この連載について
日本経済は低成長と停滞が続き、会社員の給料平均は伸び悩んでいる。さらに、新型コロナウイルス感染拡大による需要の停滞が企業経営を圧迫。業種や職種、やってきた経験や能力による給料格差は開く一方だ。そこでNewsPicksでは、人材会社とコラボし、厳しい状況下でも給料を上げた人の職務経歴書を解析。どんな経験をした人が、高給取りなのかその中身をつまびらかにする。また、世の価値観が経済性から人間性へと転換する中、給料以外を自身の働きがいとする「新しいゲームの始まり」についても提案してゆく。
データから浮かび上がってきたのは、日本の職場におけるキャリアの道筋が、大きく2つのタイプに分類されるということ。
1)下のグレードで積んだ経験が、上のグレードでもそのまま生かせる「積み上げ型」。
2)グレードが上がると仕事の種類がまったく変わってしまうため、下のグレードの経験だけでは通用しない(上のグレードでも通用するような経験を自発的に取りに行かなくてはならない)「勝ち取り型」。
この違いを認識しておかないと、キャリアの途上で“詰む”ことに……。
データでは、職種によって、どちらのタイプに分類されるかが明確に分かれるという結果になりました。ぜひ、自分の職種に応じた「生存戦略」を探っていただきたいと思います。
1.スタッフレベル→プロジェクトのデリバリーの品質が高いこと(ロジカルシンキング、スライドライティング、エクセル等)
2.マネージャー→1に加えて、スタッフの教育、プロジェクトマネジメント、クライアントリレーション
3.シニアマネージャー→1、2に加えてセールス
4.ディレクター以上→1、2、3に加えて、ファーム全体への貢献、新しいビジネスモデルの構築
みたいなイメージです。
上位タイトルにプロモーションするには、それ以下のタイトルの要件は充足している事が条件ですが、明らかにシニアマネージャー位から求められるcapabilityは単なるプロジェクトワーク以外に多様化していきますので、この記事で言うところの「勝ち取り型」?になるのでしょうか。
面白い分析でしたが、「上位グレード」にランクされる為の、という事なので、単純にマネジメント能力が求められてくるから、こういうキーワードになるのでは?という気もします。
また、今まではこういう「上位グレードに求められるマネジメントスタイル」は画一的であったと思いますが、今後は個々人の強みを踏まえた抜擢やアサインメントが進んでいくと思いますので、
・自分の強み(差別化要素)をどう尖らせるのか
・それが活きる場所はどこか
・どうアピールして、どう貢献するのか
みたいな方に頭を使った方が良い気がしています。
昇進して給与が上がっていく人たちは、最後のツメまでしっかりとやり遂げ、チャンスを自分のものにして掴んでいます。
もう一つ共通しているのは、上司や部下同僚とまわりの期待値をしっかり把握して、それを上回ることを意識して仕事をしていることです。期待値をいかにマネージするかは、確実に昇進・給与アップの近道です。
しかし、職種ごとに給与を上げる因子を見ると、似たところもあればかなりの違いもあり、図版に見入ってしまいます。個人的には、個人の技術がもっと評価されるべきと思う一方で、マネジメントができる人材の少なさ、希少性を思うと、やむなしとも感じ、色々な思いが去来します。是非お読みください。
最後に、今後のキャリア市場において求められる人材象がどう変化するのか、が気になります。これはあくまでも過去のデータに基づくものだから。個人的にはあまりキーワードに振り回されず、「今なにをすることが、会社、組織、チーム、そして自分にとって最適なのか」を考え続けることが重要な気がします。
私は今年29歳になったのですが、この型を把握した上で30代・40代を過ごせるのは、こうしたデータに手軽にアクセスできる今ならではの、キャリアの築き方だと思います。
また、これからの学生たちは、こうしたデータをもとに、どの型が向いていそうかを考えて、新卒の時に、職種を選んだりもできるのではないでしょうか。
クリエイティブなフリーランスの方でも、自身の時給や報酬をうまくあげていっている方は、スキルや業界などのタグをかけ算して希少性を高めたり、逆提案などをしてお客からの信頼性を高めたりしていますね。
ジョブ型よりメンバーシップ型が主流の日本においては、まだ個別の職種の専門性についての理解がマネジメントにおいて深くないため、各職種での技術や技能をあらわすようなキーワードはあまり多く出ていないという印象。評価の手法やアプローチとあわせて、ここも徐々に変わっていくのではないでしょうか
技術職では「巻き込み」「兼務」「事業戦略」が上位に上がっています。
これは、技術という「手段」を活かすも殺すも、「目的」をいかに設定できるか、そして、その目的の設定に能動的に関われるかにかかっていることを示しているように思います。この手段と目的との対立の中に解を見出すかは、常に我々を悩ませることであります。例えば、目の前の顧客のニーズだけに対応し、長期の変化を無視するならば、既に見えているニーズへの対応は可能であるが、見えないニーズに顧客に先行して答える力はなくなります。しかし、一方で、長期ばかりに注力して、目の前のニーズを無視するならば、現実との接点のない独りよがりな技術開発に陥ってしまう危険性があります。
技術とその成果はこのように、「長期と短期」「ニーズとシーズ」「応用と基礎」「個人と集団」「ソリューションと要素」というような、どちらに素朴に倒してもうまくいかない矛盾の中で、いかに二項対立を避けて、突破していくかが最も高度な「本当の技術」で、それができるかが技術者、研究者の真の力量であり、腕の見せ所です。それには技術だけを知っていてもうまくいきません。その目的の多様な面を捉えることやそのための巻き込みやネットワークが必要です。