチするだけ。

これは本当にすごい発明だと思います。

こういう、誰もが使える「意識しないテクノロジー」がとても大切だと思うのです。ぼくらでも作っているスーパーマーケット専用のLINEミニアプリはここまでではないにせよ、少しでもこれに近づけるように中身を作っていきたいなと思っています。スーパーマーケットにおけるデジタル利用の格差を解決する1つの方法になるんじゃないかな、と。

わかったこと② シニアの会員比率がすごく高い

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LINEミニアプリのユーザー層は、スーパーマーケットにおいては、シニア比率がすごく高く、店舗の客層に比較的近いことがわかりました。これは、LINEミニアプリそのもののユーザー層の要因なのではなくて、そもそものスーパーマーケットへの来店されている顧客層がもともと年配の方が多い、ということに由来します。

一方でこれまでのネイティブアプリは、ということでは、純粋に60代以上のユーザーにはあまり多く使われていなかった。純粋にその層をLINEミニアプリで獲得できている、ということにつきます。どれくらいかといえば、なんと半分以上が50代以上のお客様にご利用いただいています。

シニアのユーザー(どこからがシニアなのか?という定義についてはだいぶ難しいものがありますが)を捕まえられるオウンドメディアのコミュニケーションツールは、実は多くはありません。実際、ネイティブアプリのユーザーで最も多い層は40-60代が中心で、70代以降はどうしても利用人数が少ない。

しかしながらスーパーマーケットのお客様の年代はとても幅広く、60-80代の利用者もとても多いため、「ネイティブアプリだけ」では主要顧客層にご利用頂けてなかったともいえるのです。

この年代の顧客層にしっかりと使えてもらっているということは、スーパーマーケットにとっての、お客様との接客のツールとして、とても有益なチャネルであることがわかります。

わかったこと③ Webサービスとの相性が良い

ネイティブアプリのクローズドさより、すごくweb寄り。アプリダウンロードがいらなくて、基本URLベースでコントロールできるのがとても良い。

スーパーマーケットでのデジタルでのコミュニケーションは基本WEBベースなので、既存のインフラを活用しながら、LINEミニアプリへの誘導ができるんですよね。WEBサイトでのリンクや、バナー、外部サイトからの誘導枠など、お客様向けの情報配信については、自社で構築しているものの、外部サービスを利用しているものも含めて、だいたいWEBで成り立っています。そのため、その環境と連動できるので非常に使い勝手がいいのがよいです。

かつ、システム連携を上手に組み込むことで「ポイントカード」との連携も柔軟にできるので、オンラインとオフラインのデータを統合した効果測定なども非常にやりやすい。非常にカジュアルにつかえるにも関わらず、一気にマーケティングのレベルを高めることができ、とても魅力的なツールです。

わかったこと④ 使う側(ユーザーにとって)の簡単度合いがすごい

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とにかく簡単。これは前述②の理由そのものでもあるのですが、許可するボタンを押すだけなので、インストールという意識がない。これは本当に簡単で、あまりアプリを使い慣れてないユーザーにとっては簡単で抵抗がない。

この部分が1番強いと思います。

あと、やっぱりLINEはそもそものインフラとしてのユーザー数が多いので、「使える準備がどのユーザーも整っている」という意味ではもう別格ですよね。

ゲーム機とかはまさにそうですけど、どれだけ面白いソフトでもゲーム機本体という、使うための前提条件が全員整っている(所有している)わけではありません。あ、気になる、というタイミングでユーザー側に使える環境が整っていないのは致命的ですが、これはその前提をわりとクリアしている。そこは本当に便利だと思います。

もちろんまだまだガラケーのお客様も多く、「全員なのか」というとそうではないのですが、「スマホ所有」と「スマホで普段からアプリを使いこなす」の壁にはとても大きな壁がある。ここを理解することは重要だと思います。

そういう意味でこのハードルを越えてるLINEの力は本当にすごいなと。孫とLINEしたいから、アプリ使わない人でもLINEはだいたい入ってる。この「アプリをそんなに使わないシニアにもLINEはだいたい入ってる」ということが、アプリ利用の前提条件としてとても強力だと思います。

わかったこと⑤ LINEの公式アカウントとの連携が破壊力大

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公式アカウントに「リッチメニュー」を置いておくだけでアクセス数が飛躍的に高まる。これも、言ってしまえば簡単、のひとつにはなるのですが、公式アカウントからすぐアクセスできるのは本当に便利です。

