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・米国SaaS企業の売上高総利益率は総じて70%近辺で一定水準だが、国内SaaS企業の売上高総利益率は50%-90%とばらつきがある。
・米国SaaS企業のPSR(EV/売上高)は、売上高成長率に相関する
・国内SaaS企業のPSR(EV/売上高)は、売上総利益率に相関する
SaaSがPSRで評価をされる理由は、このままユーザー獲得が進めば黒字化するという事業の予測性、再現性にあります。
米国では売上高総利益率70%がSaaSの条件となっている一方、日本はSaaSの条件が何かのコンセンサスが見出せておらず投資家は利益率を重視している状況といえます。
今後は、自社のプロダクト、ソリューションの事業構造を明確に示し、高い売上高総利益率を証明できるSaaS企業とそうではない企業とで、投資家からの評価がより二局化していくのではないでしょうか?
日本の上場SaaS企業のマルチプルの考え方については、DNX Venturesの倉林さんが下記で詳細の解説をされているので参考になります。
https://note.com/dnx_vc/n/n6d76c068bad8?magazine_key=m664b6e2d30ed
また指標としてチャーンだけでなく、複数年契約の比率や、支払条件(月払い/四半期払い/年間一括前払い/複数年一括前払いなど)を見ていくとその会社の将来に渡る安定性や経営基盤の強さが見えると思います。
加えて、特に短期的には、(a)需給(「海外投資家」)が効いてくる。
①成長性:SaaSはトップライン(売上)成長性は個社のモデル次第だが、一般的にSaaSプロダクトは、一旦プロダクト開発が終わるとアップデート以外は追加開発が限定的になるので、基本的には収益逓増の構造となり、利益成長は大きい。
②収益性:前述の通り、スケールすればスケールするほどスナップショットの収益率は大きくなる。
③安定性:記事の通り、チャーンが低く売上がミルフィーユのように積みあがるので安定性が高い。
(a)需給に関しては、記事では「海外投資家」が多いと説明されているが、触れられていない、なぜ海外投資家が多いのかについては;
割安感:一般にグローバルのSaaS企業と比べると、日本のSaaS企業は日本の国内市場が十分に大きいにも関わらずマルチプルが低く、割安感があることがあげられる。
マーケットリーダープレミアム:日本におけるSaaSはUSなどに比べると顧客が受け入れるマインドの変化が遅かったため、業界全体としても立ち上がりが5年程度遅かった。よって、まだまだ領域によっては、領域No1のポジションが空いていたり、勝負の決着がついていないため、マーケットリーダーのプレミアムを享受できるポテンシャルがまだ期待できる。
日本の今までの基準でみると”高い”のかもしれないが、よりグローバルで同じ物差しで見られると”高いとは言えない”という見方もできる。
前半では国内SaaS企業のIPO変遷、後半は時価総額の背景をまとめるとともに、今後のIPO動向についてUB Ventures 代表岩澤さんのコメントです。
PSR30倍以上といったマルチプル絶対値の議論はさておき、「海外投資家の資金流入」「SaaS企業に対する評価手法の確立」「高成長企業」といった要素が高い時価総額の背景にあると考えられます。
IPOだけでなく、M&Aなどの動きもより活発化していく中で、18%にとどまるとも言われる国内法人クラウド利用比率が向上し、日本の生産性が高まることに期待したいと思います。
なお、記事中のデータなどSaaS企業に関するKPIデータやマルチプルデータなどはこちらのnoteで定期アップデートしています。
https://bit.ly/3pgO1i5
私は企業価値はすべてDCFに収斂される派です。
株価が結果として、リカーリングレベニューに相関しているのは事実だとは思いますが、ファンドマネージャーは必ずモデル組んで変数を微調整しながら投資判断しているはずです。
PSRいくらだと、高い、安いは、何とも言えないことが、倉林さんの最初の母集団での相関が見当たらないことでもわかります。
株価は美人投票ではありますが、美人が何かをこねくり回して自分なりに腹落ちさせていくのが投資かと思います。
あの人が美人だって言ってたから、美人だよ!は、美人が何たるかを理解する気はないことの裏返しでしょう。