見出し画像

コロナ 医療崩壊間近? 大阪府医療労働の実態を探る やっている「ふり」だけの大阪府 過酷な現場支える医療労働者の奮闘と怒り

 大阪府は、不足している医療労働者を確保するため、昨年12月に全国知事会に看護師・保健師の派遣要請を行った。だが大阪府の医療現場は冷ややかだ。
 大阪府職員労働組合は、「病院を独立行政法人化し、看護師の給料が高すぎると看護師を減らし続けたのは維新政治であり、その結果が災害対応できなくなった危機を招いた」と知事や市長を批判。
 逼迫する大阪府の医療現場と看護師らに、過酷な労働実態や府の政策への意見を聞いた。 (編集部)

 大阪市内の病院での勤務経験を持つ医療労働者からは、「市内だけでなく、どこも大変なのに、応援が出せるのか? 本当に必要な呼吸器・感染症の看護師や医師などは、簡単に出られない。経験のない精神科や外来補助の看護師が対応できるのか」という声が聞かれた。
 府の資料では、各機関からの応援は1カ月程度で、本質的な看護師の増加にはなってはおらず、あくまで臨時的な措置でしかない。市内の複数の医療団体が、第1波から緊急要望として看護師の増員を求めているが、「全く聞いてもらえていない」という。年明けに政府は看護学校生や看護教諭などに応援要請を行う方針を打ち出したが、現場は「即戦力にならないのではないか」と疑問視している。
 大阪市立総合医療センターでは、コロナ対応のため一般病棟を一部閉鎖した。大阪赤十字病院は、がん緩和ケア病棟を閉鎖。十三市民病院では、コロナ指定病院化によって医師10人、看護師22人が退職した。
 看護経験者は、「日勤夜勤の連続は当たり前、体調を崩しても休めなかった。府が率先して看護師を減らしておいて、いまさら何を言うのか? まず医療労働者に謝罪して、府が予算を立てて人員確保するのが筋。何度も増員を要請しているのに聞いてもらえていない」と怒りを露わにした。
 これに加え、感染症対策物資もコロナ受け入れを公表している病院にしか配られない。「公表していないから感染対策が必要ないというのはおかしい」という声も挙がっている。病院や関連施設では「中の状況を言わないように」という箝口令があるらしく、電話取材に対しても、「きちんと対策している。看護師の労働時間も守っている」と判を押したように答える。
 しかし、厚生労働省の看護師の労働調査(2013年)では、①妊娠しても夜勤が免除されない、②慢性疲労が半数以上、③辞めたいと思っている人は75%だった。
 また、療養ホテルで働く看護師の家族は、130人の療養者を4人で看護しており、日勤夜勤の連続は当たり前で、家には寝に帰るだけだという。PCR検査を受けられないため、なるべく患者に接触しないよう気を付けているという。救急搬送の職員は防護服の支給がなく、知らぬ間に感染し、拡散させている可能性も高い。劣悪な労働環境だ。
 「コロナ生活補償を求める大阪行動」は昨年末、府に対しコロナ禍での看護師の労働実態調査について問うたが、「実施していない」という。医療労働者を増やす考えはなく、臨時増員でやり過ごすという方針が見える。
 また、現場労働者の証言と医療機関の発言の食い違いも問題だ。現場労働者からは、「やりがい搾取」という言葉が頻繁に飛び出した。新人看護師が「休みたい」と婦長に言うと、「自分で交渉しなさい」と言われ、仕事がきつい、または労働条件の不満を言うと、「奉仕精神がない」と叱責されるそうだ。このため新規職員の退職が絶えない。
 府がこの間、医療労働者に対し行ったことは、感謝のイルミネーションと直接接触者へのクオカード配布である。
 病床確保のためには1床1000万円の手当で病院に手を挙げさせてきたが、医療労働者確保には予算が回されない。
 さらにいえば、看護学校への補助金を減らして間接的に閉校に追い込み、看護師の給与が高いと非難して、公務員適正化条例の名の元に減らしてきたのは維新行政だ。
 1月4日、大阪府の吉村洋文知事は、「大阪はコロナを抑え込んでいる」と発言したが、抑え込んでいるのはPCR検査の対象者だ。それでも感染者は増え続けている。逼迫する医療現場を必死で支えているのは、医療労働者の頑張りとナイチンゲール精神だ。何もしていない大阪府が何かやっているように見せる印象操作は、もう通じない。
 同会見後も大阪府の感染者は増え続け、1日500人を上回った。14日には累計死者数が東京を抜いて全国最多になった。吉村・松井体制のしわ寄せを医療労働者に負わせているのが現実だ。こんな状態なら他県ではとっくに看護師がストライキを行っているだろう。今もツイッター内では抗議の声が飛び交っている。

【お願い】人民新聞は広告に頼らず新聞を運営しています。ですから、みなさまからのサポートが欠かせません。よりよい紙面づくりのために、100円からご協力お願いします。