実は「公式アカウント単体」だと、スーパーマーケットにとってできることはそんなに多くはありません。乱暴に言ってしまえば、画像を送るか、テキストを送るかの2択です。そして一度に送ることができるテキストの分量も限られているし、1通3円の配信料もかかります。

ただ、LINEミニアプリのような形で「公式アカウントの外」でやるから自由度があがるということは、まだあまり知られていません。(LINEミニアプリそのものがまだはじまったばかりですしね・・・)

LINEミニアプリは、作り方に一定のルールはありますが、ネイティブアプリにかなり近い形で使うこともできるので、ユーザーにとってもほぼアプリ感覚で使えるでしょう。もはやアプリがいらないのでは、というお話がでてくるのはここが強いのだと思います。

LINEミニアプリは、LINE公式アカウントと「連携しない」こともできます。ただ、ほとんどのケースだと、公式アカウントをつくる部分のみはお金がかからないので、連携しておいたほうが良いと思います。アクセスしやすい流入経路を増やすことは、そのまま利用者の利便性に跳ね返ってくるので。

ちなみに私個人としては、ネイティブアプリもLINEミニアプリも両方やった方がいい、という意見です。やってみてわかりましたが「利用者がけっこう違う」ので、最終的には両方必要だと考えています。そもそも、比較対象をLINEミニアプリ VS ネイティブアプリにしてるのがよくないですよね。既存の販促のあり方との比較だと思うのです。だいぶ極端な言い方ですが、LINEミニアプリが必要なのか、ネイティブアプリが必要なのか、という議論については、ホームページが必要なのかアプリが必要なのかどっちなんだ、と言ってるように聞こえます。両方あったほうがいいに決まっています。(しかも費用対効果については間違いなく、あいます)そのため、お客さまが使いたいものにあわせて場所を用意しておくことの方が、むしろ重要だと考えています。

ただ、「ネイティブアプリ」は「LINEミニアプリ」単体と比較すると開発コスト、運用コストが高めなので、自社アプリでうまくいっていない企業さまには、「まずはLINEミニアプリ」でやってみることをおすすめします。そこでテストマーケティングをしながら、ちゃんとアプリ開発をするというシナリオがロスがなくて、かつリスクが小さくてよいと思います。

わかったこと⑥ 無料のサービス通知が魅力

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LINEミニアプリは、トランザクションの結果通知的な機能に限られますが「サービスメッセージ」に無料で通知することができます。

公式アカウントでは1通あたりの配信費用がとてもかかります。チラシそのものに比べると1通単価は安いですが、表現できる面積が違ったりそもそもの役割が異なるので、(チラシを作ってる前提で紙代+折込代との比較が合理的です。印刷代そのものは浮くので。)

1通3円(配信通数によって単価下がりはしますが)のコストはそこそこかかることは理解しておいた方がいいと思います。

週2回のチラシ配信だとしてそのタイミングでプッシュを打ちたければ、3円×会員が5万人になれば、15万円。それを月10回やれば150万円の追加費用がかかります。単価が少しずつ減ってくので、厳密にはもう少しコストは減りますが。会員数が増えれば増えるほどそのコストは大きくなる。

そのため、いかにプッシュ通知に頼らずに、ユーザーにアクセスしてもらえるか、がとても重要な取組みになります。機能的にも中身のコンテンツにも、そこが求められます。

だからこそ、それを補完する機能として、「サービスメッセージ」コーナーに無料で配信できる機能は魅力的です。

わかったこと⑦ LINEのAPIは小売と相性が良い

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ここはこれからの私たちの強化する機能のひとつですが、小売企業さまのマーケティングと、LINEのAPIは非常に相性が良いです。

お客様ごとにお買物行動が当然ながら異なるので、本来であればお客様の買物にあわせた提案がしたいけれど、それをする場所がなかった。ポイントカードは「買うときには提示してくれる」のですが、チラシのように「家にいるときなどにお知らせする」ことはできないんですよね。お知らせする場所がない。

でも公式アカウントとつながることで、お買物履歴と、配信がつながる。お買物履歴にあわせた配信ができる、というのはとても魅力的です。間違いなく売上にも繋がります。

一方で完璧なものは存在しなくって、LINEミニアプリにも欠点があります。

わかったこと⑧ プッシュ通知は公式アカウントが中心なので追加でお金がかかる

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LINEミニアプリそのものは、LINE社からお金が請求されることはありません。あくまでも「LINEアプリ内ブラウザ」として動くもので、LINEとは異なるサービス提供社によるサービスを利用することが中心になります。

