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スーチー氏のみならずNLD幹部など160人以上、さらには豪州の経済学者も拘束された。欧米から見れば人権問題として深刻な状況。他方で、東南アジア諸国から見れば、民政移管された10年間のミャンマーが、むしろ例外だったのかもしれない。
NHKがインタビューした隣国タイの将軍は、ミン・アウン・フライン司令官をよく知っており、「とても静かで穏やかな人だった。軍政から民政への移行期だったためタイを訪れた際には、必ず本屋に行き、現代の世界情勢について知識を得ようとしていた」と述べている。さらに、アウン・フライン司令官が総選挙のやり直しを行うと主張していることについて「それぞれの国にあった形の民主主義にするという考え方を自分の国で今後生かすのではないか」との見解を示している。
バイデン政権はじめ欧米、そして国連安保理は、地域機構であるASEANに活躍してほしいと考えている。しかしASEANの慎重な立場は変わらないだろう。
日本はミャンマー情勢に「重大な懸念」を有している。軍政とも対話できるので、経済協力をレバレッジにしつつ、重要な役割を果たしえる。茂木外相は2月5日(金)の記者会見で、英国などからミャンマー情勢の見方を聞かれていると明らかにしつつも、軍政との対話のチャンネルが動いているかについてはセンシティブであると言及を避けられた。
円借款を引き揚げるか中止しつつ、無償の医療支援や技術協力は続けるとか、政策の引き出しが多いのも、日本の強み。
NHK、2月8日付 ミャンマー クーデターから1週間
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210208/k10012856181000.html
茂木外務大臣会見記録
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/kaiken/kaiken6_000071.html#topic2
日本の対応を決めるうえでも、もちろん民主主義の原則も大事です。そのうえで、ミャンマーの多くの人たちのためになるという原則も忘れず、解決策を探ってほしいと思います。
ASEANもこの状況を歓迎しているようには見えません。先日、インドネシアとマレーシアの首脳がASEANに特別外相会議を開くよう求めると発表しました。ミャンマーの不安定な状況が続けば、地域経済全体にさらなる悪影響をもたらしかねません。
ミャンマー投資が多いシンガポールも、制裁に同調させられるのは避けたいのが本音だと思います。かつてのミャンマー制裁では、結果として中国が地域への影響力を増すことになったこともあるためです。そのあたりの事情は知り抜いているアジア通のカート・キャンベル氏がどんな対応をしてくるのか、注目したいと思います。
「外務省幹部は『スー・チー氏の解放や民主化プロセスの回復を実現するため、何が有効かを冷静に見極める必要がある』と語っている。」
コロナ禍により、ミャンマーの貧困率は16%から60%へと急激に悪化しました。
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2020-11/ifpr-csw112320.php
そこにクーデターによる社会経済の混乱が追い討ちをかけています。もし日本を含む諸外国の支援が縮小されれば、さらなる影響は避けられません。
また、過去の欧米各国の経済制裁はあまり大きな効果を産まずに、多くのミャンマー人を貧困に追いやった、という見方も存在します。
軍政への圧力と、経済的困難に苦しむミャンマー人への支援の両立という、本当に難しい判断に直面していると言えます。