酸素の電子を使ってもエネルギー損失のない電極材料を発見 東京大学
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注目のコメント
なるほど。充放電時の熱損失にO-Oダイマー形成による酸化還元のヒステリシスをつくるメカニズムがあったんですね。軌道の結合からのアプローチでこのような改善が図れるのは、まさにサイエンスですね。
原論文によると、
https://www.nature.com/articles/s41467-020-20643-w
帯磁率逆数(χ^-1)の温度依存性の高温度域(>200K)をキュリー-ワイスフィッティングして得られたワイス温度が-192 Kとなり、つまり反強磁性的(磁化が逆方向を向く相関)なのは、単純には同磁性イオン間に酸素イオンがあるMn平面の構成の超交換相互作用(酸素イオン等を挟んだ磁性イオン間の相互作用)における、グッドイナフ-金森則(1959)からすると強磁性になるはずなので矛盾しているが、その要因はMn-O-Mnのなす角度が90度からのズレに起因し(90度だと強磁性になる)、さらにLin2MnO3で報告されているようにd軌道間の直接の交換相互作用による反強磁性結合も寄与している可能性があるとのこと。
また、配位子正孔がMn-Oのσ-π複合軌道結合によって安定化されている。
このあたりの原子配位や電子軌道の特性による安定化機構が、O-Oダイマー形成抑制に寄与しているっぽいですね。
この機構には直接Naは関与していないので、カチオンをLiにしてもなにかしら仕掛けをすればできそうな気がします。
これは物理で設計指針は立つかも知れないですが、実現方法は化学の力(経験則)の発揮どころですね。合成後に構造を変えずに組成を変えるトポタクティカルケミストリーが生きるかも知れません。この辺りは元々私の専門の一つでした。
磁性が関わっている可能性があるとなると、Mn-NMRや中性子散乱やったらなにかわかるかも?
追記
リチウム電池で吉野・ウィッテンガムと2019年ノーベル化学賞をとったグッドイナフの、電池ではなく磁性領域で最も有名な仕事が、再び電極材料開発の重要なポイントになるのだとしたら、グッドイナフの偉大さはどれほどのものなのかと思いますね。このNa2Mn3O7は、凄いメカニズム(金属酸化物の酸素が結合するエネルギーの熱損失を発生させない)を基にした正極材なんですが、完全にスルーされてますね。。
ナトリウムイオン電池ということだからか。
追記
さすが大場さん、論文読まれた上でのコメント流石です。グッドイナフ=金森則を破ったということだけでも凄そうな。
超格子レベルでの新現象の発見は、材料科学のブレイクスルーに今後益々必要になって来そうですね。第一原理計算もやってますし、近似だけしていると認識していたのを少し改めます。
つまり遂に材料科学でも量子論がMustという流れになって来たことに、ワクワクして来ました。シュレーディンガー方程式理解していない材料屋は多いので。Was Goodenough not good enough after all?
スイマセン (だめ? 論文subtitleとして)
スゴイ発見だと思います。ab initio計算が、待てる時間内で出来るようになったお陰もあるのでしょうねぇ