阪大と国循が臨床研究中止へ 肺がん治療関連の論文不正、新たに2本発表
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「阪大と国循が治験中止」。今回「何が問題なのか?論文不正との関連は?」について、元記事を補いました。医薬品の研究開発では、(1)薬品候補の基礎的研究(薬理試験)-前臨床(動物実験)→(2)臨床第1相→(3)臨床第2相→(4)臨床第3相-(5)新医薬品承認審査 の各段階があり、順を追って行われますが、「→」の各時期に、検討委員会による「次のステップに行けるか否か」が審査されます。
審査は科学的根拠に基づく必要があるため、「査読を受け公刊された学術論文」であればより高い評価を受けるとされます。かねての報道により、今回の「不正」は、臨床試験に移行する前の段階(上記(1))での不正の発覚ですが、その内の一部については、その後の臨床試験実施「承認」のための重要な根拠となっており、かつ、他に代替できるだけの科学的根拠がなかったことから、「現在実施中の臨床試験を中止にする」という判断です。なお、実施中の臨床試験自体で、中止しなければならないレベルの問題が起こったことは、報道内容からは確認できません。
問題が発覚した臨床試験プロセスで続けても、おそらく(5)が通りませんので、「これ以上の経済的損害が膨らむことを避けたいと考えているのでは?」という視点もあります。(臨床試験に係わられた患者様の治験薬消滅に何らかのデメリットがないことを祈ります)。
今回は基礎研究の段階での査読公刊論文での「グラフの書き換え」の不正発覚ですが、すでに臨床試験開始から5年経っており、その中止による損害額はもはや莫大で「基礎研究グループ」が責任を負える範囲ではありません。研究データの改ざんは、剽窃・盗用と並び、「研究者の犯罪」で、あってはならないことです。該当の医師がなぜそのような不正をしてしまったのかも含めて調査を進めてほしいですね。一般企業における不正の場合も、過剰なノルマ設定など何かしら原因となる企業文化や背景があることが多いと思います。病院でも研究費獲得のために周囲からの過剰なプレッシャーや論文数のノルマなどなかったかなど面での原因探索を望みます。