ただし、販促系のPUSH通知をする術がありません。「LINEミニアプリそのもの」は、LINEでPUSH通知をする機能そのものがないのです。もちろんシステム的な連携をすることで、公式アカウント経由でメッセージ配信などは可能です。

つまり結局のところ、PUSH通知は原則公式アカウントで行うことになり、公式アカウントでのメッセージ配信(+PUSH通知)はお金がかかります。そのため、公式アカウントそのものに運用を工夫しないと、ひたすらプッシュ通知をすることになり、とてもお金がかかってしまいます。

前述のとおり、お金がかかるとはいえチラシよりは安いのですが、「面積あたり費用」みたいな不思議な計算をすると、むしろチラシの方がものすごく安い(笑)チラシ画像をそのまま貼ったらいいじゃん(そうすれば面積あたり費用はかわらない)とかは考え方としてはあるのですけど、スマホでは読みにくいよね、とかはすごく気持ちがわかります。

とはいえ、前述の通り「公式アカウントだけ」でできるコミュニケーションにも限界はあるので、どうせプッシュ通知で公式アカウントでお知らせするならば、その通知のコストをさらにリターンに変換するための工夫としてLINEミニアプリを作るという考え方はとても有効かなと思っています。そこはコストの考え方をどう捉えるか次第ではないでしょうか。

わかったこと⑨ 当然ながら、なんでもできるわけでもない。

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先程のプッシュ通知の件もそうですが、
・LINEミニアプリの言語や実装方法
・LINE社が定める守らないといけないガイドライン・禁止事項
はあるので、なんでも自由にできるわけでもありません。ネイティブアプリで実現できる「表現力」「UIの自由度」や、「プッシュ通知まわりの制約」がコストとやりたいことのギャップが大きく、すこし辛い部分かな、とは思います。とはいえ、わりとだいたいWEBで実現できることはある程度できそうなので、必要最低限の部分は気にせずにできると思います。

また、「プッシュ通知」だけに頼ってしまうと本来の目指すコミュニケーションが偏ってしまうのでそこだけに頼るのは良くないのですが、やはりPUSH通知はとてもコミュニケーションのなかで強力なアテンションになっているのは事実です。このあたりは、ユーザーにとっての利便性や満足度をもっと高めていきたいと考えています。

AppleやGoogleのアプリプラットフォームに定められたルール同様に、プラットフォーム側のルールに従わないといけないのは、LINEミニアプリに限った話ではなくて、どこでも同じです。ネイティブアプリの審査もそれなりに厳しいですし。ただし、その分、プラットフォームにのっかることで、十分な恩恵が受けられることもまた事実だと思います。要は、プラットフォームの特性をきちんと理解した上で、どのように使い倒すかなのではないかな、と考えています。

わかったこと⑩ 売上が上がることはスタートから2ヶ月で証明された。

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もっとも小売企業様にとって重要なのは、効果が出たのか(売上が上がったのか)、ということだと思います。

結論から言えば、スタートから2ヶ月ですでに大きく元が取れました。小売企業にとって、システムコストよりも粗利のほうが大きい状態にすでに到達しています。

通常、インターネットの会員系のサービスはフロー型ではなくストック型と言われますが、ストックして会員が一定数以上集まることで効果がどんどん高くなります。そしてそれは継続的な効果を発揮し続けるため、長期的にはとても高い費用対効果を出してくれます。

だからこそみんながアプリをやってるということにほかならないのですが、そのストックの損益分岐点が2ヶ月でクリアしたというのはとても早い(ひとまずの)成功といえます。

売上があがったということは、すなわちお客様の購買行動が変化した(増加した)ということに他ならず、お客様から支持をされたからこそ好意的に受け止められ、その結果としての購買行動の変化に至った、ということになります。

すでに導入していただいたお客様のケースでは、プロジェクト開始から約2ヶ月でリリース、2ヶ月で損益分岐点を超えるという爆速具合が、顧客層とLINEミニアプリの相性の良さという点でマッチしている証明ができたと思います。なお、この爆速の裏側には、店頭や本部で頑張ってくださってるみんなを含めて、小売企業さまと私たち開発チームの合同チーム全員の成果であるということは付け加えておきます。(当たり前ですが、システム入れただけでユーザーが勝手に増えるわけではないので。)

まだまだはじまったばかりの取組なので、一緒に開発してみたいぜ!という方はぜひお声がけください。創業メンバー、大募集中です。


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