米「イランの合意順守が先決」 核交渉、弾道ミサイル開発も対象
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イランは今月初め、既に核合意の上限であった3.67%から5%に引き上げていたウラン濃縮率を更に20%まで引き上げることを通告しました。
核兵器として使うためのU235は90%以上の濃縮が必要ですが、ウランの濃縮率が上がるほど、実は必要な濃縮エネルギーは2次関数的に減少してきます。
濃縮率を3.67%から5%に引きあげるには、100SWU(濃縮役務単位)弱必要ですが、20%を90%にあげるには10SWU余りで済み、これは事実上イランが核兵器保有の意思を示唆したものとアメリカでは受け止められています。
この辺りは中東特有の駆け引きやチキンゲームのようなところがままあり、決して額面通り受け取れないのですが、初っ端からイランに挑発的姿勢を見せられたバイデン政権としては、弱腰を見せるわけにはいきません。
交渉したいのなら、まずイランが誠意を見せろ、というのはある意味当然かと思います。
しかしイランは軍事的にも政治的にも侮り難い相手であり、中東独特の複雑怪奇な外交もあって、今のところ明確な中東政策を見せていないバイデン政権はしばらく翻弄される可能性が高いと思われます。2015年のイラン核合意は、イランと米英中ロ独仏の6カ国の間で結ばれたもので、イランが核兵器の原料になる高濃縮のウランやプルトニウムを製造しないこと、濃縮に使われる遠心分離機を減らすことと引き換えにイランへの経済制裁を緩める内容です。「イランが合意を守ればアメリカは核合意に復帰する」とはバイデン大統領自身も明言しています。
トランプ前政権はイランがシリアやイラクなど地域各国に影響力を広げているのを警戒し、中東にイラン包囲網を築くためにイスラエルとUAE、バーレーン、スーダンなど各国との国交正常化を仕掛けました。核合意に復帰することは、アメリカと共にイラン包囲網を作ってきた中東各国からみれば「話が違う」となりかねません。アメリカが「イランが合意を守るなら復帰する」の条件を付けるのは、イスラエル始め中東各国から合意復帰への理解を取り付ける必要があるためでもあります。イラン問題はバイデン政権の最初の試練。イランの核濃縮が続く中、制裁を利かせながら、イランの暴発を抑えるために交渉をしていくというのが基本パターン。ロウハニ退陣までの限られた時間、難しい局面が続きます。